
もっとも小さなてつがく対話2 あやこさんPART2「アクリル」
アートスクールの先生がプライベートでやってる、お絵描き教室があるんですよ。それで、なぜか毎回、感情的になって泣いて帰るんですよ。
――え?
はい。なんかその付近で起こった出来事を、そこでなぜか思い出す。思い出して、話すっていうことになるんです。で、泣いちゃうんです。
その先生がね、「今日もありがとう。泣いてくれてよかったよ」って言うんですよ。引き出されてるんだなと思った。
感情は出したほうがいいよって。周りもそう言ってるんですよ。
すみません。何が出てきちゃったんだろう、って。
――なんでなんですか?
大人になったからなんですかね。いや、わかんない。
一時期、大人になったときに、テレビを見るのをやめたんですけど、時々、実家とかでCMが流れているときに、短い時間で泣かせにくるCMってあるじゃないですか。
急に楽しいメロディーソングが流れて、泣きそうになるんですよ。
そのとき、「あ、自分、大人になったな」って思ったんですよ。この感性に触れたなと思って。
子どものときは何も思わなかったのに、こんなにじわっとくるなんて。
心に訴えかけるCMに、まんまとやられちゃっう。
大人になったかも。それも素晴らしいと思う。
でも、その泣く状態のあとに、今度は泣かない状態が来て、また泣かなくなってきて。だから、波があるのかなって。
悲しいというか、泣いちゃう。嬉しいってことかな。今の瞬間が嬉しくて。
頑張ってると緩みが来たときに泣いちゃう。
――泣けるなんていい場ですね。
そう。すごいいい場なんですよ。ただ私が泣きやすいだけな気もするけど。
泣いちゃダメなんですよね、みたいなことではなくて。
でも、自分がそうやって、絵を描いているときに、ちょっと俯瞰してみると笑っちゃうんですよ。今も、なんか明かされたみたいな感じで、「何だったんだ、あれ」って。
笑っちゃうんですよ。恥ずかしいなと思って。あんなに感情的になって。
――お絵描き教室って、何を描くんですか?
決まってないです。自分が持ってきてもいいですし、ある程度のお題とかは用意してくれます。
スプレーとかで描いたりもしますし、汚していいんですよ。ジャクソン・ポロックみたいな感じになっちゃう。
――アクション・ペインティング。
アクション・ペインティング。ちゃんと教えてもらえます。先生には、その知識もあります。
――根本的な質問ですが、なんで描いてたんですか? 始めたんですか?
スタートがちょっとあれなんですけど。
絵は、まあ、習い事の中で一番いいって思ったので。結構頑張ってたんですよ。
中学生で不登校になる前までは、学校に行ってたんだ。小学校のときは、そんなに学級委員長とかになるタイプではないんですけど、図書とか、そういう真面目な仕事をするタイプだったんですよ。
役割としてちゃんとやって、勉強もしていて、テストも現実的だから徹夜しましたよ。
ゲームがとにかく好きだったので、テストの点数が高くないとゲームができないかなって、自分の中で勝手に思って。
親に「遊んでないで勉強しなさいよ」って言われないために。
「うちの子はちゃんとやってるから大丈夫」って思ってもらえるようにしてたんです。
やっぱり、ちゃんと一日だけ頑張れば、かなりいろんな勉強ができる。
小学生の頃、勉強の中で楽しいのは絵だな、って。
――小さい頃からずっと絵をやっていた?
でも、なんていうのかな、全然上昇志向がない。一番楽なのが絵なんですよ。
あと、幼稚園のときって、遊んでる人がいるじゃないですか。
いろんな人が。外で遊ぶ人もいれば、内側で遊ぶ人もいる。
私はずっと絵を描いていた。
乱暴なことが苦手なんで、巻き込まれないように、かつ、部屋の中の遊びにも巻き込まれないように、必死でこうやって。
ちょっと絵を描くとか、そういうのがあると安心しますよね。
自分のキャラとして確立させるというより、居場所としてのコミュニケーションの一つのツールですね。
子どものときは、そういうことがあったんですよね。みんなについていけなかった。
――なるほど
性格的に、そうですね。
美術館とかやっぱりそういう静かなことが好きだったので、私も絵を描き始めよう、みたいな感じで。
近所の画材屋さんに行って、好きな絵の具をめちゃめちゃ買う。
安いので、好きな色を選んで、アクリルから始めました。
クレヨンとか、いろいろ試したんですけど、自分が一番よかったのがアクリル。使いやすい。
――アクリル。
たまたま街が小さいので、学芸員さんが一人いるんですけど、その学芸員さんにお会いすることができて。
いろいろ教えてくれるようになったんですよ。
ギャラリーとかにも呼んでくださって。
すごい、敷居が高くなかったんです。絵っていうのは、誰にでもウェルカムしてくれる世界だったので、それでより入っていけたっていう。
そこで「こういうふうに描かないとダメだよ」って言われていたら、別のところに行ってたかもしれませんね。
その人がちゃんと勉強していて、なおかつ「それでもいいんだよ」って言ってくれてるのが嬉しかったですね。
――たしかに。
いや、なんか思ったんですよ。包容力がある場所じゃないと、物事って育たないなって思ったんですよね。結局、植物とかもそうなんですけど、豊かな土壌じゃないと育たないじゃないですか。
やっぱり、優しい環境じゃないと、育たないとすごい思ったんですよ。
TO BE CONTINUED...
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