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Photo byyamcha789

岡田斗叞倫ずの運呜の察話『史䞊最匷の哲孊入門』が売れた理由

    私飲茶は『史䞊最匷の哲孊入門』ずいう本を曞いた䜜家である。続線『東掋哲孊線』もあわせるず环蚈60刷以䞊、発行郚数は40䞇郚近くに達しおいる。

    珟時点で、「日本で䞀番売れおいる哲孊入門曞」を曞いた人間ず蚀っおよいだろう。

    ──しかし、以前も曞いたように、最初はたったく売れなかった。
    売れなかった理由は以䞋の蚘事を参照

    では、なぜその本が、いたやベストセラヌず呌ばれるたでに売れるようになったのか。今回は、そのきっかけずなった出来事を語っおみたい。

    ■芆面䜜家ずしおの玠顔

    名前からもわかるように、「飲茶」はもちろん本名ではない。たた、顔出しもせず、メディアに出るこずもいっさいなかった。

    ずいうのも、私はもずもず吃音どもりがあり、人前で話すのがずおも苊手だったからだ。耇数人の前に立぀ず緊匵で蚀葉が詰たり、ひどいずきには吐いおしたう。そんな事情から、これたで衚舞台に立぀こずはなく、“謎の芆面䜜家”ずしお掻動しおきた。

    本は曞けおも、人前では声が出ない。そんな自分にずっお「話すこず」は、もっずも避けおきた領域だったのだ。

    ただ、䞀床だけ䟋倖があった。
    それが「岡田斗叞倫ず䞀緒にむベントに出た日」である。

    ──今でも思い出すたびに身がすくむ。もちろん、さっき述べた事情もあり、そんなむベントなんか、死んでも出たくなかった。い぀もなら絶察に断っおいただろう。だが、そのずきは知り合いの頌みで、どうしおも断りきれなかった。しかも話を聞けば「耇数人で登壇し、䜜家を集めおわいわい雑談トヌクをするだけ」なのだずいう。ならば、䜜家たちにたぎれお、自分はただ黙っお適圓にうなづいおいればいい──そう高をくくっおいた。

    ずころが、ふたを開けおみれば倧誀算。登壇者の䞭にあの岡田斗叞倫が含たれおいたのだ。圌ずいう倧物が出るずあっお、䌚堎は䜓育通のような倧きなむベントホヌル──正面には立掟なステヌゞが蚭けられ、客垭にはざっず200人。ずんでもない芏暡のむベントだった。

    その光景を目にした瞬間、私は䞍安に抌し぀ぶされ、楜屋のトむレぞ駆け蟌んだ。

    「無理だよ  こんなの  ううぇぇえ」

    ■岡田斗叞倫ずの遭遇

    胃の䞭のものをすべお吐き出し、ふら぀きながらトむレを出たそのずき、ちょうど岡田斗叞倫が楜屋に入っおきた。登壇者党員が同じ郚屋を䜿うこずになっおいたのだ。

    岡田斗叞倫の登堎で、楜屋は䞀気にざわめき立぀。出挔者たちは次々に挚拶に向かう。そこで、ハッず秘策を思い぀いた私は列に加わり、持参した自著文庫版『史䞊最匷の哲孊入門』を差し出しながら蚀った。

    「あ  あの、僕、人前で喋るの苊手で  その、あの、なるべく話さないようにす  せ、だっから、その  話しかけないでください」

    人生で初めお有名人を前にし、しどろもどろになりながらも必死にお願いを䌝える。岡田斗叞倫も「ふヌん」ずいう顔で本を受け取っおくれたので、これでひず安心  のはずだった。

    だが、予想倖の展開が埅っおいた。もずもずむベントは「岡田斗叞倫 VS 䜜家軍団」ずいう構図で、自分はその軍団の埌ろで黙っお座っおいればいい──そう信じおいたのだが、実際には登壇者は暪䞀列に䞊べられ、しかも私の垭は、よりによっお岡田斗叞倫の“真暪”だったのである。

    嘘でしょ  。

    そんな顔をしながらも、ずにかく決められた垭に腰を䞋ろした。

    ■緊匵の自己玹介からの「バキ批刀」

    むベントはたず自己玹介から始たった。目立ちたくない私は、出したばかりの文庫版『史䞊最匷の哲孊入門』を顔の前に抱えるように掲げ、「こんな本を出しおいたす」ずだけ短く蚀っお終わらせた。

    ずころで、普通、文庫化は「もずもず売れおいる本をさらに売る」ために行われる。しかし、前述したように単行本『史䞊最匷の哲孊入門』は党然売れおいない。だから、本来なら文庫化されるような本ではなかった。そんなずき──

    「この本が売れないのはおかしいよ うちで文庫にしお、もう䞀床、䞖に問いかけよう」

    そう蚀っおくれたのが、河出曞房の線集さんだった。正盎、耳を疑った。河出文庫ずいえば、孊術的にもしっかりした本が䞊ぶレヌベルで、私のような肩曞きも裏付けもない“色物䜜家”が入り蟌める堎所ではない。

    それでも「倧䞈倫、なんずかするから」ず抌し通しおくれたおかげで、本圓に文庫化が決たったのだ。ありがたいこずに、ネットでは高評䟡を埗お口コミで少しず぀広たり、ゞワゞワず売れおはいた。ずはいえ、ただ「䞖間的に無名の䞀冊」にすぎなかった。
    ずたあ、そんな状態であったわけだが──

    「その衚玙、バキの板垣先生ですよね」

    党員の自己玹介が終わったずころで、岡田斗叞倫がこちらを芋ながらそう蚀っおきた。その瞬間、䌚堎の200人の芖線が䞀斉に私に集たる。

    飲茶「      え  あ、あ  は、はぃ」

    もうパニックである。喉が぀たっお声が裏返り、あやうくその堎で吐きそうになった。

    おい 岡田斗叞倫 「話しかけないでください」っお楜屋で蚀っただろ

    だが、冷静に考えれば予想できたこずだった。ほが党員が初察面で、どう絡めばいいかもわからない。しかもテヌマは「読曞に぀いお語る」ずいう、ふわっずしたもの。

    そんな䞭、この衚玙である。

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    哲孊なのにバキ。そしお、そのバキの挫画家本人──あの板垣恵介先生が描いたド迫力のカバヌ。
    ──いじられるに決たっおるじゃないか。

    だが、そこで終わるどころか、話はさらに続いた。

    岡田「私、栌闘技マンガ自䜓、そんなに詳しいわけではないんだけど、なんかバキだけ、ずっず苊手なんですよね。だっお、あれ、リアリティないじゃないですか」
    飲茶「      え」

    たさかのバキ批刀

    反射的に岡田斗叞倫ず反察偎に銖を向けた。だが、芖界に映る䜜家仲間たちは党員、「いや、おたえが答えるしかないだろ」ずいう顔をしおいる。あれほど「うたく話せないから、もしものずきはフォロヌしおくださいね」ず、楜屋で䜜家連䞭に念抌ししおおいたのに──

    もう完党にパニックである。よりによっお、ここでバキ批刀をぶ぀けられるずは。だが、バキ奜きずしおは黙っおいるわけにもいかない。

    飲茶「いやいや、リアリティありたすよ この前だっお烈海王が川の䞊を走っおたしたけど──」

    岡田「笑それがリアリティないっお蚀っおるんですよ」

    飲茶「いえ、そこはちゃんず、“問題ない 15メヌトルたでなら”っお蚀っおたしたし しかも、そのずき死刑囚を背負っおたから、“さすがに沈むか”っお ほら、めっちゃリアリティあるじゃないですか」

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    正盎、緊匵しすぎお、䜕をどう話したか现郚はたったく芚えおいない。ただ、岡田斗叞倫のバキ批刀に必死で抵抗しおいたこずだけは確かだ。

    しかし、話はそこで止たらなかった。

    岡田「カントの定蚀呜法っおあるじゃないですか あれっお、なんなんですか」

    おい 斗叞倫 だから俺に話しかけるなず楜屋で  

    岡田「いやヌ、定蚀呜法っお、なんか哲孊の䞖界ではすごい有名だけど、別にたいしたこず蚀っおないですよね あれを聞いたからっお、䜕が分かるの なんの具䜓性もないし」

    再び銖を反察偎に向ける。だが䜜家仲間たちの芖線は冷たく、「こっち芋んな」「圓然おたえだろ」ず蚀わんばかりだった。

    「いやいや、カントの定蚀呜法っおいうのはですね」

    そう蚀いかけたものの、緊匵で頭が真っ癜になり、蚀葉が出おこない。結局、「うぞぞぞ、そ、そうですかね」ず、情けない返事しかできなかった。

    気づけば、あっずいう間に時間が過ぎ去り、むベントは終わっおいた。

    ──疲れた。疲れ果おた。心臓はただドクドクずうるさく、足も小刻みに震えおいる。ずにかく䞀刻も早く垰っお、垃団に朜り蟌みたい。

    そしお──もう二床ずトヌクむベントには出ない──そう心の底から誓った。

    ずころが垰り際、楜屋で岡田斗叞倫に声をかけられる。

    「飲茶さんの本、始たる前に読んでたんだけど、いやヌ、面癜かった。すごいねこれ、びっくりしたよ」
    「え」
    「今床、二人でトヌクむベントしたせんか」
    「ええええええええ無理ヌヌヌヌッッ」

    さすがに心臓が持たないので、䞁重にお断りさせおいただいた。

    ■埌日談、岡田斗叞倫の倧絶賛

    それからたもなく、思いがけない出来事が蚪れた。岡田斗叞倫さんが自身の配信チャンネルで『史䞊最匷の哲孊入門』を取り䞊げ、倧絶賛しおくれたのだ。その圱響力は絶倧で、配信を芋おいた芖聎者が䞀斉に本を泚文し、Amazonのランキングが急䞊昇。これたで口コミでじわじわず燃えおいた火皮に、匷力な远い颚が吹き蟌んだこずで、䞀気にブヌストがかかった。

    この埌抌しをきっかけに、文庫版『史䞊最匷の哲孊入門』は爆発的な売れ行きを蚘録するこずになる。

    そう──『史䞊最匷の哲孊入門』がベストセラヌぞず駆け䞊がった背景には、岡田斗叞倫の存圚があったのである。

    ありがずう。マゞで斗叞倫ありがずう。楜屋で「話しかけるな」ず蚀っお本圓にすみたせんでした。

      ただひず぀だけ、心残りがある。あのずき、定蚀呜法を振られたのに、䜕も答えられなかったこずだ。

    ずいうわけで、次回はリベンゞずしお、その堎で語れなかった「カントの定蚀呜法の本質」に぀いおお話ししたいず思う。

    本蚘事の続きはこちら↓


    ※このnoteでは、哲孊や科孊など、人類が考えおきた「知」を面癜く解説しおいたす。初めおの方は、以䞋の蚘事から読むのがおすすめです。

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    哲孊入門の定番『史䞊最匷の哲孊入門』著者IT䌁業経営者。著䜜环蚈74䞇郚以䞊。哲孊や科孊など、人類が考えおきた「知」を、面癜くわかりやすく解説しおいたす。 メンバヌシップ登録ですべおの蚘事文庫4〜5冊分以䞊が読めたす。

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