
ダークファンタジーの到達点「進撃の巨人」
アニメ「進撃の巨人」完結編を見た。
やっぱり思うのは、この作品はアニメの方が原作を上回ってるということだ。
特に立体機動装置を使ったアクションシーンにおいては、そこにスピーディな疾走感を出すのにコマ割りの漫画じゃ限界があるということ。
加えてアニメは音楽の出来もいいので、迫力が原作漫画の倍ぐらいはあったと思う。
とはいえ、原作者の諌山先生はやはり偉大だわ。
おそらく「進撃」の全プロットは、連載開始前から完成してたはず。
連載漫画にはありがちな編集部主導による後付け設定は特に見受けられないし、こんな壮大なストーリーを破綻なくまとめた手腕は本当にお見事である。
主人公のエレンが最終的にラスボスになる、という展開はあまりにも掟破りだというのに、設定がしっかりしてるから彼の豹変も意外なほど論理的矛盾がない。
いやマジで、これは二千年後にも残る名作だと思うよ。

ただ前半の青春パートがあまりにも眩しかったがゆえ、終盤の展開はマジでつらい。
だって、みんながハッピーになる方法論なんて現実にないんだから。
ならば個人的には、ジークの「緩やかな安楽死」が結局は一番マトモな発想だった気もする。
彼も悪役ではあるけどね。
この物語は、悪役が多いんだわ。
ざっと挙げれば、
・エレン
・ジーク
・ピクシス司令
・ザックレー総統
・レイス卿
・切り裂きケニー
・フクロウ
・エレンの父
・マーレ上層部
・フリッツ王
・始祖ユミル
などなど、みんな許されないことをしてるんだけど、一方で理解できる部分も各々にあるんだよね。
悪行にも必ず何らかの意義があるし、というより、登場人物には完全な善もいないのさ。
皆が各々、必ず何らかの罪を背負っている。
あれ?
この構図、どこかで見たなぁと思ったら「メイドインアビス」2期だったわ。
「進撃の巨人」における最大のラスボス・始祖ユミルに該当するのが、
「メイドインアビス」でいえば成れ果ての村の母体・イルミューイなんですよ。
そしてイルミューイが産んだ娘・ファプタが、「進撃」でいえばエレン。
「アビス」でファプタは最後、母の意を汲んで村人たちを皆殺しにし、さらに村を破壊することで母に解放(死)を与えた。
この行動は「進撃」でエレンがやったこと、そのまんまである。
「進撃」を見て、「エレンが何であんな選択をしたのか意味が分からない」と頭を悩ませているという人には、ひとつの参考書として「アビス」2期の視聴を是非お薦めしたい。
「アビス」は「進撃」ほどには複雑じゃなく、それでいて2期の骨子はほぼ同一だからね。
2期だけでも見ておくと、「進撃」のストーリーがすっきりと理解できるよ。
それにしても、声優さんたちは素晴らしい仕事をしてたね。
たとえば、エレン役の梶裕貴さん。
梶さんといえば声優界で最も童貞っぽい声を出せる声優だが、最終章はその得意技を敢えて封印し、冷酷な悪役声に徹していた。
でも梶さんだから「この人、無理してんなぁ」感がどうしても否めないわけで、逆にそれがエレンの内なる心情とシンクロしてるかのようで最高だったよ。
ただ、彼のこういう声を聞いてると、反動で「からかい上手の高木さん」がどうしても見たくなってしまった。
梶さんの「くっそ~高木さんめ~(怒)」を聞いて、心の平穏を取り戻さなくては・・。
あと井上麻里奈さん、石川由衣さんの熱演もさることながら、この完結編で一番おいしいところを持っていったのはハンジ役の朴さんじゃないだろうか。
振り返れば、エレンの死よりもハンジの最期の方が泣けたと思う。
炎で全身を焼かれながらも刃を振り続ける彼女(彼?)の雄姿は、やっぱり涙なしじゃ見られなかった。
朴さんも、さすが大御所というべき熱演。
そして忘れちゃいけない、リヴァイ役の神谷浩史さん。
彼が「声優アワード」5年連続最多得票で殿堂入りしたのは、このリヴァイ役があってのこと。
「ワンピース」トラファルガーロー役もあってか、最近じゃニヒルな役柄のイメージがすっかり定着した感もあるね。
本来、彼の得意分野はこれじゃないんだけど。
しかし、リヴァイとハンジの別れのシーン、めっちゃ良くなかった?
結局最後までハンジの性別は分からなかったけど、このふたりの関係性、めっちゃ好きだったわ。


あと、原作の連載当時に話題となった「オカピ」のシーン。
当時は「エレンの家が~!」に並ぶ作中屈指のギャグシーンとして話題になってたんだけど、アニメ化すると展開がスピーディなもんで笑いどころを失ってしまったね。


終盤にマーレ側の軍人が、結局こういう事態を招いたのは自分たちの憎しみが原因だとようやく真理を悟り、「もう二度と同じ過ちを繰り返さない」とまで言っておきながら、地ならしが終息した途端、やはりマーレは再び銃口をエルディア人に向けている。
またエルディアもエルディアで、その後エレンの遺志を継いだイエーガー派が島を牛耳るようになったとのことで、結局巨人が消えたところで対立構造は終わらない、という妙にシニカルな締めくくり方である。
最後、島にミサイルが撃ち込まれたね。
ラストシーン、島の文明が一度滅んでからの再生段階に見える。

ヒストリアいわく、エレンは「道」で色々なパターンの未来を見ていたという。
しかしどの道を辿ろうと、たとえ巨人がいなくなってもエルディアとマーレの対立構造は避けられず、戦争は必至だったようだ。
どうあがいてもエルディアは戦わねばならず、ヒストリアはナチスの総統のような役割を引き受ける覚悟の様子。
「でも、あそこまで虐殺をしなくてもよかったのでは?」という意見もあるだろうが、おそらくエレンの優先は島が可能な限り長く存続すること。
つまり、ミカサには天寿を全うしてしてほしい、と。
その願いは叶ったようだ。
もし人類の虐殺を8割未満に抑えていれば、ミカサらの存命中に島が攻撃を受けて全滅する未来を見ていたんじゃないだろうか。
ラストシーンは、おそらく「二千年後」である。
きっと、ここからまた巨人の歴史が復活するんだろう。
そして、この「二千年後の君」ともいうべき少年は、必ず「道」でエレンや調査兵団のみんなの人生を知ることになる。
いってみりゃ、エレンの選択はこの少年に見せるメッセージみたいなものだったのかもね。
ここから先は全て、この少年次第である。

ミカサのこのセリフと、ヒストリアの夕陽をバックにした立体機動回転シーンの美しさは神である
