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All-In Podcast 解説:Saronicの自律航行艦と米中造船格差──ホルムズ海峡救出作戦からテキサス新造船所まで

    2026年8月6日

    概要

    All-In Podcastのインタビューシリーズに、防衛スタートアップSaronicの共同創業者であるDino Mavukus氏とVib Alakar氏が登場しました。Mavukus氏は元Navy SEALsの隊員で、同社の自律型船舶「Corsair」が最近ホルムズ海峡でアメリカ人パイロット2名の救出に使用された初の事例を、詳細は伏せつつも紹介しました。両氏は、中国が船舶建造能力で米国を230対1の比率で凌駕している現状や、米海軍の艦隊規模が縮小する中で、自律型で大量生産可能な艦艇によってコストを削減し、戦力を拡大するというSaronicのビジョンを語りました。また、テキサス州ブラウンズビルに過去最大級の新造船所「Port Alpha」を建設し、1万人の雇用を創出する大規模計画も発表されました。

    ホルムズ海峡における自律航行船による初の救出作戦

    Dino Mavukus氏は、イランとの緊張が続くホルムズ海峡でアメリカ人パイロット2名が撃墜され、同社の24フィート自律型高速艇「Corsair」が救出に使用されたことを明かしました。これは自律航行船による初の有人救出事例です。Mavukus氏は作戦の詳細について多くを語れないとしながらも、人命がかかった極めて緊迫した状況で、海軍が同社と自律プラットフォームを信頼したことが画期的な瞬間だったと述べました。自身がNavy SEALsとしてアフガニスタンで戦友を失った経験に触れ、有人の救助隊を危険にさらすことなく救出を可能にした自律技術の意義を強調しました。

    Mavukus氏は、2005年にアフガニスタンの山岳地帯で4名のSEALsが孤立し、救助に向かったヘリコプターが撃墜されるという経験を自らしたことを明かし、無人艇による救出が救助隊の危険を回避できることを改めて強調しました。また、救出されたパイロットたちは、誰も乗っていないボートが近づいてきた時点で自律型だと即座に理解し、無事に帰還できる希望を得たということです。

    Mavukus氏はNavy SEALsとして2004年から2015年まで11年間勤務し、最後の5年間はSEALチーム6に所属していました。また、共同創業者のVib Alakar氏は以前Andurilに勤務しており、防衛技術分野での経験を持つことが紹介されました。

    ホルムズ海峡が幅20マイルの狭い水路であり、イランが高速攻撃艇や機雷、安価なドローンを用いて通航を妨害できる複雑な環境であることが説明されました。ペルシャ湾の北岸全域を支配するイランは、短距離から発射できるミサイルや神風特攻隊のような高速攻撃艇、さらには結果を顧みずに海峡へ浮遊機雷を流す戦術まで用いており、これに対抗するには対UAS(無人航空機システム対策)能力を含む多面的な備えが必要となります。このような脅威に対し、多数の小型自律船舶を展開することで、持続的な監視と対応を可能にし、高価な有人駆逐艦を危険にさらすリスクを低減できるとしています。Saronicはテキサス州オースティンの製造施設で、小型艇Corsairを年間2000隻生産する能力を既に有しており、量産による数的優位で脅威に対抗する構想が示されました。

    艦隊の知能化について、司会者がAIを搭載したCorsairを多数配置し、Planet社のような民間衛星や軍事衛星からのデータを活用して機雷敷設や高速攻撃艇の出撃を自律的に迎撃するシナリオを問うと、Alakar氏は現在の船舶にも既に多数の機械学習アプリケーションが搭載されていると説明しました。全艦艇に大量の計算能力が搭載されており、航法や自動操縦、自己運航といった基本機能に加え、対UASなどのペイロード用計算も実行可能です。海洋は平時でも塩水がアンテナに影響し通信が途絶する過酷な環境であり、複数の通信手段とセンサーが機械学習やソフトウェアスタックと連携することで、指揮官や水兵の意図を任務成果へと変換するシステムが構築されています。

    なお、同社は当初CutlassやSpyglassと名付けられた小型の実証艇で自律技術を磨きましたが、これらは製品化には至らず、主力はCorsairです。Corsairは一般的な24フィート艇では不可能な1000海里の航続距離を実現し、価格は約100万ドルとされています。ホルムズ海峡の確保に必要な隻数については2,000隻か5,000隻かという質問も出ましたが、具体的な数字は示されませんでした。

    米中の造船能力格差と米海軍の現状

    Mavukus氏は、米国の造船業が衰退している現状を数字で示しました。米国が年間に建造できる船舶は10万総トンであるのに対し、中国は2300万総トンを建造する能力を持ち、世界の造船能力の57%を占めていると説明しました。この背景には、中国共産党による原材料費や人件費を含む業界全体への大規模な補助金があり、米国で船を造るコストは中国の5倍から6倍に達すると指摘しました。その結果、米海軍は現在296隻の艦艇を保有しているものの、議会が2018年に定めた355隻という法定最低数を大きく下回っており、昨年は9隻を建造した一方で19隻を退役させるなど、艦隊規模は縮小の一途をたどっています。一方で中国は年間約30隻のペースで艦艇を増やし、現在約370隻の艦隊規模は間もなく450隻に達すると見られており、海軍力の増強を続けている現状が語られました。

    この格差の背景には、30年前には世界の造船能力の5%に過ぎなかった中国が、国を挙げた補助金によって商用船市場を席巻し、昨年だけで1000隻以上の商用船を引き渡した事実があります。一方、米国が昨年建造した商用船はわずか5隻でした。中国海軍もこの30年で沿岸海軍から原子力潜水艦や航空母艦、極超音速ミサイルを保有する外洋海軍へと変貌を遂げており、紛争時にはその商用造船能力が全て軍需に転換されることを考えると、第二次世界大戦中に年間数千隻を建造した米国の生産力の再構築が急務です。

    サラミス海戦の教訓と戦略的非対称性

    Saronicの社名はアテネ沖のサロニコス湾に由来し、紀元前のサラミス海戦で数的に劣るギリシャ艦隊が小回りの利く小型船でペルシャの大艦隊を狭い海峡に誘い込み勝利した故事にちなんでいます。Mavukus氏は、現代の中国海軍に対しても大型艦に過度に依存する従来の艦隊構成を見直し、小型で機動性の高い自律艇を数多く配備することで、相手の数的優位を無力化できると説明しました。

    自律航行船がもたらすコスト構造の変革

    Vib Alakar氏は、自律航行船が従来の有人艦艇と比較して持つ利点として、人間の居住空間や関連する複雑なサブシステムを排除することで、設計全体を根本から簡素化し、航続距離や制御性能といった性能面での最適化も可能になる点を挙げました。具体的には、ドアやバスルーム、階段といった構造物、さらに人間用の独立した電気系統などが不要になることで、艦艇の複雑性が大幅に低減されます。Mavukus氏は、この利点をコスト面から説明し、垂直発射システム(VLS)の搭載数を指標に比較しました。1隻あたり約30億ドルの駆逐艦は年間10〜15基のVLSを配備する計算になるのに対し、Saronicの180フィート自律型船舶「Marauder」は一度に16基のVLSを搭載でき、ルイジアナ州の造船所で年間20隻を建造することで、年間320基のVLSを圧倒的な低コストで前線に展開できると説明しました。これは納税者に数百億ドル規模の節約をもたらしつつ、より迅速に戦力を増強できることを意味します。

    無人艦艇の欠点とハイブリッド運用

    Mavukus氏は、有人艦と無人艦の役割分担が今後重要になるとし、前線の危険な戦闘海域には無人艇を投入し、指揮官や意思決定者は安全な有人艦から分散配置された無人艦隊に指示を出すハイブリッドな海軍の姿を展望しました。無人化によって単純作業から解放された水兵が、より多くの自律艇群の運用判断に集中できる利点も強調されました。

    垂直統合とソフトウェアによる製造革新

    Alakar氏は、伝統的な造船業界では設計と建造が分離されており、海軍艦艇の重要部品の約70%が単一供給元に依存していることが、生産の遅れやコスト増の一因だと分析しました。Saronicでは設計から造船所の運営、ソフトウェア開発までを垂直統合することで、船舶設計を製造プロセスに最適化し、従来は人手に頼っていたエンジンルームの監視業務などをソフトウェアで自動化していると述べました。また、長らくアナログだった船舶用コンポーネントにソフトウェアAPIを実装し、遠隔制御やデジタル管理を可能にするなど、サプライチェーンへの投資と業界全体のデジタル化を推進していることが語られました。

    司会者がテスラの初期における部品の外部調達からModel 3やModel Yでの垂直統合への進化を例に挙げると、Alakar氏は、Saronicでも同様のアプローチをとっており、船舶業界が長らく受けてこなかった投資をエレクトロニクスやセンサー、コンピュート分野で内製化していると応じました。

    国防総省との契約と「コストプラス」からの脱却

    Mavukus氏は、政府との契約形態の変化についても言及しました。従来の「コストプラス」契約では、開発が長引きコストが増大するほど企業の利益が増える逆インセンティブが働いていましたが、Saronicは創業約4年で民間から25億ドルの資金を調達し、自社資金で研究開発や船舶建造を行う固定価格契約モデルを追求しています。政権による海事関連の大統領令や国防長官の調達改革演説など、スタートアップが国防分野に参入しやすい環境が整いつつあると評価する一方で、国防総省予算全体のわずか1%しか自律システムに割り当てられていない現状を指摘し、その比率を早急に引き上げる必要があると訴えました。

    自律型致死性兵器の倫理と政策

    自律型兵器に関する議論では、Mavukus氏はAIが自律的に判断し攻撃を行うというシナリオへの懸念を和らげる説明を行いました。米国には自律型兵器システムに関する基準「3009」が存在し、実際の運用ではAIは敵味方や戦闘員と非戦闘員の識別を支援するにとどまり、最終的な交戦判断は常に人間の指揮官が下すと述べました。ただし、中国や北朝鮮などの敵対国が同様の倫理的制約を持たず、中国が既に四足歩行ロボットに武器を搭載し公開デモンストレーションを行っている事実や、自律型AI兵器を規制する国連の条約に署名していない現状を踏まえ、無差別な自律攻撃を行う可能性があるシナリオにおいては、米国も脅威環境に応じて交戦規則を変更し、ソフトウェアに組み込まれた政策閾値を調整することで対抗する用意があると説明しました。

    台湾海峡有事のような最悪のシナリオでは、司令官の判断により「漁船も遊覧船も存在しない」という状況下で、敵味方を問わず味方艦船以外の全てを敵船とみなす交戦規則への変更も技術的に可能であることが示されました。Mavukus氏は、ロボコップのような完全自律型の殺戮マシンを想像して人々が抱く懸念を和らげつつも、政策が定めた許可の基準を脅威環境に応じて変更できる柔軟性が自律システムには組み込まれていると述べました。

    同盟国への技術供与とテキサス新造船所「Port Alpha」

    Mavukus氏は、国防総省や海軍も同盟国への自律航行技術の普及を望んでおり、アジアや欧州、中東の同盟国との間で製品販売や現地生産体制の構築について協議中であると述べました。そして、大規模な新造船所計画「Port Alpha」が発表されました。この「未来の造船所」は、第二次世界大戦以来のアメリカ造船業の復活を目指すものです。Saronicは既にルイジアナ州フランクリンに100エーカーの造船所を保有し、Marauderを年間20隻に増産中で、同造船所は年間50隻体制まで拡張可能です。Port Alphaはこれを10倍にする計画で、敷地は1,000エーカーを大きく超え、1年以上の調査を経てテキサス州ブラウンズビルが最適地に選定されました。

    Port Alphaは当初800エーカーの土地からスタートし、それだけでも米国最大の造船所となります。将来的には4,000エーカーまで拡張可能で、数十億ドルを投資し、今後10年間で1万人の雇用を創出する計画です。プロジェクトにはテキサス州、アボット知事、キャメロン郡、ブラウンズビル市と港湾からの強力な支援を受けています。Alakar氏は、テキサス州はカリフォルニア州がElon Muskに対してとったような拒絶姿勢とは対照的に、企業に対して「何を建てたいのか?どう支援しようか?」という積極的な姿勢を示すと評価しました。

    テキサス、特にオースティンは、ソフトウェアやAI、デザインの才能と、サンアントニオの産業基盤やヒューストンの石油・ガス産業の労働力という、デジタルと物理的な労働力の結節点となっています。この両者を組み合わせることで、従来は分離されていた船舶の設計と建造を完全に統合し、造船所の設計を船舶の設計に最適化し、船舶の設計を造船所の設計に最適化するという、チップ設計におけるハードウェアとソフトウェアの共同設計に類似したアプローチが可能になります。

    Mavukus氏は、米国の造船コストが中国の5〜6倍に達している現状を改めて示し、Port Alphaのような最新の設備と設計プロセスの改良により、米国での造船コストを半減させることが可能だと強調しました。例えば3億ドルの船を1億5000万ドル未満に抑えられる計算で、これは賃下げではなく、賃上げと並行して製品と工程に投資することで実現するといいます。米国の造船業衰退の最大の要因はサプライチェーンと労働力の衰退であり、その労働力の再構築においては、自動車産業の労働者など既存の人材を先進製造業へとスキルアップさせることを重視しています。設計を第一原理から単純化し、大量生産向けにすることで、訓練や作業指示を効率化し、より迅速な人材育成を可能にするという考えです。

    両氏は、番組の最後に、ともにギリシャ系であるMavukus氏と司会者の間で、海事国家としてのギリシャの伝統に話が及び、米国の安全保障に貢献するSaronicの役割への期待が改めて示されました。

    Saronicの人材募集

    Alakar氏は、同社が現在積極的に人材を募集していると述べ、急速に進化するAIやコンピューティング環境に適応できる柔軟性を重視していると語りました。従来の造船所では紙とペンで行われていたような工程をデジタル化し、製造現場の変革に情熱を持って取り組める人材を求めています。Mavukus氏も、Saronicの従業員は溶接工や配管工を含め、シリコンバレーのソフトウェアエンジニアと同等の福利厚生と自社株を付与されており、給与水準も高いと述べました。ルイジアナ州の造船所の従業員は地域社会からも激励を受けるなど、単なる雇用創出ではなく、業界のイメージを刷新し、若い世代にとって再び魅力的な職場にする狙いが語られました。

    民主主義の後退と防衛技術の新時代

    インタビューの最後に司会者が、世界的に平均寿命や乳児死亡率など多くの指標が改善する中で、民主主義の広がりだけが後退し、全体主義の下で生きる人々が民主主義国家の人口を上回りつつある現状に触れました。その上で、自由と民主主義を守るためには圧倒的な軍事力と先端技術が必要であり、Saronicの活動が極めて重要だと謝意を表しました。Mavukus氏は、SaronicだけでなくAndroidやSpaceX、Palantirといった企業が防衛技術分野に次々と参入している流れを、現代版の宇宙開発競争になぞらえ、アメリカが総力を挙げて取り組めば決して負けることはないと強い楽観を示しました。

    ▶ 同じシリーズの前回: All-In Podcast 解説:チップ株の急落とレバレッジ解消、フロンティアラボのAI減速要請とMamdaniの公営食料品店 https://note.com/yondo/n/nb6230735cd2c

    ▶ このテーマの記事をまとめ読み: マガジン「米国株とマーケットの論点」 https://note.com/yondo/m/mb4ec8df94ddb

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