
芸術の秋に〜アーモンドクリームアップルタルトパイ
「丸いパイ生地は、キャンバスだ」。
私ユイじょり、普段はただの編み狂で飲兵衛などこにでもいるおねえさんなのだけど、サークル状のパイ生地やらタルト生地を目の前にすると、どうしても何かの血が騒ぐ。芽の出ぬアーティストの血か、はたまた売れないエンターテイナーの血か。
とにもかくにも何かのスイッチが入って、これまでも、甘味は見た目9割と言わんばかりのスイーツをたくさんこさえてきた。代表例だとこのあたりかしらね。
自分が辛党のくせにやたらとスイーツをつくる機会が多いのはひとえに、我が家に中年マッチョなスイーツ大好きモンスターがいるからだ。現在、週末だけ戻ってくる単身赴任状態なので、平日はもっぱら犬服のことを考え、週末はOtto氏の帰還に備えてスイーツづくりに精を出す今日この頃。
今年の夏はほぼ毎週、レモンケーキを焼いていた。季節もののミラベルを見つけたときにボソッと、ミラベルのタルトでも焼こうかなと口走ったときは、「ユイのレモンケーキ希望」と即レス。私のレモンケーキが好きだと言ってくれるならね、そりゃご希望にお応えしますともよ。

さすがに味は安定してきた
時は10月も中旬にさしかかる。いい加減、少し変化をもたせてみてもいいかな?北フランスはりんごの季節。Otto氏の好物スイーツのひとつ、Tarte aux pommes(りんごのタルト)を今年もはじめてみよう。
りんごスイーツはこれまた色々作りまくってきたけど、シンプルイズベストでフランス家庭の定番がこのタルト・オ・ポム。そういえば前にもゲージツ的なやつ、すでに作っていたわ。
今回は、縁取りを厚めに、ただし編み込み縄を後からのせると縮んで中に落下するという経験をこれまで幾度となくしてきたので、縁一体型でいく。どこかのSNSで前に流れてきたビジュアルが脳裏に焼きついているからそれを参考にしよう。
あと、アーモンドプードルがちょうど30g残っているというとんでもない奇跡により、アーモンドクリームを中央部分にのせて焼き上げてみることにした。アーモンドクリームはカトルカールと並んで唯一、レシピを検索しなくてもできるマイスイーツ要員。4つの材料を同量混ぜるだけですからね。安心安全。
材料はこちら。アーモンドクリームをのせたとしても、材料は至ってシンプルだ。
ー材料ー
・りんご:2つ(今日はPink Ladyをチョイス。酸味がしっかりあって美味)
・パイ生地:1枚(パイ生地をつくる気力はございません)
・カソナード:適量
【アーモンドクリーム】
・バター:30g
・粉砂糖:30g
・卵:30g
・アーモンドプードル:30g
・ラム酒:適量

アーモンドクリームは、柔らかくしたバターと粉糖をすり混ぜ、卵、アーモンドプードルの順に加えてよく混ぜる。ラム酒はお好みでたっぷりと。
主役のりんごは、4等分して芯を切ってスライサーでシャカシャカして塩水につけておく。いつもは皮を剥くけど、ビジュ系で気合いを入れる日はよーく洗って皮つきで使う。

下:パイ生地
青森に次ぐりんごの国・信州で、私は18歳まで育ったので、親戚はりんご農家、祖父母の家のお茶タイムにはいつも決まってりんごが出てきた。甘じょっぱいりんごが。変色防止のために塩水に浸けていたからだろう。
さらにりんごと一緒にでてくるのが野沢菜とか漬物ね。妹や私が行く時はクッキーとか甘味も用意してくれていたので、しょっぱい系には目もくれずに甘いものばかり食べて、帰宅後いつも母に愚痴っていた。幼子感覚として、お茶の時間に塩辛いものが出てくるのがまったくもって意味不明だったのだろう。小さい頃、嫌いなものは?と問われれば、ナスとウニと漬物だと言い張るくらいには。今となっては、ナスもウニも漬物も大好物だし、あのお茶タイムが至福以外のなにものでもない。
閑話休題。
パーツが出そろったところで、アートタイムに突入しよう。ピザを焼く天板の底の円周をナイフで印をつけ、そこから外周を均等にカットしていく。

ひとつずつ、交差するように織り込んでいこう。なお、パイ生地を焼く時にいつもすっかり忘れてしまうピケをこの時点で思い出したので、すかさずフォークでぷすぷすしておいた。


縁が全部織り込めたら、あらかじめガイドしておいた内側にアーモンドクリームをのせて均等に伸ばす。

ここからはひたすら、外周から中央にむかってりんごを並べていく。いつもはパイ生地直のせなので置き直しも簡単だけど、今日はアーモンドクリームがすでにのっかっているので、リカバリー不能と思って慎重に。



適当にカットして大きさを調整

半分にカットしてそれっぽくなるように
キャンバス中央までりんごで埋め尽くせたら、あとは焼くだけ。こういうパイ生地を使ったガトーって焼く前が一番綺麗なんだよな・・・とオーブンに入れるのを躊躇するくらいには気に入った仕上がり。いつも膨らんで美しい編み込みとかがくずれたりなんだりしてしまうのでね。。

あとは200度のオーブンで様子を見ながら40分くらい焼き上げる。

オーブンへ
金曜の夜に焼き上がり、明朝のサプライズにとっておこうと就寝。

さて、寝ぼけ眼の翌日AM8時。だだーん!

懸念していた縁取りも綺麗に残ったし、よき焼き具合。


きっとビューティフル的な感嘆詞がOtto氏から飛び出してくるに違いないとサプライズ登場をさせてみたところ、氏いわく:
「おー!縁が厚いな。」
以上。
ん?まず見た目の美しさへの言及とか、ないんか?「いやいや縁はたしかに厚いけど、これ綺麗でしょ?素人のわりに美しい出来でしょ?」と問うたら、「うん、きれい、以上」って感じだった。見た目、気にしないんだね?気にしてくれないんだね??ふー。
それに、たしかに縁は厚いけどもさ、さくっさくだし、いつもと違ってアーモンドクリームも下にあるんだからね!と言えば、「うん、アーモンドクリームは何のフルーツをのせても美味い」とのこと。
・・・まあね、うれしそうではあったし、いいんですけどもね。
予想外の反応もまあ、価値観の違いが垣間見える瞬間。これも胃文化交流ってことでよしとしようか。土曜の朝から日曜のお昼まででほぼほぼOtto氏だけで1ホール完食していたから、厚いだのなんだのいいつつも気に入ったようではある。

そして日曜の夕方、Otto氏は内陸の街に旅立っていった。
ぼそっと、「来週はクレープ、よろしく」と言い残して。
