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ロマネコンティよりロールスロイスより、結局思い出。

    予想外に入った予定というのは思った以上に精神的にくる。
    特に盆。

    私の盆は忙しい。
    それこそ、先祖にも会いにいかなきゃならんし、じじばばに孫の顔を見せてやらねばならん。

    それにありがたいことに、中学校からの付き合いのある友人がこれ見よがしに連絡してくるので、たいてい予定はパンパンだ。

    そして、子供ができてからというもの、満身創痍になるまで骨身を削る予定が入る。

    細かく書き込みされたカレンダーは毎日更新されていき、分刻みの調整を余儀なくされるというのは、もはや我が家の恒例行事だ。

    ただ、人間は学ぶ生き物で、何年もその状況を繰り返していると、気がつけば、何も予定の入らない日が自然と発生するようになった。

    いわゆる、安息地、暗黙の了解、または親の知恵とも言えようか。

    ただ、体を休めるためにできた、貴重な一日も、なんだかんだで予定が入ることもしばしば。
    それは外食だったり、友人を家に招く、だったりする。

    ただ、他のYotei of 盆(盆の予定)の中では比較的ウェイトが軽く、箸休め的なポジションであることは間違いなかった。

    間違いないはずだった。。。

    しかし、夏と言うのは人を狂わせるものらしい。

    今年はどういうわけかプールに行くという、マイク・タイソンも青ざめる、ウルトラヘヴィ級の予定が入ってしまった。

    もちろん。
    私が提案したわけではない。

    妻も、つかの間の休息に安堵していたところだ。

    ただ。

    ただ、子どもの無邪気さというのは親の想像の遥か上を行く。

    先日、プールで負傷した、両親の都合などどこ吹く風。
    この夏、一週間ぶり、二度目のプールに行きたいと言い始めたのだ。

    前回、プールで負った瀕死の傷も治らぬうちに、また戦地に赴くなど、冗談がすぎる。

    説得を試みる両親の願いも虚しく、娘は絶対に諦めないムーブを発動している。

    目線での攻防戦を繰り広げた後、我々はがっくりと肩を落とす。
    我々にとっては所詮プールでも、娘にとっては年中で行ける最後のプールかもしれないのだ。

    夏はプール。
    つまり、そこに理由などなく、とにかくプールに行く。
    それはプールであって、プール以外の何物でもないのだぷーる。

    そして、そんな洗脳の後、なんだかプールに行ってもいいような気がしてきた。
    親としては娘の願いを叶えたい反面、私のふくらはぎがそれを拒否している。

    私はふくらはぎによくよく言って聞かせる。
    夏休みに父とプールに行った思い出は、娘の中にキラ星のように輝き、いつか私の株を上げてくれるかもしれない。

    もう少し頑張れるか?

    私はふくらはぎに問う。
    ふくらはぎも観念したようだ。

    「よし、、、行くか」

    とはいえ、行くと決めたら、すぐに楽しいプールが待っているわけではない。

    残念ながら、海パンとゴーグル一つでプールに行けるほど私たちも子供ではない。
    レギンス、ラッシュガード、サングラス、日焼け止め、帽子。
    私の日焼け防止グッズだけでもこれだけある。

    これが妻と娘と合わせて3人分。
    あとは出費を抑えるための飲み物や、おにぎり、菓子類を、IKEAのバッグに詰め込んで、やっとこれで準備完了だ。

    容赦ない重さが私の右肩にのしかかる。

    幸いなことに、私の主な仕事は荷物番になりそうだった。
    さらに運がいいことに、今日の天気は曇り。

    今から出て、昼前に帰れば、ダメージは最小限になる。

    首尾よく進んだ、イレギュラーな予定。
    娘と妻の機嫌も良く、出立も誠にスムーズであった。
    あとは、日陰を早々に陣取り、娘が飽きるまで、交代制で接待プールをすれば一日が終わる。

    そう考えれば、なおのこと悪くない予定な気がしてきた。

    私は、自分の親力向上を静かに噛みしめ、電車に乗りプールに向かう。

    盆だと言うこともあり、車内は混んでいる。

    そして、どう考えてもプールに行くとしか思えない乗客が、私たちを含めて数組いる。

    案の定、ファミリープールはすごい盛況だった。

    年季の入った、古い金属製のゲートを通ると、転倒防止のグリーンのシート、それから流れるプールの鮮やかな水色が目に入る。

    私にとっても、この光景は青春の1ページだ。

    学生の時は、よくこのプールに来た。

    館内のスピーカーからは、懐かしいケツメイシの『夏の想い出』がかかっている。

    見た目は何も変わってない。
    昔から大概古かったが、今はさらに磨きがかかり、むしろアンティークのようで、なぜか不意に涙腺が緩んだ気がした。

    この、ファミリープールは今年の営業を最後に閉館するらしい。

    確かに、市内のほぼ一等地にある公営プールは、行政にとってはお荷物なのだろう。

    思えば、まわりは再開発がかなり進んできている。
    ここだけ昔の古き良き景観を残しているほうが不自然というものかもしれない。

    そう思うと、なんだか寂しい気持ちになる。

    時代は随分と変わったな…
    BGMはaikoの『カブトムシ』に変わった。

    そう言えば、真夏でも、こんなに暑くはなかったしな…
    大人も子供ももっと黒金のような日焼けをして、色とりどりの水着を着た若者が黄色い声を上げていたもんだ。
    今では誰も、両目を洗う水道を使っていない。

    いや、私の視点が変わっただけなのかもしれない。
    寂しい思いを押し殺すように、レンタルの浮き輪を借り、妻と娘のもとに戻る。

    待ちかねた娘は、今にもプールに飛び込みそうな勢いだった。
    カメラで数枚写真を撮った後、私は日陰に逃げ込む。

    そして、令和のプールサイドでは、すっかりマイノリティになってしまった、ビキニ姿を目線の先で追いながら、ぷかぷかと浮かぶ、娘と妻を眺めていた。

    「ピーーーーーッ」

    急にプールサイドの高台に座っている監視員が一斉にホイッスルを吹く。

    「今から10分間休憩です!プールからあがってください!」

    おお、懐かしい。
    今も健在なんだ、10分休憩タイム。
    蜘蛛の子を散らしたように、子どもたちが走り始めて、親や監視員の怒号が飛ぶ。

    その景色には、懐かしさすら覚える。

    そうだ、食べ物は持ってきたが、ここに来ると毎回食べていたフランクフルトでも買いに行こう。

    青春の味。

    ケチャップとマスタードをなみなみかけた、大して美味しくない、フランクフルト。

    ビールでもあれば最高だが、このご時世、アルコールは売ってないだろう。

    そう思って、向かった売店は長蛇の列だ。

    今も昔も変わらない。

    うだる暑さの中、列の最後尾に並ぶ。
    まるで、昔の暑さが戻ってきたようだった。


    ということで、今回は、マイキーさん主催、『#エッセイしりとりコンテスト』にて頂いたバトンで執筆いたしました。

    推薦いただいたのは朝霞はじめさんです!

    「ろ」から始まるエッセイを書け。

    ワインなら「ろ」から始まる言葉くらいいくらでもあるだろと。

    だが、ワインの8000年の歴史をなめてもらっちゃ困る。
    およそワインの用語で対応できない言葉などない。

    と意気込んで書いたエッセイは全くワインのことなど触れることなく、盆の忙しさとノスタルジーの中に消えていった。

    これであっているのかは別として、とりあえず、次のバトンを渡さねばなりません。

    私の渡すバトンは「で」。
    「テ」じゃないですよ。
    「デ」です。
    でも、悩むくらいなら「テ」でもいいです。

    ▼コンテストの概要

    さて、こちらのコンテスト、次に回す人を3人まで指名できるそうです。
    誰にしようかな…

    …よし決めた。

    1人目:サティさん

    正直、私の中でエッセイストといえばこの人しかいない。
    というか推しなので、早く創作大賞でもなんでもいいから受賞して、名実ともにエッセイストになって欲しいとすら思う。
    とりあえず、どの方にも読んで欲しい!
    忙しそうなので、書いてくれるかわかりませんが、書いてくれると思います。
    というより、書かなくても読みにいってください。
    本当に面白いんで!!

    2人目:文具さん

    2人目は文具さん!
    壮大に気になるタイトルをつけておきながら、本文で全く回収しないという強心臓をもつ文具さん。
    思いの丈を文章にするのに長けているなーと、毎回感心しています。
    きっと今回も笑かしてくれるはず!
    素敵な「で」を期待しています(笑)

    3人目:葉月さん

    最後は、この方。
    なんというか、文章に品格を感じる気がします。
    それでいて、なんというかほとばしる同世代感と言いますか、わかります。
    わかりますともという感じの読後感が残る、素晴らしいエッセイを書くなと思っています。

    バトンを渡した方々へ。


    作品の投稿期間は8月31日までとのことです!
    ご自身の創作活動、プライベートの支障をきたさない程度にご参加いただけたらと思います!

    賞金も出るらしいので、詳細は上部、マイキーさんの概要記事をご覧ください。

    久しくエッセイを書いてなかったですが、やっぱり良いですね。エッセイ!

    他にも紹介したい方はいるんです…
    でも、また別の機会もあると思いますので!

    最後に朝霞はじめさん。
    推薦いただきありがとうございます!

    最近童話ばっかり書いてたので、エッセイがとても新鮮に感じられました!
    なんだか、タイトルと内容があってない気もしますが…
    これはこれで、私のエッセイなのかなと、勝手に納得しています。
    ロマネ・コンティは飲んだことがありませんが、あの日の甘酸っぱい思い出は何度も噛みしめることができる。

    そんな思いでエッセイを書いたような気もするし、書いてない気もします。
    ロールス・ロイスは完全に語呂です。

    お粗末様でした。



     
     
    J.S.A.ワインエキスパート ワインエッセイストを自称していたら、気づけば童話も作っていた。 大人の飲み物を嗜みながら、子どもの読み物を書いている人🍷 ワイン、食、暮らし、哲学のエッセイとコラム。 ときどき童話と小説。 なんでも面白がって文章にしています。 瀬戸内で何か企み中。

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