
未確認飛行パンプキン
老紳士「このかぼちゃのジェラートの、品種は何ですか?」
、、、私はお客様の質問に答えられなかった。
ジェラートの器を空にしたフランス人の老紳士は、まっすぐ私を見ていた。
農家のおばあちゃんが「いいのが採れたから」と持たせてくれた、皮のでこぼこした緑のかぼちゃ。
品種なんて、気にしたこともなかった。
ステラ・ミリア「調べておきます」
閉店後の厨房で、私は丸椅子の上で小さくなっていた。
ステラ・ミリア「料理人なのに、自分の出したものの名前も言えないなんて」
ソル「知らないことを知らないと言えたなら、上出来だワンな」
ソル「わからないなら、聞けばいい。畑の人は、きっと知ってるワンな」
翌朝、電話をかけた。
おばあちゃん「品種はわからないのよ。五十年前にね、空から落ちてきたの」
ある夏の夕方、畑の真ん中に、しぼんだ風船と小さな包みが落ちていたという。
中には種と、読めない文字の紙切れ。
宇宙人の贈り物だと思って蒔いたら、毎年あの甘いかぼちゃが実るようになったそうだ。
おばあちゃん「だからうちでは、
ユーフォーかぼちゃって呼んでるの」
翌週、老夫婦がご来店された時、笑われる覚悟でその話をした。
老紳士は目を丸くし、それから少年みたいに顔をくしゃくしゃにした。
老紳士「その紙には、こう書いてありませんでしたか?
『この種を拾った人へ。おいしく育ったら、教えてください』」
七歳の夏、祖父の畑の種を風船に結んで飛ばしたのだと、彼は言った。
老紳士「ひと口目で、祖父の畑の味がしたんです。五十年かかって、やっと返事が届きました」
その夜、私は新しいメニューの札を書いた。
ステラ・ミリア「ソル、品種は結局わからないままだったよ」
ソル「品種はわからなくても、物語はわかったワンな。それで十分だワンな」
札には、こう書いた。
未確認飛行パンプキンのジェラート。
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