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Photo by123ribbon

日本の米

    【前回の話】

     毎年暮れになるとマッコイ君が米を送ってくれる。マッコイ君は農家なので、自ら作った米である。随分美味くて、これが届くと妻も娘も大いに喜ぶ。

     十数年前、北京から帰るので空港へ行ってチェックインを済ませたら、時間になっても飛行機が飛ばないのである。
    「陳さん、全体何がどうなってる?」
    「ちょっと待って」陳さんは目を細めて電光掲示板の文字を読んだ「どうも風が強すぎるみたいだね」
    「風? そんなものに左右されるのか?」
    「仕方ないね。無理に飛んで落ちたら困るからね」
    「それぁ困るだろうけれど……」
     事によると、日本へ台風が来ていた時だったかも知れないが、空を飛べない人間を飛ばすほどのテクノロジーが風に左右されるなんて随分お粗末だと思った。
     そうして一向飛ばないまま、昼を回った。
    「一体、今日の内に帰れるのかね?」
    「わからないね。飛ぶかどうかは私もわからないよ」
     陳さんは雑誌を片手に、何だかへらへら笑っている。
     
     じきに空港職員が弁当を配り始めた。
    「本当は昼前に飛ぶはずだったから、昼ごはんが出たね」と陳さんが説明した。
     白米の味が独特だった。米の種類が日本と違うのである。
    「米が日本のと違うようだね。いかにも中国に来たって感じがするよ」
    「うん、こんな米、不味いね」
    「……え?」
    「中国人も、こんな米は誰も食べたくないね。みんな日本の米の方がいいけれど、高くて買えないよ」
     こちらは種類が違うようだと云っただけで、美味いか不味いかの話はしていない。ところが陳さんがいきなり中国米の批判を始めたものだから、調子が狂って、返答に甚だ困った。
    「……そんなに不味くもないだろう?」
    「不味いよ」
    「そうかなぁ……」
    「不味いね」
    「……そうかい」
    「そうね」
     弁当を食べた後は、山岡荘八の『徳川家康』を読んで時間を潰した。文庫本を鞄に入れて持ち歩いていたのだけれど、せっかく中国へ来て、他にもっと気の利いた時間の潰しようがあるようにも思われた。
     


     
     
    随筆家。日常をそれっぽく書いたり、気持ち悪い話を書いたりする。 著書∶『牛おばさん・他49篇』 パスタ屋店長、人材派遣屋、メーカーのEC担当など種々の職業に就く傍ら、2003年よりウェブ上で執筆活動中。

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