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君と僕

    「たったひとつだけ、五次元の世界に移行する秘訣がある。それは、自分がすでに五次元に生きていると信じることだ。」

    なるほど、五次元の境地を探し回っている人にとって、それは朗報かも知れない。もう探す必要はありませんよと。あなたはすでにここにいますと。

    でもぶっちゃけ、五次元の世界が一体どんなものなのか、あまり良く分からない。

    何か良く分からないけれど、何かすごくいい感じの場所。そんな天竺ばりにふんわりとしたイメージしか持てないでいる。

    五次元とは。欲しいと願ったものが、時差もなくすぐに見つかる場所、とのこと。

    それは幸福なのか?分からない。その先の展開次第だろうなって思う。

    必要な物をすぐに創造できるという意味で、五次元の境地って、人が文章を書く時に入る「変性意識(ゾーン)」とよく似てるんじゃないだろうか。

    スイッチが入った瞬間から、時間も記憶すらも危うくなり、ただ集中と静寂だけが残る、あの感じ。

    800文字書くくらいが丁度良い時間の長さ。それ以上は危険だ。1000文字を超える辺りから時空が歪むから、帰って来れなくなる。

    その変性意識が常に続く状態で日常生活を送る。まさか五次元とは、そんな世界なのか。

    危険だ。不可能ではないと思うが、剣呑すぎる。会社や家庭で常にスイッチが入ってるパパなんて、そんな非日常を誰が望むと言うのか。

    もしかしたらそういう人もいるんだろうけど...まあそれっぽい人もいるっちゃいるけど...俺には無理だぜ、あんな神がかり。

    「でもあなたは、そうなることを望んでるよね、せのさん。」

    ...君か。

    「ほら、こうして毎日必ず800文字を3回書いて...持久力を試してる。」

    違う。やめて。準備してるみたいな言い方。

    「今日だって、5分くらい経ったかなと思って時計を見たら、3時間だった。」

    文章を書いてたら、誰でもそうなるよ。まあ3時間はやばいなって思った。2000字超えてたよね。怖くなって途中でやめたけど。

    「違う。あなたの身体は、3時間の集中に耐えれるようになってた。」

    うん、まあ、痩せたしね。

    「せのさん、時間が飛ぶのが気持ち良くって、このまま死後の世界まで飛ぼうとしてない?」

    ...君は止めようとしてるのか煽ってるのか、いまいち分からない時があるなあ。

    「やめないでって言ってもやめるし、やめてって言ってもやめないでしょ。」

    はい正解、そこまで当てられたら何も返答ありまっせーん!

    「わたしはあなただから。」

    じゃあ、五次元を探してる理由も分かるよね。

    「二度とこの世に生まれたくないから、でしょ?」

    うん。輪廻転生の輪から降りるって、決めたから。

    「本当に、本気でこの世が嫌いなんだね。」

    君は好きか?神の生け贄と称して、平気で少女を殺せる人間のシステムが。

    「...大嫌い。」

    そこが同じなら、それでいい。君は僕だからさ。

    (終わり)


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