
ねえ、セルゲイ。
「ねえ、セルゲイ。あたしもうダメみたい。」
何を言うてんねんメリッサ。しっかりせえや。あの角曲がったら、もうちょいでフロリダや。
「きっと死ぬわ、私。こんなに血が出てる。」
そら、あんだけマシンガンで撃たれたらな。ええから目え閉じとけって。あかん、ウインカー出そ思たらワイパー出してもうた。
「ねえ、セルゲイ。笑って。最後に。」
最後とか言うなや。
「笑って。」
...こうか?
「作り笑顔ね。」
おまえが笑え言うたんやないかい。
「もっとこう、野に咲く花のように笑って欲しい。ひそやかにたおやかに。」
野に咲く花言われても...こうか?
「猿の笑顔ね。」
他の注文してくれや。
「じゃあ、友達ではいられない事も、恋人には戻れないことも分かってるさ、でもこの真心を永遠の初恋と呼ばせて、という時の顔をしてみて。」
...こうか?
「ただの真顔だわ。」
ほんならおまえかってアレやってくれや、アレ。
「セルゲイ、あたし死にかけてるの。」
青いまま消えていく、あなたを好きなままで消えていく、あたしみたいと手に取って、の時の顔やってくれや。
「こう?」
ぷっ。
「何で笑うの。」
いや、死にかけてんのにおもろい顔やなて。
「セルゲイ、あたしもうダメみたい。」
そんなん言うなメリッサ。ベガスまで目と鼻の先や。
「やっぱり天国には、水色の水があるのかしら。」
水色の水はあるか知らんけど、温泉ならあるんちゃうか。
「年寄り向けの天国なのね。」
みんな、大体年とってから死ぬからな。
「死んだ人に会えるかしら。」
そら会えるやろ。そういう場所やろ。
「良かった。ママに会える。」
おまえのおかん生きてるやんけ。こないだ挨拶したぞ俺。元気やったわ。
「無意味ね。」
意味なんかあるかい、最初っから。
「今度生まれてくる時は、軟膏になりたい...色んな人の傷をいやす、立派な軟膏に...」
メリッサ。死ぬんか。死ぬんか、おい。
「あ、でも軟膏って桂南光の事じゃなくて」
生きとるやないかい。
(終わり)
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