
絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #100
各セフィラの両極点は、それぞれ至高極と星幽極と呼ばれている。それぞれの極点から複数の路線が伸び、それぞれ異なるセフィラへの道行となる。
〈美〉セフィラから伸びる電磁加速レーンは、至高極から伸びるものが四つ、星幽極から伸びるものが三つ存在していた。
「ジアド、ジアド、ジアドくぅん! ほらぁ、何度も言っているじゃないかァ。ギーメル径なんてないんだヨ。いや、レーン自体はあるんだろうけど、シャトルはとっくの昔に分解・撤去されてるし、エネルギー供給ラインも通ってないんだ。無駄足無駄足」
ジアドは鉤状に曲げた五指をすくい上げるように振るい、伊達男の肉体の前面を抉り飛ばした。上方に血肉と骨片と脳漿が飛散し、天井の染みとなる。
すでに青年の周囲には同一人物の死骸が多数漂っていた。
「いえ、無駄足であることが確認できたことは収穫です。残された筋道は、僕にとっても困難が予想されるものでした。できればそれは選びたくなかったので、第一大罪への直通路線が本当に利用できないかどうかは是非ともこの目で確かめておきたかった」
「悲しいなぁ、ジアドくぅん、私の言葉は信じてくれないのかい? エッ? 長い付き合いの中で熱き友誼と信頼が育まれていると確信していたというのに、おぉ、なんということであろうか! ジアドくぅん! 一方通行だったとは! ジアドくぅん! 私は衝撃と悲痛で胸も張り裂けんばかりだヨ! ジ・ア・ド・くぅん!!」
青年はすでに壁面を蹴り、〈美〉セフィラへ戻るところであった。
「オヤオヤオヤ、無視は新鮮は反応だネ。どこへ行くつもりだい?」
「知れたことでしょう。この方法を提示したのはあなたですよ。絶罪殺機は第一大罪と繋がっている」
クロロディスは、一瞬無言になった。
「……待て。待て待て待て待て待ちたまえよジアドくぅん、君はいったい何を考えているのかね? ダメだよそれは、まだ早い。落ち着きたまえよ、急いては事を仕損じると言うじゃないか。エッ? いくら君でも〈空虚論考〉を貰ったらどうなるかは私にもわからないんだヨ。エッ? 聞いてるかい? ジアドくぅん? オヤオヤオヤ?」
背後からの声を無視して、ジアドは無人の駅へと向かう。〈美〉セフィラの中心で繰り広げられる神々の闘争をひと目見ようと、至高極の駅はほとんど無人であった。
「申し訳ありません、列車の運転をお願いしたいのですが。殺しますよ」
「ひぃぃ……っ」
数少ない職務熱心な駅員に頭を下げて、融通を効かせてもらった。人間、話せばわかり合えるのだ。
「わかったジアドくぅん、わかったよ君の決意のほどは。本来、血気にはやる若人にいちゃもんをつけるのが年長者の務めだが、私も男だ。覚悟を決めようじゃないか。君、どうせアーカロトくぅんを殺せばアンタゴニアスを乗っ取れて、〈接続棺〉から月世界に行けるとかなんとか能天気なことを考えているんだろうけど無理だからね? そんな簡単じゃないからね? 聞いてるかい? はっはっは? こっち向きたまえよ? ジアドくぅん? おっほっほ?」
こちらもオススメ!