
絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #135
「だからお前があのガキと一緒にあたしのところに転がり込んできたとき、生きて計画の成就を見届ける目が出てきたと思った。こいつらを利用しつくせば、第四大罪なき世界をこの目で拝めるかもしれない――賭けてみる価値はある。礎に甘んじる必要はないかもしれないと」
「シアラに盗聴・通信用のブローチを仕込んでいた点から、恐らくばれているのだろうとは思っていた。わからなかったのは、あなたの発言のどれが本心で、どれが僕を騙すための嘘なのかということだ」
「全部だよ」
「なに……」
「あたしはお前に対して徹頭徹尾本当のことしか言ってない。一言たりともね。意図的に言わなかったことはあれど、嘘は一度も言ってない」
「馬鹿なことをいうな!!」
全身の血が沸騰するのを感じた。
「あなたは!!」
こぶしを握り締める。
「カル、ジュジュ、ダリュ、レミ、レム、トト――」
声が震える。
「あなたの、子供たちへの想いを、僕は聞いた! 確かに! あなたの口から! 聞いたんだッ!!」
――あぁ、ガキどもにはなるべく懐かれない態度を心掛けちゃいるが、どうにもね。あぁ? 心配いらないよ。同情されるようなヘマはしてないさ。あたしが動けなくなったら、あいつらはあたしを切り捨てて生きていく。それでいい。そのために死に損なった身で命にしがみついてんだ。
「へェ、つまりあのとき盗み聞きをしていたことは認めるわけかい。で? アタシがガキどもをジアドのエサにするよう仕向けたことについて恨み言でも言いたいのかい?」
アーカロトは、一瞬、呼吸を忘れた。
ゼグの荒れた息遣いだけが、正気を保たせた。
「知っていたのだろうッ!! 僕が聞いていると知っていて、騙すためにわざとあんなことを――!」
「――甘ったれるんじゃないよ。あたしはお前に嘘はつかなかった。お前のいないところで支離滅裂な妄言をいくら吐こうが、それを嘘だなんだと騒ぎ立てられるのは心外だね。お前が勝手に盗み聞きしたことをお前がどう誤解しようがそんなもんの責任なんか取る気はない。お門違いだよ、ガキ」
知っていた。方法は分からないが、アーカロトが盗み聞きしていることを察知し、自らの想いを誤解させるために、わざとあんなことを言った。
想いを、誤解させるために。
つまり。
「〈法務院〉からの贈り物は、それなりに役に立ってくれた。複雑性の原理を利用して、罪業論的にはあたしの実の子供と同値の存在を五匹もくれるとは。おかげでこいつの種火に十分な罪業をどうにか確保できた」
ギドは、上に顔を向け、嗤った。
その視線の先――塩の神殿の遥か上方、黄金の光のただなかに、何かが蠢いていた。
それは、三つの巨大な肉塊が、無数の血管と神経節で繋がった代物だった。脈打ち、蠢き、可視光を歪ませている。
「果たして人間は、絶罪殺機という神を、本当に自分の手で作ったのか? 新たに作ることはできないのか? ま、あたしは武力なんぞに興味はないがね。欲しいのは並列多元罪業変換機関だ。〈トリスケリオン〉の量産には、どうしてもそれが必要なんだよ」
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