
絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #165
こともなげに再結集する。アーカロトはそのさまを仔細に観察する。
腐れた紅色が、機体の連結と同時に伝播してゆく。波紋が広がるかのように、白い贖罪神機たちが色彩を変化させてゆく。
――頭部。右肩。左前腕部。鳩尾のやや右。腰部。左大腿部。右足の甲。
罪業場浸食の発生源、その位置を正確に把握する。
増援を呼ばれること自体が致命的な状況を招く以上、確率七分の一のくじをピンポイントで引き続けるしかない。
捩じ切られた左腕の自己修復は、どうにか完了しつつある。大罪装甲はいまだ再生途上だが、ジアドを前にしてはそんなものなど無いも同然である。
《やってやるよ》
赤黒い肉腫が増殖してゆくように嵩を増す左手を、握りしめる。
殺す。目の前のこいつが何を囀ろうが関係ない。殺す。粛々と殺す。
何はなくとも〈空虚論考〉の斬撃痕に接触させなければ話にならない。
《……いけませんね。君の唯一の勝ち筋が、僕にもうバレてしまっている。このままでは僕は君を殺してしまうでしょう。それは駄目です。逆でなくてはならないのに》
《黙れ》
絶罪支援機動ユニットを差し向ける。その数は最初よりも明らかに減じている。〈受胎論反駁〉の効果範囲を制御するために、ほぼすべての機体を使い潰さなければならなかった。再生産は可能だが、今すぐは無理だ。
残されたのは、わずかに十機。
それぞれがパーツごとに分解し、装甲が展開し、接続部が露出。赤黒い触手が伸びて絡み合い、瞬時に全く別の形態へと合体/構築する。
アンタゴニアスの両手に、ひとつずつ。
それぞれ五器の罪業変換機関を直列接続。時間軸ではなく、空間軸の理を侵す力が、銃身に溢れ出す。それは、即席で作り出した神殺しの巨銃。
両手首を重ね、銃口を束ね、引き金をひき――絞る。
間を置かずに、二発。
右の銃の撃発と共に、基準界面下が雷轟のごとく震撼し、特殊な空間震が直線状に展開。光媒素の挙動を鈍麻させる。
直後に左の銃が撃発。一つのセフィラをまるごと蒸発させる規模の罪業質量によって固体じみた密度を与えられた罪業場弾体が超光速で撃ち出される。
右の銃によって形成された特殊な媒質の中を、光の衝撃波――チェレンコフ放射を撒き散らしながら直進。
ミーメーシスの右肩が爆ぜて砕け散った。着弾点を中心に、光媒素が巨大な花を咲き誇らせる。
《おや?》
アーカロトは、舌打ちする。七分の一を外した。
何も二種の神の力による競合現象は、〈空虚論考〉でしか引き起こせないわけではない。直列多元罪業変換機関による二種の超越的射出兵器が、ジアドの生存因果を破断した。
《お前が死ぬまで撃ち続ける》
《困った人だ。こちらもまったく同じことができるということを理解していないと見える》
漆黒の罪業場が穂先を超光速で伸長。アンタゴニアスは光媒素探査波の反響によってそれを察知。回避機動に入る。
直後、闇色の豪雨がアンタゴニアスに降り注いだ。
好評発売中!
私設賞開催中!