
絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #147
糸の大元になっているクラゲ個体に掴みかかり、まっすぐアンタゴニアスから引き離す。質量などない超弦斬糸は、抵抗なく〈接続棺〉から引き抜かれていった。損傷の自己修復は行わない。素粒子よりも小さな穿孔痕などないも同然だ。
全身から伸長する罪業場衝角を網目状に多重展開し、〈鏖権神授説〉を検知する結界と成す。罪業場は物質ではないので、超弦とも相互作用しうる。これをもって認識不能・防御不能の敵兵装に対する守りと成す。
《おっと、器用だネ。さて、どうしたものか――》
《策士面で顎を掴んでいるところ悪いが、終わりだ》
《うン……?》
カタリスタス本体の周囲の空間に、複数の波紋が生じた。
《おぉ――》
そこから絶罪支援機動ユニットが展開し、節足を蠢かせながら組み付く。四肢のないカタリスタスは、身をよじるばかりで振り払うことができない。
禍蜘蛛たちはトルソーを覆い尽くすほどに大量に絡みつき、装甲の狭間から紫紺の光を全方位へ放射しはじめた。
直後、アンタゴニアスと超次元的に繋がった絶罪支援機動ユニットたちは、第五大罪から過剰熱量を送り込まれる。炉心融解を回避するために、熱を罪に変換しなおすプロセスが自動発動し――第三大罪の漏出を完全に遮断する檻が完成する。大罪同士の罪業質量的鬩ぎ合いだ。
正面戦力で敵を引き付けている間に、物質世界に浮上していた別動隊が背後より奇襲。ごくシンプルな「鎚と金床」作戦であった。
すべてのクラゲがエネルギーソースを失い、罪業光が消えた。力なく基準界面下を漂っている。
だが、アーカロトは臨戦態勢を解かなかった。
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勁力を帯びた銃弾は、黄金の奔流に絡み取られた。
きしきしと異様な音を立てながら、花開くように鉛玉がめくれ返り、表裏が裏返る。途端、込められた勁力の作用によって爆縮し、粉砕された。
「――あァ?」
不可解な弾丸の末路に、ゼグは火傷の刻まれた顔をしかめる。
「本当に、残念だよ。こいつを帯びたタマをアメリにブチ込めなかったのがね」
老婆は嗤いながら、無造作にライフルを連射する。挙動があまりに気安過ぎて、それがこちらを殺そうという動作であることに一瞬気づけなかった。
ゼグは慌てて射線から逃れた。大袈裟な回避。いまだ未熟な功夫は、紙一重での無駄なき動きなど望むべくもない。
「あの役満ビッチの顔がミリミリと裂けて裏返るところはきっと最高に笑えただろうに、いや惜しいことをしたもんだよ」
「――黙れよ、クソババア。それ以上口を開くな」
「それもそうだね。お前と話すこととか特に何もねえし。あ、いたんだお前。誰だっけお前?」
轟音。
足元の床を放射状の亀裂が走り、反動をゼグの体に返してくる。咆哮とともに肉体内部の力の流れを整え、指向性を与え、腕の先より解き放つ。
蓄勁の冴えは過去最高のものとなった、が。
黄金の罪業場は触手を伸ばし、再び勁力弾をトラップする。しかして今度は弾頭が裏返ったりはしなかった。
ゼグは、目を見開く。
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