
絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #127
アーカロトの胸倉をつかみ上げ、壁に押し付ける。
抵抗してくる様子はない。
ゼグはそのまま、声を絞り出した。
「……案内しろ」
「……ぇ……」
震える唇を、難儀して動かす。
「あいつらが、死んだ場所に、案内しろ」
「もう……埋めてしまったよ……何も……残ってないよ……」
「だとしてもだッ!」
びく、と震える。ゼグが手を離すと、おぼつかない足取りで後ずさる。
よろよろと、こちらから逃げるように、アーカロトは足を動かし始めた。
ゼグは、無言でそれを追った。
道すがら、ゆるしてくれ、ゆるしてくれ、と壊れた人形のように繰り返し続けるアーカロトを、ゼグは一喝して黙らせた。
以降、寒々とした沈黙が続いた。
そして――アーカロトの脚が、止まった。
本来、メタルセルはわずかな摩耗によって濁った鉄色を帯びているのが普通である。だが、その場所だけは地面に新品同然の光沢があった。
それ以外に、ここで何があったのかをしめす跡は何もない。そのことが余計に、アーカロトの発言の正しさに説得力を与えていた。
「ここか」
アーカロトは、震えながら頷く。
掌に爪が食い込むほどに拳を握り締める。
「……泣き言は言わねえ。死んだ奴はもう戻ってこねえ。あいつらをいずれ学府に通わせたかったなんてのは俺の勝手な願望だ。ジアドとかいうクソいかれ野郎にあいつらを託して、さも自分は弟妹のために命かけてますよってツラをしてたらこのザマだ……それはいい。いや、ぜんぜんよくはねえが、言ってもしょうがねえから、いい……」
目尻が下がる。歯を食いしばる。
無力感に己を明け渡すな。その一念だけをよすがに、倒れそうな自分を支える。
「けどな……」
振り返り、アーカロトの胸倉を掴み上げる。
「ひッ」
「けどな……!」
正面から睨みつける。七千年を生きたはずの瞳に、恐怖の色があることに怒りを抱く。
「テメーの加害者ヅラだけは我慢なんねえよ……!!」
冷たいものが頬を伝う。
「やめろよ……なんなんだよ!! なんでテメーは許しを請うてんだよ!! テメーがあいつら殺したのかよ!! ちげーだろうが!! ムカつくんだよその態度が!! 何様だよテメー!! 俺たちごときの生き死には全部自分の思い通りになるとでも思ってんのかよ!! フザけろよこの野郎!!」
胸倉を掴み上げたまま、相手の胸に額を当てる。肩が震える。
「……悼んでくれよ……!!」
声を絞り出す。
「あいつら、生ぎてだんだよ!! 確がに俺だちの前で笑っでだんだよ……! 悼んで、くれよ……テメーの筋の違う罪悪感なんかのためじゃなく……あいつらのために……! なぁ……!」
肺腑が震え、熱いものが喉から迫り上がってくるようだった。
「反省も、復讐も、そんなもん後でいいだろ……! 泣いてくれよ! あいつらのために! あいつらのためだけに!!」
くそうるせえはしゃぎ声があった日々を、偲ぶ。だがもうどこにもいない。
肩に手の感触があった。
「そうだね……ごめん」
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