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絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #129

     前 目次

     結論から言うと、「おじいさま」など存在しなかった。
     アンタゴニアスに記録されているシアラの塩基配列パターン(解析可能な部分のみ)から、彼女の育った隠れ家を割り出し、触手を潜り込ませて探査。
     しかし検出されるのはシアラの遺伝子ばかりで、それ以外の人物が残した生体サンプルなど存在しなかった。
     シアラは、一人で暮らしていたのだ。
    「オイどういうこった?」
     アーカロトは答えず、インターフェースに表示された探査結果を睨む。
    「シアラが一人で生きてきたなどあり得ない。誰かに守られてはいたはずだ。あるいは精巧なロボットかとも思ったが、床の摩耗は明らかにシアラ一人の体重の痕跡しかない。あらゆる見地から言って、この家にはシアラしかいなかった」
    「いやだからどういうこったよ!」
     何か。
     記憶の奥底で、何かが疼いている。
     自分は、この現象を知っているのではないか。
     七千年の眠りにつく前、自分は何度もこの現象に煮え湯を飲まされてきたのではなかったか。
     だが――わからない。そのことを思い出せない。
     その人物はもうとっくに殺されたはずだ。自分はその場面に居合わせたはずだ。
     その事実だけは覚えている。それ以外のすべてを忘れたが。
     思い出せ。
     その人物自体や、成したことそのものはもうわからずとも、結果として世界に何をもたらしたのか――それぐらいは。
     因果の、空白の、輪郭を認識しろ。自分が何を忘れたのか。何を覚えているのか。その境目を。
     どうあれ絶対に齟齬はあるはずなのだ。なぜそんなことが起きたのかまったくわからない現象があるはずなのだ。
     それは――それは何だ?
     〈彼ら〉は?
     あれらは一体、どこから来た?
     なぜ人類はあんなものと遭遇する羽目に陥った?
     無論、外宇宙からの侵略に前触れや原因などない、と考えることはできる。異世界の形而上生命がたまたま天文学的確率を乗り越えて地球を発見できたと考えるべきなのかもしれない。実際に起こってしまったことに意味や理由を求めるのは逃避なのかもしれない。単なる事故に悪意を見出そうとするのは不毛なのかもしれない。
     だが。
     自分はその原因を知っていたような気がしてならないのだ。その人物がすでに死んでいるという確信があるのと同じように。
     輪郭を、認識しろ。
     第一大罪フォビドゥン・セフィラ。人類を救うために人工的な死後の世界を創造し、のちに続くすべての悲劇の遠因となった罪。
     第二大罪アナザーエンブリオ。贖罪神機をもって歴史上最も多くの人命を奪い、かつ罪業変換機関を創造してのちの苦痛に満ちた時代を招いた罪。
     第三大罪メタ・オブリビオン。メタルセルの電子神経網を     し、そこに蓄えられていた人類の叡智を  、結果として大規模な技術の失伝と科学精神の途絶を招いた罪。
     第四大罪ネフィリム・ブラッド。解析不能遺伝子を人類の間にばら撒き、自由意志を麻痺させ、望ましい形で惨たらしく死なせるための人間家畜体勢を確立させた罪。
    「――輪郭を、認識しろ」

    【続く】

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    小説書きでミニチュアゲーマー。おもにSFを好み、三度の飯よりセンスオブワンダーが好き。小説が面白かったらフォローしておくれ。なにかあればツイッターアカウントのDMからどうぞ。https://twitter.com/shu64737980

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