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絶罪殺機アンタゴニアス 第一部 #145

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     ならばもはや語り合うことはない。
     彼女の末路を是とするいかなる理屈も、アーカロトは受け入れるつもりはなかった。
     罪業炎を吹かし、身をひねり、〈空虚論考〉を閃かせる。
     ぐにゃり、と音がしそうな挙動で、カタリスタスは斬撃軌道を回避する。異様に長大な四肢が海草のようにゆらめき、黒き刃をかいくぐる。あれを人間が操作しているとは信じがたい、寒気を催すほど異様な動きだった。
     〈空虚論考〉が巻き起こす光媒素エーテルの風を検知し、その流れに逆らわず回避機動を成す。全身に一万七千個の関節を持つカタリスタスのみが可能とする身体制御。
     そのまま、〈鏖権神授説〉がのたうちながらアンタゴニアスの罪業ファンデルワールス装甲に絡みつく。分子同士を緊密に固着させる超越的装甲も、素粒子すら両断する超弦斬糸の前には紙切れ同然である。
     熱したナイフがバターに沈み込んでゆくように、絶対零度の装甲に切れ込みが生じてゆく。
    《それで僕を出し抜いたつもりか》
     瞬間、カタリスタスを囲む全方位から罪業場弾体が撃ち込まれる。分子間力反転の罪業場による崩壊爆発が、超弦斬糸の発生源たる腕部パーツをアンタゴニアスに押し付けるように吹き飛ばす。結果として超弦にゆるみが生じ、腕を引き抜いた黒き竜人が〈空虚論考〉を縦横に振るう。
     いくつかのパーツが不可能色彩に飲み込まれ、両断された。断面の原子がベータ崩壊し、放射線を撒き散らす。
     カタリスタスを取り囲んでいるのは、絶罪支援機動ユニットたちだ。数千年ぶりに、アンタゴニアスと子機たちの連携戦術が発揮された。
    《おっとっと、それがあったねェ。いや面倒だな。オジサン頭が固くてそういうの対応できない、なァ……!》
     四肢がすべて分離し、それぞれのパーツに切れ目が入ってまた分離し――やがてカタリスタスの周囲を無数の軍団が浮遊していた。そのすべてに罪業収束器官が備わり、第三大罪メタ・オブリビオンのエネルギーを翡翠光の形で湛えている。
    《集団戦闘の心得はあるかな? 今後のためにも、君の将器を見ておきたいのだがネ》
    《ふざけた趣向を……!》
     黒紫と緑青の軍団が一斉に進軍し、ぶつかり合った。
     無数の光線と光刃が乱れ飛び、光爆が目を灼き、残骸がそこかしこで飛散し始める。
     ――三次元の軍略において重要なのは、戦線の維持に拘泥しすぎてはならないということである。
     人類がいまだ地面にへばりついていた頃の戦争は、いかにして相手の後背に回り込むかが戦術レベルでの最重要ポイントだった。両陣営は敵に回り込まれるのを嫌って、戦線をどこまでも横に伸ばしてゆく。その過程で、敵の脆弱なポイントを見出して戦力を集中し、前線を突破できた方が有利となる。大規模集団戦闘の基本的な流れであった。
     だが、三次元戦術においてはこの理屈があまり成り立たない。なぜなら回り込む方向は左右に限らず、上からも下からも斜め方向からも回り込み放題であり、地上戦とは比較にならないほど戦線が崩れやすいのだ。

    【続く】

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    小説書きでミニチュアゲーマー。おもにSFを好み、三度の飯よりセンスオブワンダーが好き。小説が面白かったらフォローしておくれ。なにかあればツイッターアカウントのDMからどうぞ。https://twitter.com/shu64737980

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