メインコンテンツへスキップ
見出し画像

食は広州にあり。

    ここは小人のいる私の脳内図書館である。細い黒縁の真ん丸のメガネをかけた小人の片割れが、図書館の受付にちょこんと座っている。

    「お前も、そうやってメガネをかけていると、賢そうに見えるな」

    ひとしきり感心した。

    「無駄口叩いてないで、どうだ撮ってきたか?」
    「ほい」

    私はスマホのロックを外して小人に渡した。

    「あー、かー、くそ」

    乱暴な手つきで人のスマホの写真を、スワイプアンドスワイプしている。

    「お前、写真が下手くそだな!」
    「ああ、そうですが、それが何か?」
    「本当はちゃんとやろうと思ったらもうちょっとちゃんと撮れるだろう?写真じゃなくても、元美術部で絵は描いてただろ?なんでちゃんと撮れなかったか言ってみろ!」
    「すみません……」

    というわけで、もうちょっとがんばればちゃんと撮れた写真をちゃんと撮らないままでここに載せ、たまには広州、華南の食をご紹介しようかと思います。

    「ちょっと待て、なんでちゃんと撮れなかったのか言ってみろ!」

    小人がまだ叫んでおりまする。ええっと……、私の撮る写真の中で特に食べ物の写真がイマイチなのは、きちんと理由があります。

    写真なんかほっといて、さっさと食べたいからであります。^^;

    画像
    炭烧蜜汁叉烧肠

    炭烧蜜汁叉烧肠は、米粉で作った薄く柔らかな腸粉の皮に、甘い蜜だれをまとわせて香ばしく焼いた叉焼を包んだ広東点心。つるりとした皮の中から、甘辛く濃い叉焼の味が出てくる。そこへ醤油ベースの腸粉だれをかけて食べる。(青燈先生による説明)

    赤いのはチリソースです。広東の叉烧とは、甘辛く煮込んだ豚肉で、日本で言えば豚の角煮が似ているといえば似ています。八角の使い方や皮はパリ、中はジューシー、どこまで甘いか等々お店によって味のこだわりが違う。但し、中年として言わせていただくと、がっつり味付けされると必ず胃もたれを連れてくる一品。その点、この店は味はしっかりついているが少量しか入っていないために(中年にも)爽やかにいただけました。

    画像
    生滚猪腰粥

    生滚猪腰粥は、米粒がほどけるまで煮込んだ広東粥を再び熱々に沸かし、下処理した豚の腎臓を最後に加え短時間で火を通す料理。粥はなめらかで淡白だが、猪腰には弾力と独特の旨味があり、生姜や胡椒、香菜がその風味を引き締める。(青燈先生による説明)

    この左下の白い揚げワンタン、入れる前は硬い。入れた後、その硬さが徐々に変化します。日本で言えばおにぎりの海苔がパリパリが好きか、くたくたが好きかと同じ要領で、好きな硬さでお粥と共に口に入れます。程々の油の味と香りそれにほのかな塩味を足す。お粥は非常にあっさりしているので、そこに少しだけ油の味が足されるのが美味しいんですよね。所謂、味変ツール。

    画像
    香煎原味萝卜糕

    香煎原味萝卜糕は、大根と米粉を蒸し固めた広東式の大根餅を、表面が香ばしくなるまで焼いた点心。外側はカリッとしているのに、中は驚くほど柔らかく、ところどころに入った腊味の塩気と、大根のほのかな甘みが広がる。(青燈先生による説明)

    野菜が中心の穏やかな味なのですが、表面を油でカリッと焼いている、この部分で結構、なんていうのかな?味が淡白に落ちすぎず、楽しめるんですよね。柔らかさと硬さの相反する食感がありますし。この細かい技が好き。

    画像
    蟹黄小笼包と水晶虾饺皇

    手前の 蟹黄小笼包(xiè huáng xiǎo lóng bāo) は、普通の小籠包に 蟹黄=カニ味噌や蟹の内子系の濃厚な旨味 を加えたものです。店によって、豚肉餡に蟹肉・蟹黄を混ぜるタイプ、蟹黄を強く効かせるタイプなどがあります。皮の中には肉汁、というよりほぼスープ状の旨味がたまるので、食べる時はまず少し穴を開けて汁を逃がすか、レンゲに載せて食べるのが安全です。
    奥の 水晶虾饺皇(shuǐ jīng xiā jiǎo huáng) は、広東点心の代表格、いわゆる 海老蒸し餃子・蝦餃。ただし「水晶」と付くので、皮の透明感を特に売りにしているタイプですね。皮は小麦粉の普通の餃子皮ではなく、澄面(小麦澱粉)やタピオカ澱粉などを使って透明感と弾力を出すのが特徴です。(
    青燈先生による説明)

    王道の点心。もちろん美味しかったよ。えびもプリっとしてたしね。ただ、蟹はあまり私の好みではなかったな。体調にもよるんでしょうけど、ちょっと濃厚すぎた。息子は喜んで一人で2個食べてたな。左側には红醋というお酢。黒、白、赤でそれぞれ酢があるのですね。色が綺麗。

    画像
    荷香珍珠糯米鸡
    画像
    開くとこんな感じ

    写真を見ると、外側はしっかり 荷葉(蓮の葉) で包んで蒸してありますね。蒸している間に、蓮の葉の青っぽくて少し土っぽい独特の香りがもち米へ移ります。広東点心の糯米鸡は、もち米の中に 鶏肉、椎茸、腊肠、塩卵黄、干しエビ、豚肉 などを入れることが多いです。今回の写真では、中央に濃い茶色の具と、オレンジ色の部分が見えるので、味を含ませた肉類と塩卵黄系 が入っている可能性が高そうです。(青燈先生による説明)

    自分の好みとしては、見事に魚臭さの消えた王道点心よりも蓮の葉の香りがついたもち米。感動!この料理で好きだったのは蓮と椎茸と干しエビの香りのコラボです。全部感じた。椎茸が強くて干しエビは後ろ。エビが少しだけなのがいい。上の点心がどちらかといえば宮廷ドラマとかで金持ちが食べてそうな感じ。で、この糯米鸡はやや庶民より。漁港の香りを感じたような気がしました。

    画像
    金不换芋香春卷

    まず 金不换。広東・潮汕あたりで、一般に 九層塔=タイバジル系の香草 を指します。つまり香りの強いハーブ。そこに 芋香 とあるので、タロイモ系の香りや甘みを合わせた春巻きです。写真を見ると、中はかなり具だくさんですね。細切りの肉、にんじん、青い香草、それから芋っぽい具が見えます。皮はかなり薄くて、揚げ色も軽い。いかにも 「パリッ」より「サクッ」 に寄せた春巻きです。(青燈先生による説明)

    このタイバジルの香りも絶妙でした。その他の食材も消さずに食感と香りが混ざり、揚げ方もいいのか衣も油のしつこさがなかったです。広東料理は味は薄いものが多いのだけど、ポイントではこのような香りも味もしっかりしてスパイシーなものも出てくる。これも飽きさせない工夫ですね。幅が広い。

    画像
    传统沙翁

    沙翁は「炸蛋球」「沙壅」「冰花蛋球」などとも呼ばれ、広東では少なくとも明末ごろまでさかのぼるとされます。明末清初の屈大均『广东新语』にも「沙壅」という菓子の記録があり、当時は糯米粉・砂糖・豚脂を使ったものだったそうです。のちに小麦粉と卵を使う今に近い形へ変化しました。
    写真のものは、まさに現在の典型的な沙翁ですね。卵をたっぷり使った生地を油でふわっと膨らむまで揚げ、最後に砂糖をまぶす。中はパンやドーナツみたいに詰まっているというより、かなり軽く、蜂の巣のように空洞ができるのが特徴です。外は少しカリッ、中はふわっとして、卵の香りが強い。中国作家網の広東早茶の記事でも、沙翁はかつて蛋挞と並ぶほど有名だった一方、今では以前ほど見かけなくなった「昔懐かしい点心」と紹介されています。(青燈先生による説明)

    シュークリームあるじゃんと思って頼み、割ったらクリームないじゃんとなった一品。広東料理だったのか。優しい味でした。でも、ぶっちゃけ、クリーム入っていて欲しかった。それにしても明末まで起源が遡るとは。

    ちょっとお金を出してたまに美味しいものを食べると、味の組み立てが全然違うことに驚きますね。いつもは使わない脳の部分を起こして、味わうことに集中する。普段はなんか味がぼんやりしてるなって思うか、味が濃いなと思うかくらいなのだけど、きちんと料理されたものを食べると、ああやっぱり素材の味が消し飛ぶくらいの調味料はダメだし、また、香りを吹っ飛ばすような料理もダメで、つまりは料理ってとっても繊細なものなんだろうなって思います。歯触り、香り、彩り、脂が美味しいなと感じる少量で入り、胃腸に負担にならない塩味。

    本日のこの早茶は3名で395元でした。一人132元。本日のレートで3099円。深圳の早茶の価格帯をご紹介すると、

    安め   盛世唐宮、海皇漁港、稲香など  70〜80元/人
    標準           蘩楼、点都徳、鳳凰楼      80〜110元/人
    中上級  金皇廷             110元前後/人
    やや高級 勝記              100〜150元前後/人
    高級   利宝閣など           115元〜 注文次第で更に上

    本日は、勝記で食べました。早茶というか飲茶といえば香港が有名で、確かに香港の飲茶は美味しい。器やお店の雰囲気もある。ただ、上のような値段ではないですね。だから、たらふく食ってやると思った時にはちょっと足を伸ばして深圳に入れば、内容はそこまで変わらずたらふく食えます。^^
    実は、深圳の回し者でした!?

    画像
    お茶の受け皿

    最後にお茶の受け皿で終わりになります。たまにちょっと高いものを食べると、いつも食べてるものと味わいが違って、それを味わう。そういう時食事って本当はただ食べ物を味わっているだけじゃないんじゃないかなって思うんですよね。自分的には時間かなって思う。忙しくて適当に食べているものをたまには丁寧に食べようよって話。そして、たまには器や美しい料理を眺めて、時を過ごそうってことなんじゃないかな。

    年をとっても美味しいものを美味しいと感じられるように、毎日体に気をつけながら生きていきたいですね。

    汪海妹
    2026.10.02

    おまけ

    小人「なんだこれ、ほとんど青燈が書いてるじゃん」
    海妹「うるさい」
    青燈「まぁまぁ、喧嘩しないで」
    小人「お礼に今度は飲茶の差し入れをしろ」
    青燈「まあまあ」
    小人「自分は何も知らないでいつも食ってるくせに」
    海妹「わかった。わかったよ!今度ご馳走するから!」

    ⭐︎小人が出てくる過去エッセイ⭐︎
    この口の悪い小人が気になる方、下記もお楽しみいただけましたら幸いでございます。


     
     
    2020年より魔法のIランドと小説家になろうに小説とエッセイを投稿しています。子供の頃から体質的に人間心理に非常に敏感で人生の前半を苦労して生き、その体験をもとに作品を綴っています。私より若い私と似た誰かへ届くことを願ってます!^^

    あなたへのおすすめ