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1995幎、9月1日。

ただ残暑が厳しい䜐賀の朝。

碧翔孊園2幎A組の教宀は、倏䌑み明けの喧隒に包たれおいた。

そこに入っおきたあたし、䜐野さの立倏りっかは、心が゜ワ゜ワしお萜ち着かなかった。

あたしは教宀に入るなり、自分の垭にカバンを眮こうずしお、うっかり叩き぀けおしたった。

「おはよヌっ   あヌ、暑い 倏䌑み終わるの早すぎでしょ 宿題 んなもん、終わるわけないじゃん、あははは」

その笑い声のトヌンが、い぀もより高くなっおる気がする。ダメだ。浮かれおる。

窓際の垭で、ドむツ補の黒い倚機胜ペンを回しおいた迅じんが、鋭い芖線を向けおくる。

「  立倏。朝からうるさい」

迅は怅子を匕いお立ち䞊がるず、あたしの目の前で立ち止たった。

クォヌタヌゆえの敎った顔立ちに、隠しきれない「䞍信感」が浮かんでいる。ダバい。

「䜕よ折通くん 朝からガン飛ばさないでよ」

「  お前、なんか隠しおんだろ。さっきから䞀歩も動かずに、廊䞋の方ばっかり気にしお。あず、そのポニヌテヌルの結び目  い぀もより高いぞ。気合入りすぎだ」

「なっ、どこ芋おんのよ 気のせいでしょ、気のせい」

あたしがポニヌテヌルを抌さえお叫んだ瞬間、教卓でノヌトを広げおいた暹たちきくんが、県鏡のブリッゞを指で抌し䞊げた。

「䜐野さん、無駄だ。折通の芳察県を吊定する前に、自分のバむタルを確認しろ。顔面ぞの血流が異垞に増加し、発汗量も通垞の登校時より15%ほど倚い。  そしお、その手玙手折りは䜕だ 2幎A組の生埒が、1幎生のフロアを気にする合理的理由は䞀぀しかない」

暹くんの芖線の先には、あたしのポケットから半分はみ出した、耇雑な圢に折られた手玙1995幎圓時、女子の間で倧流行した「手玙の折り方」があった。

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「あ、これ、これは  」

「早坂はやさかか」

迅の声が、䞀段ず䜎くなった。

「  っ、もう 分かったわよ 蚀えばいいんでしょ」

あたしは、教宀䞭の芖線が集たるのも構わず、机を叩いお宣蚀した。

「あたしず早坂くん  昚日から『お詊し』で付き合うこずになったの 文句ある」

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䞀瞬の沈黙。その埌、教宀の空気が二぀の反応に分かれた。

「    は   マゞか」

迅は呆れたように倧きな溜息を぀いた。でも、その口元には、どこかホッずしたような、ごくわずかな笑みが浮かんでいるのをあたしは芋逃さなかった。

「  立倏、早坂はおもちゃじゃないんだぞ」

「なんおこずいうのっ おもちゃになんかしおないもん ちゃんず圌氏だもん」

「早坂に『盞談にはい぀でものる』っお䌝えずいおくれ」

「なんでそっち あたしは」

「興味深いな。䜐野さんの『男性嫌悪』ずいう心理的障壁に察し、早坂の『無害性』が有効に䜜甚したか。  だが、『お詊し』ずいう抂念は定矩が曖昧だ。期間蚭定、接觊の蚱容範囲  玲に悪圱響が及ばないよう、僕がガむドラむンを䜜成しおやろうか」

「暹くんは黙っおお 党然ロマンチックじゃないんだから」

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昌䌑み。

1幎B組では、僕、早坂はやさか䞀頌かずよりが、ちらりず隣の垭の野瀬のせ隆文たかふみず、前の垭の皲城いなぎ芳圊よしひこに目をやっおいた。

  蚀わなきゃ。蚀わないず、きっず野瀬がニダニダしながら嗅ぎ回る。

意を決した僕は、匁圓を食べる二人に向かっお切り出した。

「あ、あのさ  野瀬、皲城」

「ん なに早坂、顔赀くしお。぀いに立倏先茩に告癜しお玉砕した、ずか」

野瀬が意地悪くニダリず笑う。

「違う  そうじゃないんだけど  」

僕の顔は赀くなっおいるこずだろう。声をひそめお話を続けた。

「あのさ、僕  䜐野先茩ず、付き合うこずになったんだ」

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皲城は食べおいたからあげを箞から萜ずし、野瀬は飲んでいたゞュヌスを噎き出しそうになった。


「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」

二人の驚きの声が、教宀䞭に響き枡る。

呚りの生埒が䜕事かず䞀斉に振り返った。

「ばっ、声デカいよ」

僕が慌おお二人の口を塞ごうずする。

「いやいや早坂 なにが『付き合うこずになったんだ』だよ お前、倏䌑み䞭に䜕があったんだよ」

野瀬が興奮しお身を乗り出す。

皲城も、からあげを拟うのも忘れお、目を䞞くしお僕を芋぀めおいた。

「たさか早坂、その  あの立倏ちゃ  先茩のハヌトを射止めたのか」

僕は、昚日の倕方、䜐野先茩の申し出の流れで付き合うこずになったずいう、䞀郚始終を話しお聞かせた。

語り終えた僕は、俯きながらポツリず付け加えた。

「  なんか、ただ倢みたいで、信じられないんだけど」

野瀬は顎に手を圓お、じっず僕の話を聞いおいた。
そしお、フッず小さく笑った。

「ぞえ。やるじゃん、早坂。たさか、あの立倏先茩を萜ずすずはね」

その声には、からかいだけでなく、どこか感心した響きがあった。

皲城は満面の笑みで僕の背䞭をバシバシ叩いた。

「やったな早坂 俺たちの早坂が、぀いに碧翔孊園の倧物ずカップルに これは1幎B組の快挙だ」

「いおお 皲城、痛いっお」

二人の祝犏に、僕は照れくさくなっお、笑った。

誰かに話すこずで、ようやく珟実味を垯びおきたような気がした。


昌䌑みが終わり、授業の合間の䌑み時間。

僕は心を萜ち着かせ、図曞宀ぞ向かった。

岡本おかもず玲れい先茩は、この時間、よく図曞委員の仕事をしおいるのだ。

予想通り、曞架敎理をしおいる岡本先茩を芋぀けた。

「岡本先茩」

「あ、早坂くん」

岡本先茩は静かに振り返り、い぀もず倉わらない優しい笑顔を向けおくれた。

僕は緊匵しながらも、正盎に話した。

「あの  䜐野先茩のこずなんですけど」

僕がそう切り出すず、岡本先茩は少しだけ目を䞞くした。

「  うん」

「僕、䜐野先茩ず  付き合うこずになったんです」

僕は、もしかしたら驚かれお匕かれるんじゃないかず、䞍安でたたらなかった。

でも次の瞬間、岡本先茩はふわりず笑った。

「そう、なんだ  」

岡本先茩はそっず本を閉じ、僕のほうぞ向き盎った。

「  すごく、嬉しい。早坂くん、ずっず立倏ちゃんのこず、䞀途に想っおたものね」

岡本先茩の蚀葉は、たるで僕の心を透かしお芋えおいるようだった。

「僕、おっきり岡本先茩には匕かれるんじゃないかず思っお  」

「たさか。立倏ちゃんも、早坂くんも、わたしにずっおは倧切な友達だもの。二人が幞せになるのは、わたしにずっおもうれしいこずだよ」

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岡本先茩が心の底から祝犏しおくれおいるのが分かった。

その枩かい県差しに、僕は胞が熱くなるのを感じた。

「ありがずうございたす、岡本先茩」

「ううん。おめでずう、早坂くん。  立倏ちゃんは、玠盎じゃないから、早坂くんがしっかりリヌドしおあげおね」

岡本先茩はクスクスず笑った。

そしお、そっず本棚から䞀冊の本を取り出した。

「これ、読んでみたらどうかな わたしのおすすめの恋愛小説」

「え、おすすめずかあるんですか」

岡本先茩はいたずらっぜく埮笑んだ。

その笑顔は、どこか、芪友の恋を応揎する「お姉さん」のようだった。

僕の新しい恋は、友人たちの枩かい祝犏に芋守られながら、ゆっくりず育っおいくのだった。

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