
マッチョだらけの華道教室 | ショートショート #14
「本日のテーマは『和』と『協調』です」
と、講師が言う。
参加者たちは花器に向かい、神妙な顔で花を生けている。
参加者の一人の前で講師が足を止め、「中心の花が一つだけ目立ちすぎでは?」と指摘した。
「全体が締まると思いました」
「細い枝や小さな花にも目を向けてください」
「でも組織だってまとめるには強いリーダーが重要で」
「組織論は禁止ですよ。テーマを忘れずに」
「……はい」
向かいの席で生けていた初老の男性が、講師に向かって言う。
「同じ色、同じ大きさの花を使えば『和』になるだろうが」
もう少し離れた席では、別の男性が隣の女性に「花の世話なんて、家では嫁にやらせてるからなあ」と話しかけ、嫌な顔をされている。
この研修で学ぶべきことを、参加者はまだ誰一人として理解していない。
管理職向け外部研修
脱・マッチョ華道
・華道の作法を通して、トキシック・マスキュリニティを脱することが目的。
・研修中は、社名、肩書き、実績への言及やポジショントークは一切禁止。
(416文字)
おはようございます。
ぽていとぽたあとです。
こういう外部研修、本当にありそうだなと思いながら書きましたよ。
トキシック・マスキュリニティ(toxic masculinity)とは、「有害な男性性」などと呼ばれるものです。
強さや支配・優位性、弱さを見せないことなどを過剰に求める男性性の規範を指します。
男尊女卑的な価値観とも、当然ながら強く結びついています。
男性だけに宿る思想ではありません。
参加者の中には、女性も1人いるようですね。
トキシック・マスキュリニティのことを、もっとカジュアルには「マッチョな思想」などとも言ったりしますね。
「マッチョだらけの華道教室」とは、そういう意味でございました。
話の途中で出てきている初老男性の「和=同質性」みたいな解釈も、マッチョな組織文化と非常に親和性が高いように感じます。
息苦しいったらありゃしない。
田原にかさんの毎ショのお題に挑戦しました。
やー、また面白かった。いつも、ありがとうございます。
お題:マッチョ華道
🥔・🥔・🥔
ほかにもショートショートを書いています。
よければお読みくださいね。