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三秒だけ待つ

    四人で新しいボードゲームを始めることになった。

    説明書を読み終えると、一人が言った。

    「最初はこのカードを多めに取ったほうがよさそうだね」

    その瞬間、彼の頭に別の考えが浮かんだ。

    違う。

    最初はカードより、お金を残したほうがいい。

    すぐに言いたくなった。

    「でも——」

    声が出かけたところで、止めた。

    三秒待つ。

    最近、自分で決めたことだった。

    何か思いついても、すぐに会話へ入らない。

    一度だけ待つ。

    一。

    二。

    三。

    すると、別の友人が言った。

    「でも最初にお金使いすぎると、後で困らない?」

    彼が言おうとしていたことと、ほとんど同じだった。

    「あ、それ僕も思った」

    今度は自然に言えた。

    ゲームが始まった。

    しばらくすると、また気づいた。

    「あ、そのカード——」

    言いかけて、止まる。

    三秒。

    すると、カードを出した本人が、

    「あ、これ今使わないほうがいいのか」

    と言った。

    彼は何も言わなかった。

    さらに少しして、今度は誰も話さない時間があった。

    一。

    二。

    三。

    誰も続けない。

    そこで、

    「じゃあ、次はこうしてみない?」

    と言った。

    「いいね」

    話が進んだ。

    ゲームが終わったあと、彼は少し不思議だった。

    いつもより、言いたいことを我慢した感じはしなかった。

    必要なことは話していた。

    ただ、

    自分が言わなくても誰かが言うことと、

    自分が言ったほうがいいことを、

    少しだけ分けられた。

    三秒は短い。

    待っている間に会話が終わるほどではない。

    でも、その三秒の中で、

    「今すぐ言わなければ」

    という気持ちは、

    少しだけ小さくなった。

    帰り道、彼は思った。

    話す前に必要だったのは、

    もっと上手な言葉ではなかった。

    ほんの少し、

    自分の番を待つ時間だった。

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    29歳 ASD・ADHD 休職・復帰経験あり 今の仕事辞めたい 希死念慮あり

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