
ヒアルロン酸は溶けてなくならない〜「分解される」という最後の安心について〜
豊胸を書いた。鼻のシリコンを書いた。どちらも、異物を入れたツケが数十年かけて出てくる話だった。
ここまで読んできた人なら、こう考えるはずだ。だったらヒアルロン酸でいい、と。注射だけで済む。切らない。何より、やがて溶けてなくなる。前の二本で異物の怖さを知った人ほど、自然にそこへ逃げる。
その「溶けてなくなる」が、最後の安心になっている。今回は、それを裏切る話だ。
溶けるという前提
ヒアルロン酸フィラーは、体内で分解される。数か月から、長くても一年ほどで吸収される。だから気に入らなければ元に戻る。リスクが残らない。そう説明され、そう信じられている。
おまけに、溶かす注射がある。ヒアルロニダーゼという酵素を打てば、入れたヒアルロン酸を消せる。入れて、気に入らなければ消せる。二重の安心が、フィラーを別格の選択肢にしている。シリコンバッグやプロテーゼと違って、抜く手術がいらない。入れっぱなしにならない。
ところが、その前提を裏切る報告がある。
ヒアルロン酸の肉芽腫、つまり異物に対する慢性的な炎症のしこりは、注入からかなり経って出てくることがある。報告では、二週間後から、長いものでは六年後まで。半年で消えるはずのものが、六年居座る。発生率はおよそ0.3%。低い数字に見えるが、施術の母数が膨らめば、実数は無視できない。
そして、こうして遅れて出てきた肉芽腫は、溶かす注射では片づかないことがある。消せるはずの安心も、ここでは効かない。「溶ける」も「溶かせる」も、いつも成り立つわけではない。