PERが40から16に。それでも株価下落が止まらないのは、なぜか?
前に、下落しているグロース株を『割安になった』という理由で買い向かうと、恐ろしい結末がまっている事例を紹介しました。
『成長が鈍化したグロース株』が下落しているとき、需給に何が起きているか?
今回は、そのメカニズムを、深掘りします。
成長鈍化は、株主の大脱出劇の始まり
ピカピカのグロース株は、『成長期待』によって株価を上げます。
しかし、市場が「もう伸びない」「期待はずれだ」と感じた瞬間、株が売られ、すべてが逆回転を始めます。
まず最初に逃げ出すのは、初期に大量の資金を投じた最も上手い投資家です。彼らはすでに大きな利益を出しています。だから、迷うことなく上手に売り抜けます。
次に売るのは、上昇トレンドに乗って買っていたモメンタムトレーダーたちです。
彼らはPERや割安を理由に買っていません。株価の上昇を期待して買っています。株価が下がれば、彼らの投資理由そのものがなくなります。
そして、問題は重なります。
配当のないグロース株には、『配当投資家』という買い手は、出てきません。
そんな中で、バリュー投資家が「PER16なら魅力的だ」と主張しても、それは元々持っていたホルダーには、まったく響きません。
なぜなら、彼らはPER40でも買っていた人たちなのです。PERを判断基準にしていたなら、そもそもそんな割高な株を、買っていません。
あなたとは、まったく別の価値基準を持つホルダーが95%を占めていて、今、損をしていて、売っているのです。
株価の下落は、理論的な『適正価格』で、例えばPERが16になって、ピタリと止まるわけではありません。
株価は妥当なPERを下に突き抜けて、下がり続けます。
失望したホルダー全員が売り終えて、初めて、下落が止まります。
『かつての成長期待モメンタムホルダー』たちが、まだ損を抱えて残っているならば、そこでピタッとは止まらないのです。
『株価の下落』と『ホルダーの入れ替わり』には、タイムラグがあります。
株主の入れ替わりには、『底練り』という長い停滞期間を伴います。半年で終われば幸運です。出来高がないままだと、2年続くことも珍しくありません。出来高が作られるのを待つ必要があります。
株価下落は、ホルダーが入れ替わったサインでは、ありません。入れ替わりには、出来高が必要です。
割安で買った人の悲劇
そんな中で、バリュー投資家がPERを理由に「割安だ」と飛び込んでも、完全に少数派です。今、損した株を抱えているメインホルダーは、かつてPER40でも買ったような人たちです。
彼らは「PER16なら持つべきかな」などと、考えを変えることはありません。株価が少しでも上がれば、売るチャンスだと待ち構えています。
バリュー投資家が「PER40だけど、まぁ買ってみよう」と、決して考えないのと同じです。
「抱えて待つ」ことの、さらなるリスク
停滞している株を抱え続けると、今度は、別の問題が浮上します。
2年も経つと、企業が迷走し、本当に業績が悪化し始めるケースも出てきます。
成長の勢いを失った会社は、焦って無駄な投資を繰り返し、2年後には見る影もなくなることがあります。競合他社が登場する時もあるし、時代の流れに取り残されることもあるでしょう。
さらに厄介なのが、業績が極端には悪化しない場合です。
EPSは停滞微増でグダグダしているのに株価だけが先行して極端に下がると、何が起きるでしょうか?
なんとPERが下がります。どんどんバリュー投資家に魅力的に見えます。
そして、買い向かうバリュー投資家が次々とたくさん現れます。
そして、だいぶ遅れてEPSがジリジリ下がるバッドニュースがでてきます。株価も下がります。
たくさん買ったバリュー投資家が、損に耐えかねて『新たな売り手』に大変身します。
この繰り返しで、下落は一気に長期化します。
下落が長期化すると、短期トレーダーやモメンタムトレーダーは見向きもしません。こうなると、流動性が低くなって、より魅力が下がります。
そして最終的に、本当の業績悪化が発生し、EPSが崩壊し、PERが急上昇します。
「割安を理由に買った投資家」も全員降伏して売りに出るのです。
これが、数年にわたる下落トレンドの正体です。
「なぜ2年も3年も下がり続けるのだろう?最初の下落で売っておけばよかったのに」と、チャートを見ていて不思議に思う株があります。
実は、その下落チャートの後半部分は、ド天井で買ったホルダーが売って作った下落チャートではありません。
下落の途中でPERに吸い寄せられたバリュー投資家が、再度損切りしているから、下落が異様に長いのです。
ダメ押しの有名な事例

かつての超優良グロース株『サンマイクロシステムズ』を事例に、PERだけを理由に買うことが、いかに危険かを見てみます。
1999年、成長を期待されて、利益成長する前に、株が買われます。
PER50と、べらぼうに高い状態ですが、そのあと株価は760%上昇します。
2001年、将来性を懸念されて、利益が事実下がる前に、株が売られます。
PER25と、妥当になりましたが、そのあと株価は90%下落します。
PERが高くても買った人が、大儲けした。
PERが下がったからと買い向かった人が、大損した。
サンマイクロシステムズの事例は、グロース株とPERの関係性を理解するうえで、最高のケーススタディです。
この図を、穴があくまで見ましょう。
教訓
ここで、学ぶべき教訓は1つです。
『グロース株が下落して、PERが割安になったからと、すぐに買い向かうのは危険』
ではどうすればいいか?
『下落後、出来高が蓄積されて、ホルダーの入れ替わりを待ってから買う』
このメカニズムを咀嚼すれば、『カップウィズハンドル』の考え方にも納得がいくのではないでしょうか?
投資を始めたばかりのころ、初心者は、こう考えます。
「カップウィズハンドルの底で買ったほうが、いちばん安く買えるじゃないか」
「なぜみんな、上昇を確認してから買うのだろう」
その理由は、「底だと思っても、さらなる『下落』が潜んでいるから」です。
『平べったいソーサーボトム』とは、ホルダーの入れ替わりを意味しています。この終わりを確認した後、買う必要があるのです。
だから『カップウィズハンドル』で、「カップの底で買え」という指導者は、誰一人として、いないのです。