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#731_共犯アむス_短線小説

    茉莉花た぀りかの花が開いた。絢銙は癜い花匁を摘み取り、店先の街路暹から挏れる朝陜を軜く遮るず、柘抎の葉が颚に揺れお陜が薄茶色の髪を撫でた。

    「あの、あいおたすか  」頭の䞊から声がする。
    声をかけおきたのは背の高い少幎だった。癜いTシャツずペレたデニム、履きこなしたカヌキ色のサンダル姿。どこか倧人びた、芋かけない少幎だった。

    「7時からなんです  どうぞ」絢銙が栌子の扉を匕くず、䞭から煎りたおのコヌヒヌの銙りが流れおきた。真鍮のベルが鳎り、少幎が店ぞ入るず扉が閉たった。モルタルの叀い倖壁の雚暋から氎が苔の䞊をきらきらず䌝い、鋪道ぞ小さな川を぀くっおいた。

    「キヌマカレヌ、ありたすか」少幎はカりンタヌ越しに話しかけ、メニュヌから顔を䞊げた。圌は倜のメニュヌ衚を手にしおいた。絢銙はそれを裏返しお、「トヌストず、コヌヒヌず、アむスなら」ず、モヌニングの案内をした。

    「あ  じゃ、ぜんぶください  」
    少幎はそう蚀っお、気恥ずかしそうに俯いた。
    「どっちを先にしたす」絢銙は手早くコヌヒヌを淹れ、肩越しに振り返り、目元を緩たせる。
    「アむスを、食埌に」少幎も぀られお埮笑んだ。


    「ええごめんなさい  」絢銙は氎を泚いでいたグラスを萜ずしかけた。圌は瀟䌚人5幎目で、今日は遅めの倏䌑みだずいう。

    「よく蚀われるんです」ず蚀っお、アボカドトヌストをコヌヒヌで流し蟌むず、窓の倖からツクツクボりシの声が遅れお聞こえおきた。絢銙は目の前の青幎の朔さに、思わず口元が緩んだ。

    店内を芋枡すず、叀びた癜いペンキの壁ず、窓蟺の癜いスチヌムラゞ゚ヌタヌが薄らず埃をかぶっおいた。


    じりじりず照り぀ける陜ざしが、叀びた鉄の栌子からやや傟いお射し蟌み、カりンタヌのハむチェアを照らす。䞀人の客が時蚈に目を遣るず、思わず目を现めた。

    その瞬間、扉のベルが鳎り、女の子が入っおきた。ふくれっ面のポニヌテヌル、顔を隠すような倧きめのマスク。「ありがず  」絢銙が蚀いかけるず、少女はカりンタヌの客に小さく䌚釈をした。

    近くのオフィスぞコヌヒヌを配り終えた菜月は、ガツンず、ポヌチを抌し぀けるようにワヌクトップに眮いた。角が擊り切れ、叀いタバコずスパむスの匂いが染み぀いたそれず、絢銙は目が合った。

    「乱暎にしないの」絢銙が匷く蚀う。菜月が䞍貞腐れお絢銙を芋るず、スカヌトが短い、ず぀け加えた。菜月はすぐに扉ぞ螵を返す。
    扉を思い切り匕くず真鍮のベルが激しく鳎り、奥の垭の客がパ゜コンから目線を䞊げた。

    「ちょっず厳しすぎない」絢銙の前にいる垞連の客が蚀う。絢銙は倧きくため息を぀いおこめかみを抌さえた。
    「䜑叞のこず、ただ怒っおる」男は再びコヌヒヌを口にしお、短く笑う。

    絢銙はカりンタヌを固く絞った垃巟で調理台ワヌクトップを拭き続けた。拭いおも拭いおも、倫の䜑叞が残しおいった、焊げ぀くような虚しさは消えない。去っおいく菜月の背䞭を芋送り、菜月が䜕も蚀わずに沈黙を守る理由を、絢銙は痛いほど分かっおいた。

    「ミルクシャヌベットをひず぀、それずお䌚蚈」男は深みのある声でひず蚀぀ぶやいた。絢銙は聞き間違えをしたのかず、間を眮く。男はそれを察しお「菜月ちゃんに」ず蚀っお䌚蚈をしお垭を立った。

    男が扉を匕くのず同時に、入れ替わりで別の客が入っお来た。「いらっしゃいた  」絢銙が蚀いかけ、先ほどはどうも、ず䌚釈した。


    「キヌマカレヌ、気になっちゃいたした」青幎はカりンタヌに぀くなり、どうしおも心惹かれおしたったず、照れ笑いを浮かべる。

    絢銙は叀びた倧孊ノヌトを広げ、油をひいたフラむパンに、数皮類のスパむスを萜ずした。小さな皮が匟ける音ずずもに、カレヌの銙りが立ち䞊る。䜕床も開かれお波打぀ペヌゞには、敎った男の字でスパむスの配合が现かく蚘されおいる。あの倜、芋知らぬ女ず䞀緒にビルの火灜に巻き蟌たれおあっけなく逝っおしたった男の、遺品のようなノヌト  。

    絢銙は指先をかすかに震わせた。この銙りを嗅ぐたび、裏切られた悔しさず、それでもこの味でしか店を守れない自分の惚めさが、胞の奥で焊げ぀く。

    「はい、特補キヌマカレヌず、コヌルドブリュヌです」
    絢銙はシェニヌルのマットに、癜い陶噚皿ず、スヌプのマグカップを眮いた。
    「アむスはあずでお持ちしたすね」ず絢銙は぀け加えた。
    カレヌには店の倖の茉莉花の花びらが添えられおいた


    「そういえば  」青幎がそっず口を開く。「その倧きい葉っぱ、なんずいうんですか」青幎はカりンタヌ越しに絢銙の背䞭に蚊く。絢銙はガラスの容噚を取り出すず、青幎はそれです、ず目で頷いた。

    「ベむリヌフです」絢銙は䞀枚を取り出しお、「この葉っぱみたいに、たっすぐな人が䜜ったレシピなんですけどね  」ず蚀っお、クルクルず回しおみせた。

    「昌間の女の子  」絢銙の手で螊るリヌフスパむスを芋お、青幎は菜月の埌ろ姿ずその葉っぱが䌌おいるず蚀った。絢銙は「そのカレヌのレシピは、圌女の父芪のものなんです」ず蚀っおワヌクトップのノヌトをチラリずみた。青幎は「嚘さんは、お父さん䌌かもしれたせんね」ず蚀っお、絢銙はふわりず苊笑いをした。

    絢銙は冷凍宀から凍ったグラスを取り出し、ミルクシャヌベットをよそっおカりンタヌに差し出した。青幎が口にするず、甘いミルク仕立おのシャヌベットに、ほんのりずレモンの銙りがする。

    「そのはちみ぀も、圌のこだわりです」カりンタヌの向こうでいたずらっぜく笑みを浮かべる絢銙に促され、青幎は小さなミルクピッチャヌを傟けるず、冷たい氷の雪原の䞊を、甘い黄金色の蜜がすべり萜ちお行った──


    青幎が垰り、絢銙が片づけを始めるず、扉のベルが鳎った。菜月だった。無蚀でカりンタヌの奥から箒を取り出しお、テキパキず床を掃き始める。絢銙は片づけを再開しお、店の䞭はほんの少しだけ沈黙が続いた。

    菜月が箒を戻しにカりンタヌぞ入るず、絢銙はミルクシャヌベットを菜月に差し出した。
    「お客さんからよ」菜月はグラスず絢銙を亀互に芋぀めお、枋々手を䌞ばしお、シャヌベットを口に含むず、ペヌグルトの爜やかな酞味ずレモンの銙りに、蜂蜜のずろりずした甘味がずけおいく──

    「あたしもこのアむスで萜ちたんだなヌ」絢銙がグラスにスプヌンを圓おるず、カチリずガラスが鳎る。菜月は、グラスの瞁の溶けかけた癜い液䜓ず黄金色の蜜をたぜお掬いずり、口に含んで蚀った。

    「お母さんだけにしずけばよかったのにね」菜月が皮肉たっぷりに蚀う。

    甘くお、酞っぱくお、どこたでも冷たい。䜑叞が残した味を無蚀で口に含んだ瞬間、二人だけの秘密が静かに喉の奥ぞ萜ちおいった──

    ──これで、私たちも共犯ね。

    了, 2,700 字
    執筆: 2026/8/20〜8/25
    修正: 8/25、8/27、9/27、10/29

    画像
    Image CreatorMAI-Image-2eです


    店の奥から入口を芋るロングショット。圓たらずずも遠からず、ずいうこずで🫣


    あずがき

    先月から、自分の䜜品の文䜓や芖点に぀いお向き合っおいたした。今回の䜜品は、わかりやすく、蚀葉ではっきりず曞きたいずいう気持ちがあり぀぀、たたい぀もの語らない感じで曞き䞊げおしたっお  自分の䜜颚に苊笑いしおいたす。自身は即物的な描写を受け入れやすいですが、曞き手になるず真逆になっおしたいたす。小説ずしおはどちらでも正解だずは思いたすが、本にするずいうこずを考えるず、ただただ磚く䜙地がありそうです。

    ここたでお読みいただき、ありがずうございたした。
    匕き続き、䜜者ずもどもよろしくお願いいたしたす😊


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    い぀もありがずうございたす🙏

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