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Photo byannon7567

【企画SS#風まかせ文芸部】再会

    (800字)

     再会の合言葉を決めよう、と彼は言った。僕が君を、君が僕を、迎えにきたことがわかるように。
     迎えにくる?再会?あまりにも遠い、夢のような話だ。とても信じられない。
     そう言って嗤うと、彼は静かに微笑んだ。手のひらが頬を包み、親指が唇をそっと撫でた。
     信じなくていい。これは僕の願いだから。耳朶を吐息とともにそんな言葉がくすぐり、思わず目を閉じる。それを拒絶と受け取ったのか、彼の手は頬を離れた。
     手のひらのぬくもりが去った頬に、風はさっきよりよほど冷たい。そのことが、不意にどうしようもなく癪にさわった。
     なぜ信じてと言わない。なぜ願いを自分のものと言う。尊重?意志?そんなもの、あなたのための口実でしかない。
     残酷な言葉を正面から受け止めて、それでも彼は微笑んでいた。静かに、耐えるように、祈るように。
     合言葉を決めよう。再会を願って。…願う僕に免じて。
     その言葉は風に吹き散らされていく。頬に微かに残っていた手のひらの感触とともに。耳朶に僅かに残っていた吐息の湿りとともに。
     応えのない願いを抱いて、彼は静かに目を閉じる。唇に微笑を浮かべたまま。そこに宿る熱に、ふれることを許さないまま。
     風が強まる。もう目を開けていられない。もうその声を拾えない。
     …合言葉のないふたりは、もうお互いを見つけることはできない。

     なぜ受け入れなかったのかと、あなたは問うだろうか。彼が憐れだと、何もかもをひとりで背負い、たった一言、しるしとしての言葉だけを求めた彼に、なぜそれさえも許さなかったのかと。あなたは問うだろうか?
     再会を望まなかったから。
     再会を信じなかったから。
     再会を願うことを、許せなかったから。
     なんと答えれば満足だろう。なぜと問うあなたは、問うことでこの選択を責める。再会が果たされないのは、そのたった一言を彼に許さなかったからだと。
     だから。
     …この言葉もまた、ただ風に吹き散らされていく。

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    よろしくお願いいたします。
    #風まかせ文芸
    #再会

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    創作物を発表してみたくてはじめました。現在は主に短歌、短編(掌編)を投稿しています。詩や俳句も…と思いつつ、そちらはまだまだ。いずれは仕事の知識を創作に取り入れて、楽しく役立つコンテンツを作りたい(野望)。好きなものを、好きなように書いていきます。よろしければお付き合いください。

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