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「完璧なリーダーになんて、ならなくていい」。自信がなかった私が100人の職人を束ねる“女性初の工房長”になるまで|土屋鞄製造所

    ランドセル製造の最前線、100人以上の職人が働くランドセル工房を束ねるのは、入社8年目の下田です。

    「完璧なリーダーになんて、ならなくていい」

    かつて自分の弱さを嘆いていたひとりの若手職人は、今、ランドセル製造の主拠点で100人以上の職人を束ねる「工房長」になりました。

    なぜ土屋鞄で“女性初”の工房長に選ばれたのか。そこには自分の「弱さ」に向き合い「強さ」に転換する、新しいリーダーシップの形がありました。

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    下田 歩(しもだ・あゆみ) / 土屋鞄製造所 SCM本部 製造部 ランドセル工房 西新井工房長
    2019年4月、新卒で入社。西新井工房でランドセルを製造する職人としてキャリアを積む。パーツ班の班長、ランドセル全体の組立リーダーを経て、2026年にランドセル工房の工房長に就任。

    職人の世界での空回り

    美大卒の私ですが、元々は決して器用なタイプではありませんでした。たまたま自宅にあった土屋鞄のカタログを見て、そのつくりの良さに惹かれたのが入社のきっかけです。

    念願叶ってランドセル製造のパーツ班に配属されたものの、入社半年というタイミングで、急遽、前任者から現場のバトンを引き継ぐ形となり、いきなり「班長」に就任することになりました。

    現場には年長者のベテラン職人たち。その中で、経験も技術も浅い自分が、きちんとものづくりを先導できるのか……。

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    (2019年入社当時の下田)

    プレッシャーと己の不甲斐なさにおののき、トイレの個室に駆け込んでは思いっきり泣いてしまう日もありました。

    「自分にできることは少ない」と、勝手に思い込んでいたのです。

    しかし、泣いている自分をどこかで冷静に見つめる「もう一人の自分」もいました。

    「弱い自分を変えたい」

    心の中で、メラメラと小さな炎が燃え出しはじめました。

    「助けて」と言えることこそが、大きな力に変わる

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    ランドセルは4月の入学式までには必ずお届けする製品です。そんな中ランドセルの製造本数はありがたいことに増加しており、当時の現場は対応しきれずにかなり疲弊していまいした。

    毎年お客さまへ、お約束どおりお届けできていましたが、「製造は最後の砦。スケジュールどおりにつくれないとお客さまに届けられない」というプレッシャーが、職人たちにのしかかっていました。

    「根性で頑張るだけでは限界が来る。これまでの製造フローを変えなければ」

    私はランドセル組立リーダーに昇格したタイミングで、「テスト運用中の『新生産方式』を本格導入するなら今しかありません!」と上長に直談判し、その場でGOサインをもらいました。

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    しかし、組織全体を巻き込む変革は一筋縄ではいきません。過去のトップダウン施策が現場に定着せず、自然消滅していくのを何度も見てきました。

    そんな折、とある少年漫画の「自分は助けてもらわないと生きていけない」という主人公の叫びに衝撃を受けました。

    「できないと認めて、仲間に助けを求めることこそが、大きな力になる」

     この気づきが私の転機となり、トップダウンで指示するのではなく「みんなでつくり上げていく」アプローチを選ぶことにしたのです。

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    案の定、最初は否定的な意見も少なくありませんでした。長く続けてきたやり方を急に変えるのですから当然です。私は「反対意見や不満」は悪いことではないと思っています。

    ですが、ランドセル製造のような「班」による分業制では、同じ立場の人たちだけで話していても班自体が「壁」になり、解決しない課題があるとわかってきました。

    そこで、ランドセル製造部全体を巻き込んだ「グループワーク」を実施することにしました。

    根気よくグループワークを続けているうちに、ランドセル製造部内でも対話することで不満や不安を言語化する習慣が根付きはじめ、協力してくれる仲間も増えていきました。

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    立場が違う人が対話することで、課題解決の転換点になったりもします。

    他部署と連携したワークショップも行いました。自社と他社のランドセルを比較したり、価値観を共有したり。

    結果的に、自分の仕事を自分の言葉で説明し、部署同士で認め合うことで、職人たちが「自分たちの仕事の価値」を再認識するきっかけになれたと思っています。

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    次第に「今月はどんなテーマなの?」と楽しみに聞いてくれるようになり、「うちの部署もグループワークに参加したい」と社内で口コミが広がるほど、活気ある雰囲気に生まれ変わっていきました。

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    実際に関わった人の発言や行動、表情が変化していく様子を目の当たりにした嬉しさは、今でも忘れられません。

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    挑戦しない、という選択肢はない

    入社以来、「楽しい」も「つらい」も、班のみんなとリアルタイムで共有し、体当たりで信頼関係を築いてきました。

    だからこそ、班に属さず全体を統括する「工房長」という管理職に抜擢されたときは、今までのやり方が通用しない不安もありました。

    しかし、工房長にならなければ実現できないことも確実にあります。「挑戦しない」という選択肢は、私の中にはありませんでした。

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    これまでは目の前の課題に全力でぶつかってきましたが、これからは長期的な目線が必要です。

    品質や納期を守る強い組織づくりはもちろん、100人の職人一人ひとりが働きがいを感じられる「キャリアパスの設計」や「教育」にも力を入れていきたいですね。

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    (下田の挑戦に共感し、社外から取材を受けることも。この日は関西電力株式会社 広報室のみなさんの取材を受ける下田)

    当時泣いていた「社会人1年目のわたしへ」

    等身大の自分のままでいい。

    無理して背伸びすることは、あなたには合ってない。

    できないなら、できないなりに、今の自分を認めて自分なりに頑張ればいいんです。

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    「自分には技術もリーダーシップもない」。

    そうやって自分の不器用さを呪い、ノートにいろいろな感情を書き殴っていたけれど、大丈夫です。その悔し涙は、すべてが今のあなたをつくる大切な土台になっています。

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    (入社以来、下田が書き留めているノート)

    「猪突猛進」って言葉は当時から好きだったよね。家族からもよく「まっすぐしか進めない」って言われていた通り、まっすぐ進むとぶつかることもある。

    でも、何回か突き進むうちに壁を突破できたのは、これから出会う会社の仲間や、自分を信じる心があるからこそです。

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    社会人1年目、わたしは不甲斐なくて、よくトイレの個室で泣いていましたが、「一人じゃできません、助けてください」と素直に言える弱さと、泥臭く対話を続ける諦めの悪さがあったからこそ、今、100人もの素晴らしい職人たちがあなたを支え、同じ方向を向いて歩んでくれています。

    流した悔し涙の分だけ、誰かの痛みがわかる、今までの製造現場にいなかった存在になれているよ。

    8年後のあなたも、ここで踏ん張って頑張っています。

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    ▼#社会人1年目のわたしへに参加しています



    文・主な写真:小笹玲子
    コーポレートブランド推進室所属。2021年、土屋鞄製造所 入社。
    土屋鞄の社内報『革ノオト』編集長。これまで社内報で手がけた記事は600記事以上。

    写真:安重 百華
    2023年 土屋鞄製造所入社。軽井澤工房店での勤務を経て、コーポレートブランド推進室へ。
    採用育成課も兼務し、主に採用広報・新卒採用を担当。


     
    土屋鞄製造所(鞄やランドセル) | ドリームフィールズ(ジュエリー) | 一創(ガラス製品)のグループ | 株式会社ハリズリーの公式noteです。「つかい手もつくり手も豊かな社会」をめざし、「つなぎ手」として記事を届けます。#ハリノオト https://harizury.com

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