
水彩詩集!拝啓文芸部/光の裏側に潜む影 ~フェルメールの遺言に残されたメモ
深夜のアトリエ、燭台の炎が微かに揺れていた。
ヨハネス・フェルメールは、午前中の陽光で描いた、青いターバンの少女の瞳に、白のハイライトを微細に点し、静かに筆を置いた。
彼の傍らには、一枚の羊皮紙が残されていた。
『光は色から生まれるのではない。絵の具の層の合間に潜む、無数の時間の影から漏れ出すのだ。私の描く部屋は、現実のデルフトではない。誰かが過去に置き忘れ、誰かが未来で思い出す、時の交差路だ。
少女の視線は私を見ていない。四百年後の闇のなかで、この絵を見つめるあなたを探している。』
彼の死後遺品整理の際、義母のマリアはこのメモを見つけたが、理解出来ずに破り捨てようとした。
しかし、その紙片は手から滑り落ち、水滴のように床の隙間へと吸い込まれて消えたと言う。
今、美術館のガラス越しに少女と目が合った時、耳元で小さくささやきが聞こえる。
「見つけてくれて、ありがとう。私は光の裏側で、この日が来るのをずっと待っていました」(407字)

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