
鉛筆の持ち方が直らない…手先の発達には「順番」がある|発達支援の専門家が分かりやすく解説
「鉛筆の持ち方、何回直しても戻っちゃう…」
「ハサミがなかなか上手にならない…」
毎日そばで見ているからこそ、気になりますよね。
何度も声をかけているのに変わらないと、
どうしたらいいのか分からなくなる。
その気持ち、すごくわかります。
でも、それは"悪いクセ"ではないかもしれない…
手先の発達には、決まった「順番」があるんです。
この記事で分かること
「握り方」が育つ順番(月齢の目安つき)
鉛筆の「持ち方」が育つ順番
ハサミやボタンに欠かせない「両手の協力」
体の真ん中を越える力(正中線)
発達支援事業所で実際にやっている支援と、おうちでできる遊び
夫婦で療育3施設を運営している、
保育士・児発管・鍼灸師のヒデアキです。
threadsで2025年11月から発達支援の発信をして
現在は12000人以上の方にフォローして頂けています。

そんな僕が、イメージしやすい図解も使いながら
現場でやっていることを、できるだけ分かりやすくまとめますね。

赤ちゃんの「握り方」は月齢でこう変わる(小指側→親指側→指先)
同じ「握る」でも、月齢によって中身が全然違っていて。
握り方そのものが、少しずつ育っていくんですよね。
月齢ごとの目安はこんな流れ。
3〜5ヶ月:小指側でガシッと握る。親指はまだ使えていない
5〜6ヶ月:手のひら全体で握り込む
6〜9ヶ月:親指側を使い始める。持ち替えもできるように
10〜12ヶ月:親指と人差し指でつまむ
まとめると、握り方は「小指側 → 親指側 → 指先へ」と育っていきます。
ひとつ大切なことがあって。
発達がゆっくりなお子さんは、
「実際の年齢」ではなく「今どの段階か」で見るのが大切
月齢と比べるより、「今ここにいるんだな」と見てあげてください。

指でつまむ「ピンサーグラスプ」は大きな節目
親指と人差し指で「ちょこん」とつまめた日は、ちょっとした大事件
この動きは「ピンサーグラスプ」と呼ばれていて
親指と人差し指でつまむ持ち方のこと。
床に落ちたボーロをちょこんとつまむ姿は、
実はとても大きな節目なんです。
なぜかというと、これができるには、
次の力が全部そろっている必要があるからです。
親指が、ほかの指と向き合う
人差し指が、1本だけで動く
手首が安定している
目で見た場所に、手を運べる
事業所では、「つまめるかどうか」だけを見ているわけではなくて。
指の腹でつまんでいるのか、指先なのか。
ほかの指はどうなっているか。
手首はグラグラしていないか。
ここを見ると、「次に育てるところ」がわかります。
なお、小さい物で遊ぶときは、
必ず大人がそばで見守ってくださいね。
※4cm以下は誤飲の可能性があります

指先が不器用なら、まず「体幹や肩」を見てみる
手先の発達には、大事な原則が2つあります。
1つ目は「中心から先へ」
体幹(おなかや背中など、体の真ん中の部分)→ 肩 → 肘 → 手首 → 指先 の順番で育っていきます。
2つ目は「大きな動きから細かい動きへ」
手全体の動きから、指1本ずつの動きへと進みます。
つまり、指先が不器用なお子さんでも、
原因が「体幹や肩」にあることが多いんです。
こんな様子はありませんか?
座る姿勢がすぐ崩れる
机に突っ伏して作業する
肘を浮かせて鉛筆を持つ
事業所では、体から育てる遊びをしているんですが
四つ這いでトンネルくぐり
手押し車
鉄棒やうんていにぶら下がる
大きな紙になぐり描き
「指先を育てたいなら、まず体から」。これが療育の基本

体の土台と発達の順番については、こちらの記事でも詳しく書いています。
発達の順番・見えない土台・DCD
鉛筆の持ち方にも順番がある(グー握りから三指握りへ)
鉛筆やクレヨンの持ち方にも、育っていく順番があって。
1〜2歳ごろ:手全体でグー握り。腕全体でぐるぐる描く
2〜3歳ごろ:指が少しずつ分かれてくる
3歳半〜6歳ごろ:親指・人差し指・中指の3本で持つ「三指握り」が完成していく
なので、「変な持ち方」は、まだその段階にいるだけなんです。
土台ができる前に形だけ直すと、
指に余計な力が入ったり、
描くこと自体が嫌になったりすることもある
事業所では、こんな工夫をしています。
短く折ったクレヨンを使う:自然と指先で持つようになる
壁やイーゼルに貼った紙に描く:手首の角度と肩が同時に育つ
焦らなくて大丈夫

ハサミが苦手なのは「紙を持つ手」かもしれない
ハサミもボタンも、実は「両手の仕事」なんです。
ハサミは、片手で紙を押さえて、もう片方の手で切る。
ボタンは、片手で布を持って、もう片方の手でボタンを通す。
どちらも左右の手が別々の役割をしているんですよね。
両手の協力にも順番があって。
両手で同じ動き(拍手など)
左右交互の動き(はいはいなど)
左右で違う役割
だから、「ハサミが苦手」なときは、実は紙を持つ手がうまく使えていないということがよくあるんです。
事業所でも、うまくきれないお子さんの左肘を支えて
紙の操作を手伝ってあげると綺麗な曲線が切れた時
その子の目は輝いて「先生、もう一回切りたい!」
と言ってくれたんですよね
切る意識じゃなく、紙を動かす意識を持つことで
楽しさが出て、反復につながったいい事例でした
事業所でやっている支援はこちら
粘土をこねる・ちぎる
ふたの開け閉め
ひも通し
紙ちぎり
パンにジャムを塗るまね
ハサミを持つ手だけでなく、「支える手」にも注目してみてください。

体の真ん中を越える力「正中線」が、字やハサミの土台に
体の真ん中を通る縦のラインを
「正中線(せいちゅうせん)」と言うのですが
右手で左側の物を取る。
この当たり前の動きが、実はすごく大事なんです。
手が体の真ん中を越えていく力
こんな様子はありませんか?
左の物は左手、右の物は右手で取る
お絵描きの途中で鉛筆を持ち替える
横線を引くときに体ごと動く
この力が育つと、両手の協力、利き手が決まること(4〜6歳ごろ)、
字を書くこと、ハサミを使うこと、ボタンをとめることにつながっていきます。
ぜんぶの土台になるんです。
事業所では、こんな遊びをしていますよ。
反対側にあるおもちゃを取って、箱に入れる
大きな紙に横向きの「8の字」や虹を描く
体をひねってボールを渡す
手遊び歌で、反対側の肩や膝をタッチ
右手が左へ、左手が右へ。
その当たり前の動きの上に、
たくさんの「できる」がのっています。

おうちでできる手先遊びと、専門家に相談する目安
手先の力は、「練習」より「遊びと生活」で伸びます。
おうちでは、こんなことから始めてみてください。
シール貼り
洗濯ばさみ
粘土
ちぎり絵
砂遊び
洗濯物たたみ
テーブル拭き
特別な道具はいらなくて。「楽しい!」が一番の近道

一方で、次のような様子があるときは、専門家に相談してみてください。
手をずっと強く握ったまま開かない
1歳前後で、片手しか使わない
1歳半を過ぎても、つまむ動きがない
触られるのを強く嫌がって、手を使う遊びを避ける
相談先は、理学療法士さん作業療法士さんや小児科
または通っている事業所の支援者さん。
たくさんいるので気軽に聞いてみてくださいね。
『特性』と『障害』の違いが気になる方は、こちらも読んでみてください。
「なぜその遊びをするのか」を説明できる支援を
最後に、支援者のひとりとして伝えたいことがあります。
発達支援の現場でも、
「手先の発達の順番」や「なぜその遊びをするのか」の説明は、
支援者によってかなり差があります。
たとえば「ハサミの練習をしています」だけでなく、
「両手の協力を育てるために、ひも通しをしています」
と説明できる支援者が増えたら、
保護者さんの安心にもつながりますよね。
遊びの一つひとつに理由がある。
それを伝えられる支援者を、
僕は増やしていきたいと思っています。

終わりに…
握り方も持ち方も、決まった順番で育っていく
指先の器用さは、体幹・肩・両手の協力・真ん中を越える力といった土台の上にある
「できる・できない」ではなく「今どの段階か」を見て、次につながる遊びを選ぶ
「なんでうちの子はできないんだろう」 そう思ってしまう気持ち、すごくわかります。
でも、手先の発達には必ず順番があって、
お子さんは今、その途中を歩いているだけなんですよね。
大切なのは、「できる・できない」で見ないこと。
「今どの段階か」を知ること。そして、次の一歩につながる遊びを選ぶこと。
「焦らなくて大丈夫」は、なぐさめではなくて
発達の順番を知っているから言える言葉
そんな内容をこれからも伝えていきますね!
2026年10月16日
発達支援の翻訳者 ヒデアキ

次の一歩
この記事を読んで、「うちの子は今どの段階なんだろう?」
と気になった方もいるかもしれません。
発達の順番を、検査の結果から
どう読み取るかをまとめたのがこちらのnote
▶ 新版K式発達検査のすべて
運動や手先の発達、就学相談のことも含めて、
結果の見方をやさしく解説しています。気になったときに、
手に取ってもらえたらうれしいです。
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