
【ショートショート】片想いテーマパーク 氷柱の園 [毎週ショートショートnote]
片想いテーマパーク 氷柱の園
魔王は、ある一人の美しい娘に恋をした。その娘に、魔王は、様々な贈り物をした。高価な宝石、美しい織物、珍しい花々。しかし、娘の心を掴むことはできなかった。
ある日、娘が身も世もあらず嘆いていた。魔王が理由を尋ねると、娘の最愛の兄が、病でもう幾許ももたないのだという。そこで、魔王は、娘への最上の贈り物を思いついた。
魔王は娘を攫い、眠らせた。そうして娘が眠りから醒めると、魔王は、娘のために造り上げた庭園に、娘を連れて行った。そこには、娘の最愛の兄の姿があった。透明な硝子のような氷柱に、閉ざされて。その周囲に、幾本も、同じような氷柱が立てられていた。その中には、娘の両親、祖父母、幼い弟妹、仲のよい友人……娘の、大切な人々。
「これで、そなたの兄は、永劫に失われることはない。他の者たちも」
魔王の言葉が耳朶を打つや、娘の口から悲鳴が迸った。娘の心臓が、音立てて張り裂けた。そのまま、娘は、事切れた。
そうして命を失った娘を、魔王は、兄たちと同じように、氷柱に封じ込めた。
はじめから、こうすればよかったのだ。
これで、娘は永久に、魔王のものだった。この庭園を飾る、最高のオブジェだ。魔王の整った口唇が、笑みに歪んだ。
了 502字
今回、こちらのお題に参加させていただきました。
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本作は、拙作長編ファンタジー小説シリーズ〈隻翼の竜の書〉の世界の昔話です。
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