メインコンテンツへスキップ
見出し画像

なぜ対人支援の世界に大谷翔平は生まれないのか?─医療・介護・福祉業界にスーパースターがいない不思議をひも解く─

    「野球のスーパースターと言えば?」
    9割の人がこう答えるでしょう。
    「大谷翔平選手」と。
     
    では質問を変えます。
    「看護師界の大谷翔平は?」
    「介護業界の大谷翔平は?」
     
    ……しばらく沈黙が流れます。

    その後に思うことは
    「何でいないの?・・・・」
     
    日本プロ野球の支配下選手と育成選手を合わせたNPB全体のプロ野球選手数は約900名以上と推定されます。
     
    それに対して、
    日本の看護師数は約130万人。
    介護福祉士は約200万人。
    ケアマネジャーは約70万人。
    社会福祉士、公認心理師、精神保健福祉士も含めれば、対人支援職の人口はプロ野球選手の数とは比べものにならないほどいます。
     
    三刀流・四刀流のスキルを持つ対人支援職も珍しくありません。
    なのに、なぜ「対人支援のスーパースター」は生まれないのか?
    少し本気で考えてみたくなりました。

    対人支援職にスーパースターが生まれない3つの理由

    1. スーパースターは「資格」や「スキル」だけでは生まれない


    大谷翔平選手は「投打の二刀流」で世界を驚かせました。
    対人支援の世界では

    • 看護師×ケアマネ×社会福祉士

    • 公認心理師×社会福祉士×精神保健福祉士×介護福祉士    

    という「四刀流」すら珍しくなく、
    そんなに驚かれることもない業界です。
     
    現場で本当に求められるのは、
    「実行力」「共感力」「調整力」「チーム力」
    といった目に見えない感性の総合力です。
     
    どれだけ資格があっても
    「この人に相談したい」
    「この人がいると現場が安心する」
    「また会いたいわ」
    と思われる人間力が誤魔化せないのが、
    現場の対人支援職なのです。
     
     

    2. 業界の壁:何を評価するかがはっきりしていない


    プロ野球選手は成績が数字で可視化されます。

    • 打率

    • ホームラン数

    • 勝利数

    ところが、対人支援職の「成果」は

    • 利用者や家族の安心

    • 地域の穏やかな生活

    • チームの信頼関係

    といった「見えない価値」です。
    できていて、整っていて、安心安全であることが
    「当たり前」として流れていくだけです。
    管理者によって評価が変わることも当たり前です。
    当然、成績表もランキングもありません。

    「誰もが認めるスーパースター」を生む 
    評価の仕組み自体が存在しないのです。

    仮に訪問支援の件数がダントツに多くても、訪問の質的な内容を疑問視する声すら現場支援者からあがるかもしれません。それが、対人支援の業界です。

    数、実績が大切ではないとは言わないまでも、人の人生にかかわる上で、質的な「見えない支援」がむしろ重視される世界です。
     

    3. 謙虚さゆえの“目立たなさ”


    対人支援のプロほど
    「自分がスーパースターになりたい」とは考えません。

    • 主役はあくまで利用者・患者・家族

    • 自分は黒子。縁の下の力持ち

    そのため、三刀流・四刀流でも前に出ようとしない。
    結果、「知る人ぞ知る存在」で終わってしまうのです。
    この構図こそが
    対人支援職=無名のスーパーヒーロー
    と言われる所以です。

    スターが生まれない理由

    画像

    つまり
    対人支援職は「誰もがスーパースターの資質を持っている職業」です。
    でも使命感から
    「誰かの役に立ちたい」が最優先。
    「目立ちたい」は後回し。
    異論なしのスーパースター像が生まれにくいのは当然とも言えます。
     
    現場の支援者は
    自分ではなく、利用者や患者が輝く姿こそゴール
    と本気で信じている。
    これがこの業界の尊さであり、暗黙の了解でもあります。
     
    では、もし対人支援の業界に大谷翔平を生むとしたら?
     
    わたしはこんなアイデアを持っています。
    対人支援のオリンピックがあったら、一般の方にも伝わりやすいと感じます。
    もちろん100m走やベンチプレスではありません。
    フィギュアスケートや空手の形(かた)の演技点のように

    • 利用者のQOL向上

    • 家族への寄り添い

    • チーム連携の巧みさ

    • 危機対応の的確さ

    などの質的評価を競う場。
     
    そこで金メダリストが生まれたら
    「対人支援の仕事」がもっと注目され、
    若い人たちの憧れの職業になるかもしれません。

    みなさんなら、どんなアイデアを考えますか?

    スーパースターが生きづらさを抱えた時、生活に支障が出た時、わたしたち支援職は陰で生活を支える使命があります。
    だから、スーパースターに勇気や元気を与えることができる「スターのスターになれる」のは、対人支援職らしいスターのなり方かもしれません。

    おわりに


    対人支援の世界に「表舞台のスター」は少ないかもしれません。
    でも本当は、
    すべての現場に“影のスーパースター”は数えきれないほどいる
    とわたしは信じています。
     
    もしかしたら、あなたの隣の同僚が影のスーパースターなのかもしれません。
    いや、あなた自身が「対人支援の大谷翔平選手」なのかもしれまん。
    そんなユーモアを持ちつつ、目の前の利用者、患者さまを真っ直ぐ見つめましょう。
     
    わたしたちの支援対象者をスーパースターにするために!
     
    よろしければ、「スキ!」や「フォロー」をいただけたら嬉しいです。


     
     
    認知症疾患医療センター副センター長 職業:鶴岡八幡宮(鎌倉市)→精神科病院→精神科クリニック(対人支援職) 資格:精神保健福祉士・公認心理師・社会福祉士