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[徒然考]家を持たないノマドと家から出ないヒッピー


    家を持たないノマドの旅と、家を出ないヒッピーの旅

    たまたまYouTubeで映画『ノマドランド』のダイジェスト版を観た。さすが、作品賞・監督賞・主演女優賞のオスカーを獲り、ヴェネチアでは金獅子賞に輝いているだけのことはあり、見事な秀作であった。

    映画の主人公の女性は、無邪気な子どもに向かって「私はホームレスではなくハウスレスだ」と説明していた。「ノマド」とは本来「遊牧民」のことを言うけれど、あの銀幕が描いていたのは、吹き抜ける風のなかを生きる季節労働者たちの、切ない悲哀と共に抱く矜持きょうじだったように思う。

    他方で、現在自らを誇らしげに「ノマド」と名乗っている人たちはどうだろう。AIが解説するように、カフェや図書館、コワーキングスペース、ホテルなど、好きな場所でノートパソコンやインターネットを使いながら仕事をするスタイルを「ノマドワーク」、その人たちを「ノマドワーカー」「デジタルノマド」と呼ぶのだそうだ。

    YouTubeを開けば、キャンピングカーに乗り込んで日本全国を渡り歩くご夫婦や、犬と一緒の気ままな旅を配信する年配の女性の姿がある。僕はそうした映像を眺めながら、どこかかつてのヒッピーたちが夢見た自由な風を感じて、画面の向こうの充実した生活を愉しんでいる。

    けれど、かく言う僕は完全に家に閉じこもっている人間だ。親から譲り受けた3LDK(月管理費16,337円)のマンションで気楽に暮らしてはいるものの、一週間に一度、ヤクルトの配達のおばさんと「今週も変わりないですか」「おかげさまで」と言葉を交わし、たまに書類の入った手紙の投函をお願いするだけの、世間から取り残された“引きこもり独居老人”にすぎない。外界との接点がその数言になって以来、現在の僕は髪も髭も伸びっ放しで、鏡に映るのはまさにあの頃のヒッピーそのものの姿だ(これを僕は結構、気に入っているのだけれど、傍目から見れば“浮浪者”そのものだw)。

    ※僕が大学の哲学科に進路を決めたのは、高校の倫理社会の担当の先生に、永島慎二先生の漫画『フーテン』の読書感想文が高く評価されたことがきっかけだった。

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    ※食事はもっぱらイオンのネットスーパーから食料を配達してもらっている。クレジットカードで支払うので、現金の持ち合わせが少ない。実は未だに現金しか受け付けない所があり困ったことがある。例えば、遺産相続の書類を提出する際の数万円の印紙代がそうだった。

    ※一応、僕の職業は「個人事業主」。具体的には「個人輸入代行業」で所得申告をしている。

    淋しくないかい!? 全然!! 身体は四壁の中に縛られているけれど、心だけは自由を愛した放浪者たちの気分のままでいる。物理的な移動の自由とは無縁の暮らしだけれど、それでも僕には世界とつながる窓がある。

    僕と離れて札幌で頼もしい旦那さんと一緒に暮らす妹には、「お兄ちゃんの文章は難しくて読む気がしない」と言われてがっかりだけれど、このnoteを更新し、言葉を紡ぐこと。それこそが、今の僕にとっての生き甲斐になっている。

     
     
    小比塚アンデン:ソフィアシューレ主催、『あ論』主幹。no-test、no-nukest、now-here man。旭川東高・上智大哲学科卒、法政大大学院で社会学修士号取得。英語指導の経歴:高校教師・進学塾学務主任・(昔、業者テストを手掛けていた会社の)通信教育テキスト執筆 。

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