
納豆王の茨の道 第2章 幻の「雪納豆」を求めて~西和賀で出会った温かな郷土料理~
TVチャンピオン「全国納豆王選手権」のスピンオフ企画としてIBC岩手放送が制作する「いわて大陸」の収録に参加し、盛岡の産直でミニライブが行われた。
今回は旅番組としての本編がスタートです。
幻の雪納豆を探せ!
納豆売場の前で繰り広げられた、田口友善さんの「Rock納豆ちゃん」即興ライブ。
思いがけないミニライブまで楽しませてもらい、田口さんとはここでお別れとなった。
「田口さん、今日はありがとうございました!」
「こちらこそ。納豆王さん、頑張ってください!」
ギターを抱えた田口さんを見送り、僕たちは再び旅に戻った。
「ところで、大沢さん……次はどこへ行くんですか?」
大沢アナは、待ってましたとばかりに岩手県の地図を広げた。
そして、その指が止まった場所は――。
秋田県境の奥羽山脈の東側に位置する湯田町。
現在の西和賀町である。
「雪納豆を探しに行きます」
「雪納豆?」
その言葉を聞いた瞬間、納豆王のアンテナがピンと立った。
雪の中で作る納豆なのか?
雪を使った納豆なのか?
それとも、雪のように白い納豆なのか?
そもそも「雪納豆」とはいったい何なのか。
謎を抱えたまま、僕たちは盛岡を出発した。
いざ!西和賀へ
盛岡を出発したのは午前10時。
高速道路を西へ向かい、秋田県境に近い湯田ICで高速を降りた。
そこからさらに山間部へ。
道路の周囲には、いかにも岩手の冬らしい景色が広がっていた。
山。
雪。
そして、山。
都会の道路とは明らかに違う。
「こんな山奥に、どんな納豆が待っているのでしょうか?」
大沢アナが笑いながら聞いてきた。
「納豆があるところなら、どこへでも行きますよ!」
……とは言ったものの、窓の外を眺めると、少々不安になってきた。
目指したのは、湯田町の左草地区。
そして、午前11時半過ぎ。
僕たちは、ようやく左草公民館に到着した。
手元の温度計を見ると、
プラス3℃。
雪に囲まれ北風が強いため、体感温度は今朝の盛岡より寒く感じた。
とはいえ、雪納豆を探しに来たのだから、このくらいの寒さは歓迎すべきなのだろう。
郷土料理「納豆汁」との出会い
「ここですかね?」
大沢アナと一緒に、公民館の中を覗いてみた。
すると、調理室から何やら楽しそうな声が聞こえてきた。
中では、地元の婦人会の皆さんが料理教室を開いていた。
「こんにちは!」
大沢アナが声をかける。
「ごめんください。IBCの大沢です」
そして、いつものアナウンサーらしい爽やかな笑顔で尋ねた。
「今、何を作っているんですか?」
調理室には、割烹着を来た4~5人ほどの女性がいた。
その中で、ひときわテキパキと料理を仕切っている女性がいた。
婦人会のリーダー高橋さんだった。
高橋さんは、こちらを振り返ると、
「今作っているのは、伝統的な郷土料理の納豆汁ですよ」
と教えてくれた。
「納豆汁……?」
その言葉を聞いた瞬間、僕の耳が反応した。
まさか……あの納豆汁か?
納豆王としては、聞き捨てならない。
もちろん、某食品メーカーが販売している「味噌汁に納豆を入れれば完成」という、そんな単純な話ではない。
僕は、県境を越えた秋田の横手・湯沢周辺の郷土料理として、納豆汁が存在することは知っていた。
すり潰した納豆を出汁に溶き、味噌を加える。
そこへ山菜やきのこなどを入れて煮込む。
まさに雪国ならではの、身体を芯から温める料理だ。
しかし――。
岩手県でも納豆汁が作られているとは知らなかった。
しかも、まだ現物を見たことがなかった。
これは、ちょっと期待できそうだ。
すると高橋さんが、
「せっかくだから、食べてみますか?」
と声をかけてくれた。
「いいんですか?」
もちろん断る理由などない。
大沢アナと一緒に、納豆汁を頂いた。
器を受け取り、まずは湯気の立つ汁をまずひと口。
寒い山里で食べる温かい汁物は、それだけでありがたい。
「納豆の匂いはしますけど、
納豆が見当たりませんね……」
と、大沢アナは器を覗き込みながら、呟いた。
すると、高橋さんが笑いながら答えた。
「納豆をすり潰しているからね」
やはり、秋田と同じ製法のようだ。
これなら納豆が苦手な人でも、比較的食べやすいかもしれない。
そしてふた口目に程よく煮込んだ山菜を頬張った。
「この寒さの中で食べると、身も心も温まります!」
午前中から雪山を走ってきた身体には、まさにご馳走で、空きっ腹に染み渡った。
「ところで、この納豆汁に使われている納豆は雪納豆ですか?」
と、僕が単刀直入に尋ねると、
「いいえ。スーパーで買った大粒納豆を、すり潰して使ってます」
高橋さんは、あっさり答えた。
「……なるほど(笑)」
そうだったのか。
ここで食べた納豆汁は、今回の目的である「雪納豆」ではなかった。
「雪納豆」まであと一歩
しかし、ここからが旅番組の面白いところだった。
すると大沢アナが尋ねた。
「実は、雪納豆を探しに来たんですが、ご存じですか?」
すると高橋さんは、まるでその質問を待っていたかのように答えた。
「雪納豆なら、隣の沢内村の中村さんが作ってますよ」
沢内村も現在の西和賀町である。
「えっ!?」
大沢アナと僕は、思わず顔を見合わせた。
なんと。
探していた雪納豆の作り手が、すぐ近くにいるらしい。
「中村さん……ですか?」
「そう。沢内村の猿橋地区の中村さん」
中村さんは高橋さんの知人らしく、すぐに教えてくれた。
まるで、最初から台本に書かれていたかのように(笑)
「それじゃあ……」
そう言いながら、大沢アナが僕の顔を見た。
「行くしかないでしょ!」
と、笑いながら答えた。
左草公民館で婦人会の皆さんにお礼を言って、再び旅を続けた。
湯田町から北上してさらに山奥の沢内村へ。
目指すは、猿橋地区の中村さん。
中村さんが作る「雪納豆」とは、いったいどんな納豆なのか。
納豆王の旅は、まだまだ続いた。