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擬人化オーケストラ|毎週ショートショートnote【三本立て/三部作】

    田原にかさんの「毎週ショートショートnote」に参加します。
    36回目の投稿です。

    今回のお題は「#擬人化オーケストラ」。

    「ピアノ協奏曲」の形式にあわせて、
    全3楽章の作品に仕立てました。

    ……ということで、
    410字ぴったりのショートショートを、
    3本立てでお送りします。
     


    【擬人化オーケストラ①】

    ピアノ協奏曲『四季』ハ長調
     第一楽章「春」
      Allegro moderato (穏やかに速く)


    「私一人で、オーケストラ全員のパートを弾けるわ!」

    独奏会の人気者、ピアノは自信満々だった。

    指揮者は、試しに一曲を任せてみた。

    ピアノは、低音から高音まで自在に駆け巡り、
    旋律も伴奏も見事に弾ききった。

    「さすがだね。では、同じ曲をオーケストラで演奏してみよう」

    フルートが春風を運び、
    ヴァイオリンが木々をざわめかせ、
    ホルンが山々のこだまを響かせる。

    ピアノは驚いた。
    「同じ春なのに、私の知っている春と違う!」

    指揮者は答える。
    「君の春も素晴らしい。でも、彼らにもそれぞれの春があるんだよ」

    今度は、みんなと一緒に弾いてみた。

    ピアノは、自分の演奏が変わっていくのを感じた。

    指揮者が尋ねる。
    「さっきと何が違うと思う?」

    「みんなの音を聴いていたわ。
     それに、みんなも私の音を聴いてくれていた」

    指揮者は微笑んだ。

    「一人で何でもできることと、一人で全部やることは違うよ」

    演奏が終わった静かなホールで、
    ピアノは、新しい季節が鳴り始めるのを聴いた。

    (410字)

    第一楽章「春」(了)
     



    【擬人化オーケストラ②】

    ピアノ協奏曲『四季』ハ長調
     第二楽章「夏~秋」
      Adagio (ゆるやかに)


    世界の季節は、一つのオーケストラが奏でる
    幾重もの旋律によって生まれていた。

    夏から秋への移り変わり。

    この季節を初めて演奏するピアノは、
    少し緊張していた。

    力強い夏の旋律が、少しずつ穏やかになっていく。
    そこへ、秋の旋律が静かに重なり始めた。

    フルートが涼しい秋風を運び、
    ヴァイオリンが木々を色づかせ、
    ホルンが山々に秋の訪れを告げる。

    ピアノは仲間の音に耳を澄ませた。

    夏の響きを、秋の旋律に優しくつなげるように――

    ところが、地上では想定外のことが起きていた。

    秋の気配が漂い始めたのに、暑さが一向に収まらない。

    原因はピアノだった。
    夏の響きを残そうと、ダンパーペダルを少し長く踏んでいたのだ。

    「ごめんなさい。私のせいで……」

    しかし、指揮者は微笑んだ。

    「いや、実に素晴らしい余韻だったよ。夏と秋が、見事に響き合っていた」

    指揮者は、楽譜に新しい演奏指示を書き加えた。

    sostenuto —— 音を保って。

    こうして世界に、「残暑」が生まれた。

    (410字)

    第二楽章「夏~秋」(了)
     



    【擬人化オーケストラ③】

    ピアノ協奏曲『四季』ハ長調
     第三楽章「冬」
      Largo (幅広く、ゆったりと)


    それから、幾千万の季節が巡った。

    最後の人間が姿を消し、
    動物たちも、草木も、いつしか絶えた。

    それでも、オーケストラは演奏を続けていた。

    聴く者のいないホールに、楽器たちの音だけが響く。

    ある日、楽譜に長い休符が現れた。

    指揮者が指揮棒を止める。
    楽器たちも一斉に演奏をやめた。

    静寂に包まれたホールで、ピアノはふと顔を上げた。

    誰もいないはずの客席に、一人の少女が座っている。

    「あなた、いつからそこに?」

    「最初から」

    「でも、今まで気がつかなかったわ。あなたは誰?」

    「音楽よ」

    少女は静かに微笑んだ。

    「あなたたちが奏でるたび、私は生まれていたの」

    ピアノは少女を見つめた。

    世界が終わっても、「音楽」はここにいる――

    ハッと気づき、楽譜に目を戻す。

    長い休符の先に、小さな文字を見つけた。

    Da capo.

    ――最初に戻る。

    ピアノは、指揮者と仲間たちに目を向けた。

    指揮棒が上がり、再び音楽が始まる。

    その頃、凍てついた大地に、小さな芽が顔を出していた。

    (410字)

    第三楽章「冬」(了)
     

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    <あとがき>

    今回のお題が「擬人化オーケストラ」と聞いて、
    自称「プロの音楽家」としては、いてもたってもいられず、
    三楽章構成の作品をガチで考えました(笑)

    読んでいただいた方の心に響く作品になっていたら
    嬉しいです✨
     

    私が「音楽家」を名乗っている理由はこちらの記事で……


    <アンコール>
    「擬人化オーケストラ」おまけ画像

     
    ①フルート

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    ②ヴァイオリン

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    ③ホルン

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    ④ピアノ

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    本日は以上です。
    お読みいただきまして、ありがとうございました。

    #擬人化オーケストラ
    #毎週ショートショートnote







     
     
    関西在住。1級FP、独立系司書。50代でFIREを達成し、 何があっても「この先、生きのころー!」をテーマに 自称「マルチ・ポテンシャライター」(多趣味ライター 的な造語)として活動。今まで読んだ5000冊以上の本 から生まれたアイデアをもとに、童心で楽しむ日常 や創作を発信中。

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