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ボンドは、貼るものだと思っていた

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    少しまえに、右手の親指が痛くなりました。
    病院へ行くと、腱鞘炎だと言われました。

    親指をなるべく使わないようにしてみると、思っていたより、いろいろなことができません。

    袋を開ける。ふたを回す。お風呂を洗う。
    いつもなら気にも留めない動作で、親指を使っていたことが分かりました。

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    そんなとき、動画のおすすめに、サビ取りの裏技が出てきました。
    サビたところにボンドを塗り、乾いてから剥がすと、表面のサビが一緒に取れるのだそうです。

    こすらなくていい。


    私はずっと、サビはこすって落とすものだと思っていました。

    金たわしやヤスリを持って、力を入れて、何度もこする。
    そういうものだと思っていたのです。

    でも、塗って、待って、剥がす。

    そんなやり方もあるらしい。

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    一生懸命、力を入れなくていいんだ。


    そう思いました。

    ただ、ちょうど力を入れにくい時期だったせいか、「こすらなくていい」という言葉だけが妙に残りました。

    その日から、ボンドを見る目が少し変わりました。

    貼るものだと思っていたのに。

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    日常の小さな違和感や夢の断片を、答えではなく「問い」に変えるエッセイを書いています。景色やものの働きを比喩として借りながら、意味を決めつけず、内側の動きを見つめます。読んでくださった方にとって、自分の感覚へ少し戻れる時間になれば嬉しいです。

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