
【イタリアのインクルーシブ教育③】「どう一緒に学ぶか」を問い続ける学校~「できない」ではなく「何があれば学べるのか」~
■最初に
こんにちは!サイボウズのもっちーです😊
イタリアの学校シリーズです。
前回は、共に学ぶというお話しでした。
今回は、何があれば学べるのか考えるお話しです。
▼以前の記事
①地域の学校で共に学ぶということ
②同じ場所にいる」から「共に学ぶ」へ

■「できない」ではなく「何があれば学べるのか」
○一人ひとりを支えるための体制
学校全体の説明を聞いていて驚いたのは、大人の多さでした。
この学校には約1,000人の生徒が在籍していますが、教員は189人いるそうです。
さらに、教員とは別に「エデュケーター」と呼ばれる職員が約50人在籍しています。
エデュケーターは授業を担当するだけではありません。
子どもたちの自立を支えたり、クラスの中での人間関係をサポートしたり、一人ひとりが学校生活を送りやすくなるよう関わっているそうです。
視察を通して感じたのは、
イタリアのインクルーシブ教育は理念だけで成り立っているわけではないということでした。
「子ども一人ひとりに合わせる」
という考え方を実現するために、多様な専門職が学校の中で役割を担っています。
また、学校運営については国が大きな方針を示しながらも、
実際の教育活動は各学校が状況に応じて決めているそうです。
子どもたちや地域の実情に合わせながら、それぞれの学校が工夫を続けていることも印象的でした。

○一人ひとりに合わせた学びの仕組み
学校では、子どもたちの状況や必要な支援に応じて、
一人ひとりに合わせた学びの仕組みが用意されているそうです。
その中心となるのが、PEI(個別教育計画)です。
PEIとは、その子どもの特徴や強み、困りごとを整理し、
どのような目標を持ち、どのような支援を受けながら学んでいくのかをまとめた計画です。
単に学習内容を決めるものではありません。
先生だけでなく、支援に関わる専門職や保護者も参加しながら話し合いを重ね、全員の合意のもとで作成されるそうです。
また、特別支援の先生や支援員を配置する場合も、
この計画や評価をもとに検討されます。
進路についても一律ではありません。
卒業資格の取得を目指す場合は、通常のカリキュラムを基本としながら、
必要な配慮や学習方法の調整を行います。
一方で、卒業資格の取得そのものを目標としない場合でも、
子どもの状況に応じて学習目標を修正し、教育を受ける権利が保障されています。
さらに、学習面で困難を抱える子どもたちについても、
必要に応じて個別の学習計画が作成されます。
補助ツールや教材、学習方法を工夫しながら、できる限り同じ学びに参加できるよう支援しているとのことでした。
「みんなに同じことをさせる」のではなく、
「一人ひとりが学びに参加するためには何が必要か」を考え、
学ぶ内容を完全に分けるのではなく、できる限り同じ学びを共有しながら、その子に合った方法や目標を調整していく。
PEIは、そのための大切な土台になっているようでした。

○「障害」ではなく、「何があれば学べるのか」を考える
PEIを作成する際には、ICFやICDといった国際的な基準も活用しているそうです。
障害そのものを見るのではなく、その人がどのような環境で困り、
どのような環境で力を発揮できるのかに目を向けています。
かつては、「障害があるから難しい」
と考える、いわゆる「個人モデル」の見方が中心でした。
しかし現在は、
「困難さは本人だけの問題ではなく、環境との関係の中で生まれる」
という「社会モデル」の考え方へと変化してきたといいます。
その考え方を象徴する言葉として、説明の中で何度も出てきたのが、
「インターアクション(相互作用)」
でした。
子どもだけを見るのではなく、
子どもと先生
子どもと友達
子どもと教室環境
子どもと学習内容
といった関係性全体を見ることが大切だという考え方です。
そのためPEIも、「この子には何ができないのか」を整理するためのものではなく、
「この子が学びやすくなるためには、どのような環境や関わりが必要なのか」を考えるための計画として活用されているそうです。
イタリアのインクルーシブ教育の特徴は、
「子どもを変える」ことではなく、「子どもと環境の関係を整える」ことを大事にしています。
できないことを探すのではなく、何があれば参加できるのかを考える。
障害の有無ではなく、その子に必要な支援や環境に目を向ける。
そうした発想が、これまで見てきた教材づくりや個別教育計画、先生方の関わり方にも共通して流れています。

○「できない」と決めつけない
学校全体では、およそ4人に1人が何らかのスペシャルニーズを持つ子どもだそうです。
そのため、一人ひとりの状況に合わせた支援は欠かせません。
けれど、先生方は同時にこんな課題も話していました。
それは、大人が低い目標を設定してしまうことです。
「この子には難しいだろう」
「ここまでできれば十分だろう」
そう考えてしまうと、子どもが本来持っている力に気づけなくなってしまうことがあります。
「子どもの可能性を信じることが必要です」
もちろん、急に大きく成長することばかりではありません。
けれど、
大人が最初から限界を決めてしまえば、その先に進む機会そのものを失ってしまう。
とお話しくださいました。

○一人ひとりに合わせて学びを変える
学習を一人ひとりに合わせるための計画についてもお話くださいました。
障害のある子どもが学校卒業資格の取得を目指す場合には、
同じカリキュラムを基本としながら、感覚障害への配慮や軽度の学習障害に応じた学習方法の調整を行います。
一方、卒業資格の取得を目標としない場合には、子どもの状況に合わせて学習目標を修正します。
さらに、継続的な学習困難のある子どもには個別指導計画がつくられ、
補助教材や道具を使いながら、できる限り同じカリキュラムの中で学べるようにします。
一時的に特別な教育的ニーズがある子どもについても、必要に応じて補助教材や支援方法が用意されます。
学ぶ内容をすべて別にするのではなく、
できる限り同じ学びを共有しながら、必要な方法や目標を調整していく。
そのために個別の計画が用いられていました。

■最後に
最後までありがとうございました。
まず考え方として、学校の卒業資格を目指さないという選択肢があることに驚きました。
日本では、学校に入ったら卒業をする、できなかったら辞めるという選択になると思うのですが、そもそも、学校の卒業資格は目指さずに、その子に合わせたかたちで、共に学ぶ。
こういう柔軟さって、教育だけでなくいろんなところで目にしたイタリアらしさだなと思いました!
次回は、相手を変えるのではなく、関わり方を変えるお話しです。
次回も見てもらえると嬉しいです😊