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朝メシ抜きで筋トレしていい人、食べたほうがいい人

    朝5時に起きて、何も食べずにジムへ直行。「空腹のほうが脂肪が燃える」。本気でそう信じていた。

    朝メシは抜くくせに、iHerbで買ったドクロ顔のプレワークアウト「ザ・カース」だけは流し込む。妻に見つかって、秒で捨てられた。

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    冷静に考えたら、早朝からドクロの粉を飲む夫は普通に怖い。

    それでも3カ月、空腹で追い込んだ。体重は2kg減った。ところが、ジムにある筋肉量や体脂肪も出る体重計では、筋肉量の推定値が下がり、体脂肪はほとんど変わっていなかった。

    最初は、朝メシを抜いたせいだと思った。
    でも、あとから調べてみると、朝食だけを責めるのは見当違いだった。

    「空腹のほうが脂肪が燃える」は半分だけ本当

    空腹で運動すると、その運動中に脂肪を使う割合が増えることはある。
    ここだけ聞くと、朝メシを抜いたほうが痩せそうに思える。

    ただ、その場で脂肪を多く使ったことと、数週間後に体脂肪が多く減ることは別の話だ。空腹と食後の運動を数週間比べた研究をまとめても、体重や体脂肪の減り方に明確な差は確認されていない。¹⁾

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    まとめられた研究はどれも有酸素運動なので、朝の筋トレにそのまま当てはめることはできない。それでも、脂肪を多く落とすために空腹を我慢する根拠にはならない。

    朝は食欲がない。食べないほうが動きやすい。トレーニング後に普通に朝食を食べられる。そんな人は、何も食べずに行っていい。

    反対に、空腹だと力が続かない。終わったあとに食欲が暴れる。昼にドカ食いする。それなら、空腹で頑張る意味はない。

    空腹は、脂肪を燃やした証明書ではない。

    筋肉についても、朝食前と朝食後の筋トレを数カ月比べた研究はほとんどない。2025年の小規模な試験では、筋肉の厚さや筋力に明確な差は確認されなかった。²⁾

    ただ、対象は筋トレ習慣のなかった若年成人で、トレーニングは週2回だった。この研究だけで、食べても食べなくても同じと決着したわけではない。一方で、朝メシ抜きだけを「筋肉が増えない犯人」にする根拠も弱い。

    空腹で粘れないなら、少し食べる

    朝食の有無で、数カ月後の筋肉の増え方が変わるかはまだわからない。ただ、その日のスクワットやベンチで何回できるかには、朝食を抜いた影響が出る人もいる。

    普段から朝食を食べている筋トレ経験者が、朝食を食べた日と抜いた日でスクワットとベンチプレスを行った試験がある。朝食を抜いた日は、スクワットもベンチプレスも回数が減っていた。落ち幅が大きかったのはスクワットだった。³⁾

    空腹で回数が落ちる人は、たしかにいる。
    ただし、おにぎりの糖質を入れれば、必ず回数が増えるとも限らない。

    別の試験では、糖質を含む朝食と、ほとんどカロリーのない偽物の朝食が比べられた。どちらも水だけの条件より空腹感が減り、スクワットの回数が増えていた(ベンチプレスは差がなかった)。⁴⁾

    糖質入りの朝食と、ほぼカロリーのない偽物の朝食には大きな差がなかった。糖質だけが効いたというより、空腹感が落ち着いたことで動きやすくなった可能性がある。確かになんとなく空きっ腹だと力が入らない気はするから納得感がある。
    空腹で失速しているなら、少し食べて比べる価値があるかもしれない。

    最初から立派な朝食はいらない。小さめのおにぎり、バナナ半分、食パン1枚、ゼリー飲料、スポーツドリンク。このあたりを、トレーニングの30〜90分前に少量から試せばいい。

    食べると気持ち悪いなら、無理に食べない

    逆方向の失敗もある。「朝トレ前は食べたほうがいい」と聞いて、食欲もないのにおにぎりと卵を押し込む。そのままスクワットを始めたら、1セット目で胃の中のおにぎりが戻ってくる。

    普通に最悪だ。

    食べると気持ち悪くなるなら、まず量を半分にする。おにぎり1個ではなく半分。バナナ1本ではなく半分。それでも重いなら、食べてからトレーニングまでの時間を少し延ばす。

    固形物が胃に残る人は、ゼリー飲料やスポーツドリンクに変える方法もある。それでも合わないなら、水分だけで始めて、終わってから食べればいい。

    スクワットやデッドリフトで毎セット吐きそうになるなら、朝から食べるメリットより、胃の不快感のほうが大きい。食べたことで集中やフォームが崩れるなら、本末転倒だ。

    朝を抜くなら、1日トータルで帳尻を合わせる

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    自分の3カ月を振り返ると、朝食だけの問題ではなかった。朝は何も食べない。トレーニング後はプロテインだけ。昼も軽く、夜も思ったほど食べていなかった。

    結果、トータルのカロリーとタンパク質の量が足りていなかった。

    食べる量が慢性的に足りない状態で筋トレを続けると、重量が伸びていても、筋肉を増やすうえでは不利になる。複数の研究をまとめた解析でも、筋力の伸びに大きな差はなかった一方で、筋肉量を反映する指標の伸びは鈍っていた。⁵⁾

    ここが厄介だ。食事が足りなくても、トレーニングの記録は伸びることがある。トレーニングはできているし、汗もかいているので、本人には燃料不足という感覚がない。

    あの頃の自分も、空腹で追い込めているから大丈夫だと思っていた。けど、足りていなかった。朝食を抜いたのなら、そのあとに意識してしっかりカロリーとタンパク質を確保しなくてはいけなかった。

    タンパク質の量とタイミングはこちらに詳しく書いた。

    「トレ後30分以内にプロテイン」はもう古い。20年以上筋トレしてきた医師が本当に大事だと思うこと(無料)

    食べたほうがいい人

    次のどれかに当てはまるなら、トレーニング前に少量の食事を試してみる。

    • 空腹だと回数が落ちる

    • 脚や背中の日に力が続かない

    • 空腹で集中できない、ふらつく

    • 朝を抜くと1日の食事量まで足りなくなる

    • トレーニング後も数時間食べられない

    最初から適量を当てる必要はない。おにぎり半分で胃に残るなら、さらに減らす。食べても何も変わらなければ、量を少し増やして比べる。

    朝食の正解を探すというより、トレーニングの邪魔にならず、最後まで動ける量を探す。

    抜いていい人

    次の条件が揃っているなら、無理に食べなくてもいい。

    • 空腹でも重量や回数が落ちない

    • ふらつきや強い空腹感がない

    • 食べるとスクワットやデッドリフトで気持ち悪くなる

    • トレーニング後すぐ食事ができる

    • 朝を抜いても1日の食事量を満たせる

    朝はどうしても食欲がない人もいる。その人がおにぎりを押し込み、気持ち悪いままトレーニングする必要はない。食べないほうが動きやすいなら、その感覚を使えばいい。

    ただし、脂肪を多く燃やすためだけに我慢しているなら、そこは考え直していい。

    空腹は勲章ではない

    自分の朝トレ前の食事は毎回同じではない。脚や背中をがっつりやる日は、おにぎりやバナナを食べてから行くことが多い。
    軽い上半身の日は、何も食べずに行くこともある。

    脂肪を多く燃やすために空腹を選んでいるわけではない。その日のトレーニングと、胃の調子で決めている。

    空腹だから偉いわけではない。朝食を食べたから、筋肉が増えるわけでもない。あの3カ月で先に疑うべきだったのは、朝メシ抜きではなく、1日ちゃんと食べていなかったことだ。

    脂肪を燃やすために、空腹で頑張る必要はない。空腹で粘れないなら少し食べる。食べると気持ち悪いなら無理に食べない。朝を抜くなら、1日トータルで帳尻を合わせる。

    自分は、このやり方に落ち着いている。

    まとめ

    • 空腹での運動が長期的な体脂肪減少に有利だとは確認されていない

    • 空腹だとウエイトの粘りが足りなくなる人は、少量の食事を試す

    • 食べるとスクワットやデッドリフトで気持ち悪くなる人は、無理に食べなくていい

    • 朝食を抜くなら、トレーニング後と1日の残りで食事量の帳尻を合わせる

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    参考文献

    1. Hackett DA, Hagstrom AD. Effect of Overnight Fasted Exercise on Weight Loss and Body Composition: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Funct Morphol Kinesiol. 2017;2(4):43. doi:10.3390/jfmk2040043

    2. Vieira AF, Blanco-Rambo E, Bandeira-Guimarães M, et al. Impact of Overnight Fasted State Versus Fed State on Adaptations to Resistance Training: A Randomized Clinical Trial. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2025;35(4):291-302. doi:10.1123/ijsnem.2024-0215

    3. Naharudin MNB, Yusof A, Shaw H, et al. Breakfast Omission Reduces Subsequent Resistance Exercise Performance. J Strength Cond Res. 2019;33(7):1766-1772. doi:10.1519/JSC.0000000000003054

    4. Naharudin MN, Adams J, Richardson H, et al. Viscous Placebo and Carbohydrate Breakfasts Similarly Decrease Appetite and Increase Resistance Exercise Performance Compared With a Control Breakfast in Trained Males. Br J Nutr. 2020;124(2):232-240. doi:10.1017/S0007114520001002

    5. Murphy C, Koehler K. Energy Deficiency Impairs Resistance Training Gains in Lean Mass but Not Strength: A Meta-Analysis and Meta-Regression. Scand J Med Sci Sports. 2022;32:125-137. doi:10.1111/sms.14075

    ※本記事は一般的な健康・医学情報の提供を目的としたものであり、特定の個人に対する診断・治療・医学的助言を行うものではありません。健康上の懸念がある場合は、必ず医療機関を受診してください。記事の情報に基づく行動の結果については、筆者は責任を負いかねます。

     
     
    東大医学部卒の総合内科・呼吸器専門医。医学博士。経営者のパーソナルドクター。NewsPicks公式の健康番組にレギュラー出演。HALEO最高科学・医療顧問。外来では話しきれない健康の話を、論文だけでなく自分でも試して、失敗まで書いています。深掘りはDr.もさりラボで。

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