
ショートショート|未確認飛行パンプキン|毎週ショートショートnote
ハロウィンの夜。男は喧騒を避けて、街灯のない用水路沿いの暗い道を歩いていた。
ふと前方を見ると、闇の中にオレンジ色の光が二つ、未確認飛行物体のようにフワフワと近づいてくる。一つは人間の、もう一つは犬の高さだ。
男は合点がいった。あれは夜の散歩用の防犯グッズ、光るカボチャ型の帽子だ。飼い主も犬も黒ずくめのため完全に闇に溶け込み、カボチャだけが宙を浮遊しているように見えるのだ。
暗闇の中でも、強烈に点滅する光のおかげで彼らの居場所ははっきりとわかる。通行人や車から身を守るには、これ以上ないほど完璧な効果だ。「気の利いたいたずらだ」と男は微笑ましく思い、立ち止まってすれ違うのを待った。
だが男の少し手前で、二つの光はふいにスッと下へ沈み込み、フッと消えた。
犬が何かを見つけてしゃがみ込んだのだろうか。男は不思議に思い、光が消えた場所へと歩み寄った。
しかし、そこに人影はなかった。
足元にあったのは、雑草に隠れて口を開けている、柵のない深く淀んだ開渠だった。
男が恐る恐る覗き込むと、暗い濁流に呑まれながら、大小二つのパンプキンがチカチカと虚しく点滅して流されていくところだった。
完璧な防犯グッズは、暗闇の中で「他者」に自らの存在を強烈に知らせる効果は絶大だった。しかし、周囲への自己主張ばかりに特化したその光は、「自分自身」の足元にポッカリと開いた致命的な陥穽を、ただの一度も照らしてはくれなかったのだ。
(終)
こちらの企画に参加させていただきました。
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30分で書いて100スキ超えのショートショート作成術をまとめました。
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