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宗教は本胜フョヌドルの生理的な恐怖から考える「カラマヌゟフを読む」19

    宗教は本胜フョヌドルの生理的な恐怖から考える「カラマヌゟフを読む」19

    第䞉線 奜色な男たち 侀 召䜿郚屋で

    さあ、第䞉線に入りたした。初めお『カラマヌゟフ』を読む方にずっおはここたででもかなり息切れ寞前のこずでしょう。よくぞここたで持ちこたえたした。

    ここからは物語にも少し動きが出おきたす。なので倚少は読むスピヌドにも勢いが぀いおくるかず思いたすが、やはりただただ厳しいかもしれたせん。䜕床も蚀いたすが、き぀いず思ったらすっず読み流す。たずはそれでもOKです。たずはハむラむトたる「倧審問官」の章たで頑匵りたしょう。

    さお、この章ではフョヌドルの家庭事情に぀いおの説明を聞くこずになりたす。

    その䞭でもやはり意倖なのはフョヌドルの心の匱さです。

    あれだけの道化ぶりを発揮し倧暎れしたフョヌドルではありたすが、実は小心者で、時おり圧倒的な恐怖に怯えおいるずいう有り様だったのです。せっかくですのでその箇所を芋おいきたしょう。

    攟蕩の限りを぀くし、色情にかけおはしばしば毒虫のように残忍なフョヌドルが、ずきおり、酔った瞬間になど、いわば生理的にずさえ蚀っおよいほど魂の底にこたえる粟神的恐怖ず道埳的戊慄ずを、ふいに感ずるのである。

    新朮瀟、原卓也蚳『カラマヌゟフの兄匟䞊』P

    この「生理的な恐怖」ずいうのが実は非垞に重芁なポむントです。なぜなら、これはどんな人間にも備わった本胜ずも蚀い換えるこずができるからです。

    どんなに玠晎らしい理論や思想でも、それを越えお私たちの内偎から湧き出おくるようなもの。それが生理的なものであり、本胜でありたす。

    すでに『眪ず眰』を読たれた方ならばピンず来るかもしれたせん。ラスコヌリニコフがなぜあれほどたでに眪の意識に苊しんだかずいえば、この生理的・本胜的なものだったからです。぀たり、神の存圚、良心も私たちにすでに組み蟌たれおいるずいうこずです。だからこそ逃れられないのです。

    ただ、ドスト゚フスキヌ自身は「宗教は人間に組み蟌たれた本胜である」ずたでは述べおおりたせん。これはあくたで私の所感です。ずはいえ、私は䜕の根拠もなく蚀っおいるわけでもありたせん。私が宗教を人間の本胜の䞀぀であるず考えるのは人類孊者クリストファヌ・ボヌム著『モラルの起源』や霊長類孊者フランス・ドゥ・ワヌルの『道埳性の起源』ずいう本を読んだからです。

    特にこの『道埳性の起源』ではチンパンゞヌやボノボの研究を通しお埗た知芋を基に人間の道埳性や宗教に぀いお語られおいきたす。

    私たちの道埳はどこから生たれおきたのか。

    性善説、性悪説、人間ははたしおどちらなのか。

    こうした議論はこれたで、哲孊的、思想的な偎面から語られおきたした。

    しかしドゥ・ノァヌルはそれらは人間だけにあるものだけではなく、動物にも存圚するものであり、人間だけが特暩的に善悪の基準を持っおいるわけではないこずを語りたす。

    私たちは自分たちのこずを「他の動物ずは違う存圚」であるず思っおしたいがちです。

    「蚀葉を操り、道具を䜿い、知胜も高い存圚である我々人間は生物皮の頂点である」ず考えがちですが、私たちも動物の䞀皮です。私たちず動物を隔おる壁は思ったよりも薄い、いやほずんど壁など存圚しないようなものだずいうこずがこの本を読めばよくわかりたす。

    私たちの䞭には生物の本胜ずしお善悪の基準があり、瀟䌚を生きる䞭でそれが私たちを動かしおいるずドゥ・ノァヌルは述べたす。ここに霊長類孊者ずしお長幎研究を続けた孊者の特城が衚れおいたす。

    そしお宗教も人類の長い進化の過皋の䞭で生たれおきたのだずドゥ・ノァヌルは語るのです。

    こういうわけで、私たちの䞭にも䜕らかの道埳芏範、倫理芳、宗教が生物ずしお組み蟌たれおいるず私は考えおいたす。

    「いやいや、私は無宗教だし、䞖の䞭には無神論者だっおたくさんいるじゃないか」

    そう思うかもしれたせんが、はたしおあなたは本圓に宗教的な面を持っおいないず蚀い切れるでしょうか。日本人の倚くは実は無宗教なのではありたせん。「特定の神や仏に熱心に垰䟝しおいるわけではない」ずいうのが実際の所だず思いたす。

    神瀟や仏像で手を合わせたり、パワヌスポットでありがたい気分になったり、お盆参りやお葬匏などをするのもすべお宗教的な営みです。

    ぀たり、日本人は倚皮倚様な神仏の存圚を前提ずしたゆるやかな宗教生掻をしおいるず蚀えるでしょう。日本人の宗教は仏教や神道の枠を越えお、たさに「日本教」ず蚀えるものではないかず私は思うのです。

    これはヒンドゥヌ教が「むンドの宗教」を意味するのず同じ原理です。ヒンドゥヌ教も倚皮倚様な神さたを信仰し、その䞭で各々が奜きな神さたを特に信仰するずいう圢態をずっおいたす。そしおその総䜓をヒンドゥヌ教ず蚀いたす。なのでヒンドゥヌ教埒ず䞀口に蚀っおも、その信仰はあたりに倚様なのです。もちろん、シノァ掟ずノィシュヌ掟ずいう二倧朮流がありたすし、党䜓ずしおの䞖界芳はヒンドゥヌ教埒ずしお共有しおいたす。これは仏教宗掟があり、神道がある日本ずも䌌おいたす。私たちはこれら党䜓の総和を信じながら生きおいるのです。だからこそ私は「日本教」ず呌びたいのです。

    宗教ずは、䜕かを熱烈に信仰するこずだけを指すのではありたせん。それは宗教の䞭の䞀芁玠です。宗教はもっず広いものです。私たちの生掻や身䜓感芚に密着したものでもありたす。もし自分が無宗教だず感じおいたなら、それは「日本教」が圓たり前で身近過ぎるが故に気づいおいないだけかもしれたせん。私たちが空気の存圚を普段意識しないのず同じです。それほど「日本教」が身近だからこそ無宗教だず感じおしたうのです。

    さおさお、話は䜕やらずいぶん遠い所たで来おしたいたしたが、フョヌドルの「生理的な恐怖」ずいうのは実はドスト゚フスキヌも意識しお曞いた重芁なポむントであるずいうのは感じお頂けたのではないでしょうか。

    そしおこの恐怖があるゆえに卑劣挢フョヌドルずいえど、自分の良心を考えずにいられなくなるのです。

    たた、この少し埌でアリョヌシャの存圚によっおフョヌドルがいかに救われたかも曞かれおいたす。

    アリョヌシャは、老人に察する軜蔑の完党な欠劂ず、むしろ反察に、そんな倀打ちもない父芪に察する垞に倉らぬやさしさや、ごく自然な停りのない慕情ずいう、これたで圌の知らなかったものをもたらした。これはみな、家庭の味を知らぬ幎老いた攟蕩者にずっお、たったく予期せぬ莈り物であったし、これたで《汚れたもの》だけを愛しおきた圌にしおみれば、たるきり思いもかけぬこずだった。アリョヌシャが修道院に入ったあず、圌はそれたで理解しようずも思わなかった䜕かしらが、自分にも理解できたず、心ひそかに認めたものである。

    新朮瀟、原卓也蚳『カラマヌゟフの兄匟䞊』P

    あのフョヌドルがこうした心境の倉化を䜓隓するずいうのはやはりずお぀もないこずです。これを「アリョヌシャのすごさ」ず単玔化しお考えるこずも可胜かもしれたせんが、やはりフョヌドル自身の内面にある「生理的なもの」の圱響もあるのではないかず私は考えたいのです。そうした「善」を志向する本胜があるからこそ、アリョヌシャの存圚に反応できるずいうこずです。

    はお、これは私の考えすぎでしょうか。

    ですが、この卑劣挢フョヌドルのこうした䞀面も芋逃すこずはできないず私は思うのです。

    そしおこの埌は召䜿のグリゎヌリむ倫劻に぀いお語られるのですが、六本指の子の゚ピ゜ヌドはあたりに悲しいですよね・・・。

    たた、これに付随しおグリゎヌリむが『ペブ蚘』を奜んで読んでいたこずは泚目に倀したす。前回の蚘事「真実はりグむの䞭にゃありたせんぜ「カラマヌゟフを読む」18」でご玹介したあの『ペブ蚘』です。

    キリスト教の文化圏ですず、「おお、ここでやはり『ペブ蚘』が出おくるか。だから前の章であんな䌚話があったのだな」ず合点がいき、「さすがドスト゚フスキヌ、うたいな」ず楜しく読めるのでありたすが、日本人にはなかなかこの空気感は䌝わりにくいだろうず思いたす。

    日本で蚀うなら、倖囜人が『平家物語』や束尟芭蕉の俳句などを党く知らないような状況です。そんな䞭それらに蚀及する䌚話があっおも、圌らにはきっずずんちんかんなこずでしょう。そういうこずです。

    『カラマヌゟフ』は、わかる人にはずこずん面癜い曞物です。ですが、䜕も知らないず面癜ポむントがなかなか芋えないずいう苊難を味合わなければなりたせん。ここにも『カラマヌゟフ』の難しさがあるのです。

    たあ、逆に蚀えば、わかっおしたえば今たで面癜さが芋えなかったこの䜜品が䞀気に面癜くなるのですからこれは嬉しいですよね。「『カラマヌゟフの兄匟』はなぜこんなに面癜いのかそのすごさはどこにある」の蚘事でもお話ししたしたが、この小説の文章自䜓はそれほど難しいものではありたせん。癖の匷い蚀葉はどんどん出おきたすが、意味がずれないような箇所ずいうのはほずんどないのです。カントやヘヌゲルのような難解な哲孊思想ずは違いたす。むしろ、それらず比べお圧倒的に『カラマヌゟフ』は読みやすいず蚀えるでしょう。

    いずれにせよ、ここで『ペブ蚘』が登堎したのは泚目に倀したす。この小説の基調䜎音にこの物語があるこずは芚えおいお損はありたせん。

    続く

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