
ピカソの陶器にみる「遊び心」―東京で二つのピカソ展を巡る旅①
ピカソは、そんなに好きではない。
「青の時代」や「キュビスム」で知られる偉大な画家だとは思うけど
単純に、自分の好みとは違うと感じていた。
ただ、ピカソの陶器やデッサン、イラストなどは好きで
今回の東京旅行では「ヨックモックミュージアム」と
国立新美術館の「ピカソ meets ポール・スミス」を訪れました。
陶器を通して土と遊ぶピカソ、
色彩でピカソの映えを作った、ポール・スミス
二つを見て感じたのは共通する
自由で無邪気な「遊び心」だった。
今回はそんなお話です。
1: 陶芸の仕事をしていた私が、ピカソの陶器に惹かれる理由

私がピカソの陶器に出会ったのは、地元の美術館でした。
ミュージアムショップには、絵画のガチャガチャがありました。
回してみると、かわいい、ピカソの絵皿バッジが出てきました。
この可愛さに、私は「キュン」と、してしまった。

調べてみると、国内最大級のピカソの陶器コレクションを
所蔵しているのが、あのお菓子メーカー「ヨックモック」の
運営する「ヨックモックミュージアム」だと知りました。
「死ぬまでにしたいこと」の一つに
「ヨックモックミュージアムへ行く」を書き足しました。
2:壺が鳥に!実用性を飛び越えるピカソの発想
ピカソは戦後、60代になってから
コートダジュールで陶器と出会ったようだ。
当時すでに有名なアーティストだったけれど
知る方は一部の人のみで、ゆっくり過ごしてたみたい。
館内は一部を除いて「写真撮影OK」だったので、
いくつかパシャパシャ。


古代文明の土器や青銅器を思わせるフォルムです。
館内には、作陶するピカソの映像が流れていました。
映像では、ロクロ師がひいた壺を横に倒し、
ナイフでざくざくと切り込みを入れていました。
さらに、壺の首の部分を「鳥」に見立て、
あっという間に、鳥の水差しの完成です。
陶器の仕事をしていた私なんかだと
どうしても実用性や使い勝手を考えてしまいますが
さすがアーティスト…!
インスピレーションのまま、自由に形を変えていきます。






皿はおそらく、型を使って成形したもの。
絵付けは、さすがピカソ……!という感じ。
闘牛や女性、人の顔などを、迷いなく、大胆に描いていて
無邪気な子どものような、遊び心を感じます。


壁面いっぱいの絵皿。
か、かわいい…!!!
至福の時間です。
3:なぜヨックモックは、ピカソの陶器を集めたのか

ところで、洋菓子の「ヨックモック」が、
なぜピカソの陶器を集め、美術館を開くまでになったのだろう?
展示の一番最後に、
このコレクションについての説明がありました。
コレクションには「ヨックモック」創業者である藤縄則一の「菓子は創造するもの」という強い思いが反映されています。その思いを受け継いだ2代目経営者の館長・藤縄利康が出会い、心引かれた作品を、ヨックモックグループとして30年以上掛けて収集しました。現在では500を超える作品を擁するコレクションとなっています。
創業者の
「菓子は製造するものではなく、創造するもの」
という言葉が、ピカソの自由な発想と創造が
リンクしたんでしょうね。
併設のカフェでは、
ヨックモックのお菓子も楽しめるようです。
4:おわりに
私は今でも、ピカソの有名な絵画すべてが
好きなわけではありません。
けれど壺を鳥に、皿を人の顔に
変えてしまう陶器の作品には、
見ているこちらまで「自由になる」楽しさがありました。
ピカソの陶器を集めたヨックモックも、
色彩でピカソの世界を捉え直したポール・スミスも、
根底にあったのは「遊び心」。
次の記事では、国立新美術館の
「ピカソ meets ポール・スミス」について紹介します。