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丸い日

    朝、コップの口がこちらを見ていた。

    皿のふち。
    水滴。
    排水口。
    ドアノブ。
    目玉焼きの黄身。

    どれも、目だった。

    丸いものが、ただ丸いだけではなく、こちらを向いている。

    そう気づいてから、部屋にいるのが少し難しくなった。

    窓の外では、信号の赤が瞬きもせずに光っていた。
    自転車のタイヤが、何度も同じ場所へ戻っていく。
    向かいの家の換気口は、黒い口を開けていた。

    スマホを開く。

    通知の赤い印。
    プロフィール写真。
    録音ボタン。
    未読の数。

    丸は、画面の中にも増えていた。

    指で閉じても、別の丸が開く。
    消したはずのものが、少し位置を変えて残る。

    昼すぎ、薬を飲もうとして、手が止まった。

    錠剤が白い月に見えた。

    飲み込めば、喉の奥に月が落ちる。

    部屋の電気を消した。

    けれど暗闇は、かえって丸を濃くした。

    まぶたの裏に、白い輪が浮かぶ。
    輪はゆっくり広がり、頭の内側に触れた。
    触れたところから、痛みが咲いた。

    夜、カーテンの隙間を開ける。

    空に、いちばん大きな丸があった。

    それは遠くにあるのに、私のこめかみの内側から昇っていた。

    白く、静かで、容赦がない。

    満月は痛みでやってきた。



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    SaMD・医療AI、生成AI、仕事、文化、記憶、日常について書いています。 技術や制度、言葉や美意識のあいだに立ち上がる「人間らしさ」を、静かに言葉にしていくnoteです。 初めての方は「このnoteを歩くための小さな地図」からどうぞ。

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