
SF小説「脳にアプリ #23」落とし物の持ち主・拝啓文芸部参加作品
明け方目が覚めた。まだ起きる時間まではだいぶ早い。
夢を見ていたことは覚えている。
なんか、懐かしいような、恥ずかしいような。心地よかったような気もする。
でも、内容は全く覚えていない。
気になるけど、思い出そうとすればするほど記憶が遠くなる。
感覚だけは残っていた。
まあいいか。寝よう。
……
結局、よく眠れなかった。
眠い。田中くんに聞いてみよう。
「こんなアプリはどうかな、『夢メモリー』」
「夢の記録?」
「うん。夢を振り返ることができるみたい」
「へえ。そんなのもあるんだね」
「精度は人それぞれみたいだけど」
よし、入れてみよう。
インストール。
いつもより、ちょっとこそばゆかった。
今朝の夢を少しずつ思い出してきた。
走っているのか、俺。
そういえば、何かを追いかけていたような気がする。
ああ、ずいぶん前の自分だなあ。
そうそう、あの頃は夢中だったよなあ。
全然うまくいかなかったけど(笑)。
必死に走ってるんだなあ。
「落としましたか?」
誰かが声をかけてきた。
「いえ、私のではないです」
俺は走り続ける。
「あなたのものですか?」
別の誰かにも声をかけられた。
「いえ、違います」
なんだろう、何かを落としたのかな?
俺は何を追いかけているんだろう。
疲れてきたのか(笑)
少し、足が止まった。
すると、また違う誰かに声をかけられた。
「落としましたよ」
「あ、ありがとうございます」
俺はそれを受け取った。
そうか、夢中で走っていて気づかなかったのか。
確かに俺が落とした夢だよな。
懐かしいなあ。
もう一回、挑戦してみてもいいかもな。
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「脳にアプリ」の世界観は、第1話からお楽しみいただけます。