
コノハナサクヤヒメ様の梅酒②
(コノハナサクヤヒメ様の梅酒①のつづきです。)
石柵の上に、ぽつんと、青い実がひとつ置いてあったのです。
よく見ると、それはとてもきれいな青梅でした。
「あれ?」
どうして、きれいな青梅がここに置いてあるのだろう?と思って神社の地面に目を落とすと、そこには、信じられない光景が広がっていました。まだ瑞々しいきれいな青梅が、境内のあちこちにゴロゴロとたくさん落ちていたのです。


自給自足の生活に憧れ、毎年梅酒や梅シロップを仕込んでいる私は、一瞬でその地面に広がる青梅にくぎ付けです。スーパーにもまだ梅が並んでいない時期の、思いがけないご対面。
しかも、この神社はお酒にとても深いゆかりのある神社でもあります。
お酒に深いゆかりのある神社で、お酒の材料になる青梅が、その標の下にこんなにたくさん落ちているなんて!
けれど、境内のものは葉っぱ一枚でも神様のもの。
勝手に持ち帰ってはいけないという教えを、私はずっと守ってきました。
「このまま処分されてしまうなら、私がこの青梅を美味しい梅酒にしたい。でも、やっぱりダメかな……」
欲しいという欲と、神様への恐れ多さの間で葛藤し、私は階段の前で3分くらい立ち尽くしてしまいました。
どうしたらいいですか?コノハナサクヤヒメ様!!
どうしても諦めきれなかった、私。
勇気を振り絞って、お守りの授与所へと引き返しました。
「あそこに落ちている梅を、拾ってもいいですか? 1〜2個でもいいので……」
勇気を出して、さっきの無表情の若い巫女さんにそう言いました。
突然の質問に少し驚いたようでしたが、その巫女さんはちょうどお昼休憩に入ろうとしていた宮司さんのところへ確認しに行ってくれました。
ドキドキしながら待っていると、戻ってきた巫女さんからは
「いいですよ、だそうです。」
と、そっけないけどありがたいお返事が返ってきました。
「ありがとうございます!」

お礼を言って梅の落ちている場所へ戻ると、いつの間にか草刈り機の音も止み、境内は水を打ったように静まり返っていました。巫女さんもお昼休憩に入られたようで、そこには私と、ゴロゴロと転がる青梅だけの空間が広がっていました。

本当は、もっとたくさん欲しい。けれど、小さなカバンしか持っていないし、車にビニール袋を取りに帰って「収穫」するような真似は違う気がする。私は自分の両手で持てるだけ、洋服のポケットにそっと入る分だけ、ありがたく梅をいただきました。
最初に私に気づかせてくれた、石柵の上のあの1粒の梅。
「こんな素敵な体験をさせてくれて、ありがとう」
嬉しい気持ちをおすそ分けしたくて、私は神社の末社へ、拾った青梅を1粒ずつお供えして歩きました。(丁寧にお掃除をされているのを拝見していたため、感謝を込めてその日のうちに神様へお返しする気持ちで置かせていただきました。)

そして、私は当初のお目当ての『お清めの塩』ではなく、神様が分けてくれた『境内の青梅』を持って帰路についたのです。その後、不思議と旦那は「あの塩がほしい。」とは言わなくなりました。
(③につづく)
スミマセン、長くなったので3回に分けています。続きをお待ちください。