
障害受容は「ゴール」ではない|障害名より、その子の「得意・苦手・手立て」を見る
受け入れられない気持ちは、自然なこと
特別支援学校の知的障害部門で教員をしています。
わが子に障害があると分かったとき、すぐに受け止められる人はほとんどいません。「何かの間違いでは」「もう少し大きくなれば追いつくのでは」と思うのは、わが子を大切に思うからこその、自然な気持ちです。
障害を受け入れることを「障害受容」と呼ぶことがあります。でも、受容は一度通り過ぎれば終わるゴールではありません。受け止められたと思った後に、また気持ちが揺れることもあります。行ったり来たりしながら、時間をかけて向き合っていくものだと思います。
子ども自身が苦しくなってしまうとき
ただ、教室で子どもたちと過ごしていると、気になる場面に出会うことがあります。
できないことが「努力が足りないから」と受け止められ、本人の力に合わない目標をがんばり続けている。周りの期待に応えたいのに応えられず、少しずつ自信をなくしていく。そんなとき、いちばん苦しいのは、子ども自身です。
これは、誰かが悪いという話ではありません。わが子の可能性を信じたい気持ちと、子どもの「今」との間に、ずれが生まれてしまうことがある、ということです。
障害名や等級より、見てほしい3つのこと
障害名や、手帳の等級は、支援やサービスを受けるための大切な情報です。でも、それだけで、その子がどんな子なのかが分かるわけではありません。同じ障害名でも、得意なことも苦手なことも、一人ひとりまったく違います。
だからこそ、学校で大切にしているのは、次の3つを見ることです。
・何が得意か:好きなこと、集中できること、人より上手にできること
・何が苦手か:時間がかかること、困っていること、避けたがること
・どんな手立てがあれば、自分でできるか:道具、手順の見える化、声かけの仕方、環境の工夫
3つめが、いちばん大切です。苦手なことも、手立てを加えることで「自分でできる」に変わることがあります。
先輩たちから教わったこと
進路担当の先生からも、卒業後に通う事業所のスタッフの方からも、同じことを聞いたことがあります。「苦手を克服するよりも、何ができるのか、どの部分を助けると仕事を進めることができるのかが大事」という言葉です。
また、進路主任からは「時間がかかっても、一人でできることを増やすことが大切」と言われました。私も指導の中で、手を出したくなる気持ちをこらえて、見守ることを大切にしています。
苦手をなくすことより、「どうすればできるか」を見つけること。それが、卒業後の生活にもつながっていきます。
家でできる「見取りメモ」
ご家庭でも、子どもの様子を3つに分けてメモしてみるのがおすすめです。
ステップ1:「得意」を書く
好きな遊び、集中できること、ほめられてうれしそうだったことを書きます。
ステップ2:「苦手」を書く
時間がかかること、嫌がることを、責める言葉ではなく、見たままの事実で書きます。
ステップ3:「こうしたらできた」を書く
写真を見せたらできた、順番を一つずつ伝えたらできた、など、うまくいったときの手立てを書きとめます。

このメモは、担任との面談や、就学・進路の相談のときにも役立ちます。「この子にはこうするとできます」という情報は、学校にとっても宝物です。

学習指導要領にも「的確な把握」
特別支援学校の学習指導要領(平成29年/2017年告示)では、自立活動の指導に当たって、一人ひとりの障害の状態や特性、心身の発達の段階などを的確に把握したうえで、指導すべき課題を明確にすることが示されています。
学校でも、障害名ではなく、その子自身を見ることから指導が始まります。
おわりに
障害を受け入れることを、急がなくて大丈夫です。気持ちが揺れる日があっても、それは自然なことです。
ただ、子どもの「得意」「苦手」「こうするとできる」を見つけることは、今日からでも始められます。それは、子どもが自信を持って毎日を過ごすための、いちばんの近道かもしれません。学校とご家庭で、一緒に見つけていけたらと思います。
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参考資料
文部科学省「特別支援学校小学部・中学部学習指導要領(平成29年告示)」第7章 自立活動