メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

「土噚しかない」ずいう政治家が芋萜ずしおいるもの――博物通・人文知・囜民統合ずいう統治の基瀎条件


    導入 繰り返される蚀葉

    「土噚しかないような博物通に䟡倀があるのか」ずいう趣旚の蚀葉を、特定の発蚀者や個別斜蚭の評䟡から切り離しお考える。この皮の蚀葉は珍しくない。2017幎4月、圓時の地方創生担圓倧臣は文化財芳光をめぐるセミナヌで、芳光マむンドを持たない孊芞員を「䞀番のがん」ず呌び、各地の博物通関係者から批刀を受けた。[1] 2024幎7月、奈良県知事は県立民俗博物通の収蔵問題に぀いお、文化財に指定されおいない同皮の蟲機具を保管し続ける意味がどこにあるのかずいう議論から始める必芁があり、䟡倀のあるものだけを残しお廃棄凊分するこずも怜蚎せざるを埗ないず述べた。[2] これに察しお日本民具孊䌚は声明を出し、民具の䟡倀は䞀点の物にあるのではなく「矀ずしおの民具」を通しお地域瀟䌚の圚り方を明らかにできる点にあるず反論した。[3]

    「土噚しかない」「同じ蟲機具ばかり」「芳光マむンドがない」。衚珟は異なるが、同じ構造ず含意をも぀。博物通の䟡倀を、発蚀者が即座に理解できる効甚、すなわち来通者にずっおの芋栄えや芳光収入に還元し、収集・保存・研究・教育ずいう機胜を芖野から倖しおいる。しかもこれらの蚀葉は、私人の感想ではなく、予算ず制床を動かす立堎にある者の蚀葉ずしお発せられおいる。

    この構造は個人の倱蚀にずどたらず、制床の偎にも珟れ぀぀ある。2026幎2月27日、文郚科孊省は囜立矎術通、囜立文化財機構、囜立科孊博物通の次期䞭期目暙2026〜2030幎床を策定し、展瀺事業に察する自己収入の数倀目暙を蚭定した。文化庁は、展瀺収入が4割未満ずなるこずだけで盎ちに再線の察象ずなるわけではなく、再線は閉通を想定したものでもないず説明し、収集・保管、教育普及、調査研究の䞉業務には囜費を措眮するずしおいる。[4] しかしこの説明自䜓が、博物通の四぀の業務のうち展瀺だけを収支で枬るずいう枠組みを前提にしおいる。同幎3月31日には「博物通の蚭眮及び運営䞊の望たしい基準」が党郚改正され、資料管理の遞択肢ずしお亀換、譲枡、貞䞎、返华、廃棄等が明蚘された。文化庁の通知ず解説によれば、この改正は継承を原則ずし぀぀、廃棄を他の手段を怜蚎した䞊でなおやむを埗ない堎合の慎重な䟋倖ずしお䜍眮づけるものである。[5] 背景には収蔵庫の逌迫がある。日本博物通協䌚の2024幎床調査速報版、2026幎3月公衚では、本通収蔵庫が9割以䞊埋たっおいる通が39.3、入りきらない資料を抱える通が24.4、合わせお63.7に達した。[6]

    ぀たり「土噚しかない」ずいう蚀葉は、いた日本で、予算配分ず資料廃棄ずいう具䜓的な政策決定に倉換されうる䜍眮にある。問題は土噚の孊術的䟡倀を知らないこずだけではない。囜家行政がどのような前提の䞊で䜜動しおいるかに぀いおの理解が欠けおいる可胜性である。

    囜家は、皎法、予算、官僚制、譊察、裁刀所、防衛組織ずいった制床の総和だけでは䜜動しない。芋知らぬ他者を同じ政治共同䜓の成員ずしお扱い、䞀定の負担を匕き受け、共通の手続による決定に埓い、珟圚の利益だけでは回収できないものを将来䞖代ぞ枡すずいう継続的な協力が必芁になる。法はその協力を匷制できる。しかし、巚倧で耇雑な近代囜家の党掻動を、個々の行為に察する監芖ず制裁だけで維持するこずはできない。法の正統性、制床ぞの信頌、盞互性の芏範、政治共同䜓ぞの垰属意識が、匷制を補完する。[7]

    歎史、文化、教育、博物通を含む人文的制床は、囜民を単䞀の物語ぞ動員する宣䌝装眮ではない。異質な人々が共有できる参照枠を保存し、怜蚌し、異論に開き、䞖代を越えお曎新するこずによっお、政治共同䜓の自己理解を維持するむンフラの䞀郚である。この統合的機胜が匱れば、瀟䌚保障、城皎、民䞻的統治、危機察応、囜防を支える連垯ず正統性も無関係ではいられない。そしお政治家自身の暩嚁も、その政治共同䜓ず制床ぞの承認の䞊にしか成立しない。

    ただし、「博物通が䞀通閉じれば囜家が厩壊する」ずいう単玔な因果呜題ではない。囜民統合は倚数の制床、慣行、経隓によっお圢成される。博物通はその䞀郚であり、効果は斜蚭ごずに異なる。匷い囜民意識が垞に犏祉囜家や民䞻䞻矩を匷めるずいう実蚌的合意も存圚せず、囜民意識の内容によっおは排倖䞻矩や犏祉ショヌノィニズムを匷めるこずがある。[8] 必芁なのは、囜民統合の必芁性を認めながら、それを同質化や神話化ず区別するこずである。

    1 囜家行政には「協力の䜙剰」が必芁である

    囜家を匷制装眮ずしお捉える芋方には、歎史瀟䌚孊䞊の根拠がある。マックス・りェヌバヌは近代囜家を、䞀定の領域内で正圓な物理的暎力行䜿の独占を芁求する人間共同䜓ず定矩した。[9] チャヌルズ・ティリヌは、ペヌロッパの囜家圢成を戊争遂行、資源抜出、保護、囜家圢成の盞互䜜甚ずしお分析し、囜家を保護料を取り立おる組織になぞらえた。[10] 囜家が城皎し、匷制力を集䞭し、領域を統治しおきた歎史を考えれば、囜家の物理的基瀎を軜芖するこずはできない。

    しかし、成立した囜家が日垞的に䜜動する条件は、匷制力の存圚だけでは説明できない。トム・R・タむラヌの法遵守研究は、人々が法に埓う理由を制裁回避だけに還元せず、暩嚁の正統性や手続的公正の認識が自発的遵守に関係するこずを瀺した。[11] マヌガレット・レノィは、統治者が歳入を最倧化しようずする際に、監芖ず制裁の費甚を䞋げるために「準自発的遵守」に䟝存せざるを埗ないず論じた。準自発的ずいうのは、埓わなければ制裁があるずいう意味で玔粋に自発的ではないが、監芖されなくおも倧半の人が埓うずいう意味で自発的だからである。この遵守は、統治者が玄束を守るずいう予期ず、他の垂民も同様に負担しおいるずいう予期の二぀に条件づけられる。[12] レノィはのちにこれを「条件付き同意」ずしお䞀般化し、政府の信頌性、手続の公正さ、他者の遵守に぀いおの認識が垂民の同意を巊右するず論じた。[13]

    ここで生じる協力を「協力の䜙剰」ず呌ぶ。芳察される協力の総量を CC、監芖確率ず制裁の倧きさから合理的に予枬される協力の氎準を CeC_{e} ずすれば、䜙剰は次のように定矩できる。

    S=C−CeS = C - C_{e}

    SS が正であるずき、囜家は匷制によっお盎接生み出される以䞊の協力を埗おいる。この䜙剰は、善良さずいう心理的矎埳だけではない。囜家の実務胜力を構成する資源である。皎を払う、裁刀の䞍利な決定にも埓う、灜害時の制玄を受け入れる、公共財のために負担する、遞挙で敗れた偎も手続の結果を暫定的に受け入れる。こうした行為が党面的に匷制に䟝存しないこずが、制床を安定させる。ブレむスりェむトずレノィの線著が、皎、立法・叞法刀断の受容、瀟䌚政策、軍事目的ぞの支持たでを政府ず垂民の信頌関係の問題ずしお扱うのは、このためである。[14]

    2 皎制は「他者も負担する」ずいう予期に䟝存する

    䜙剰の存圚を最も明瞭に瀺すのは皎である。アリンガムずサンドモの叀兞的モデルでは、所埗 WW をも぀玍皎者が申告所埗 XX を遞ぶ。皎率を Ξ\theta、監査確率を pp、監査時に未申告所埗 W−XW - X に課される眰則率を π\pi ずすれば、玍皎者は次の期埅効甚を最倧化する。[15]

    E[U]=(1−p),U(W−ξX)+p,U(W−ξX−π(W−X))E[U] = (1 - p),U(W - \theta X) + p,U\bigl(W - \theta X - \pi (W - X)\bigr)

    このモデルでは、党額申告が最適になるのは pπ≥Ξp\pi \geq \theta のずきに限られる。監査確率ず眰則率の積が皎率を䞋回るなら、所埗の䞀郚を隠すこずが期埅効甚を高める。倚くの囜で監査確率は数パヌセント皋床であり、この条件を満たすには眰則率が皎率の数十倍に達しなければならない。珟実の制床はそのような眰則を課しおいないにもかかわらず、芳察される遵守率は、モデルが予枬する氎準を倧幅に䞊回る。アルム、マクレランド、シュルツはこの乖離を「なぜ人々は皎を払うのか」ずいう問いずしお定匏化した。[16] 以埌の皎行動研究は、眰則ず監査だけでは説明できない残䜙を「皎のモラル」ずしお扱い、政府ぞの信頌、手続の公正、他者の遵守に぀いおの認識、瀟䌚芏範がそれを構成するこずを瀺しおきた。[17]

    キルヒラヌらの「滑りやすい坂」の枠組みは、圓局の暩力による匷制的遵守ず、圓局ぞの信頌による自発的遵守を区別する。耇数囜での研究でも、高い信頌は自発的な玍皎遵守ず結び぀くこずが確認されおいる。[18] さらに公共財実隓は、倚くの人が「他者が協力するなら自分も協力する」ずいう条件付き協力者であるこずを瀺し、皎のモラルに぀いおも、他の玍皎者が正盎に申告しおいるず信じる人ほど自らも遵守する傟向が報告されおいる。[19] OECDも、皎務執行だけでなく、信頌、公正、玍付の容易さを通じた準自発的遵守の重芁性を敎理しおいる。[20]

    囜民統合は、ここで「愛囜心が匷ければ皎を払う」ずいう単玔な倉数ではない。玍皎者が皎を倖郚の暩力による収奪ずだけ芋るのか、自分も構成員である共同制床ぞの拠出ず理解できるのかずいう意味づけの条件に関わる。制床ぞの信頌が倱われ、他の集団はただ乗りしおいる、自分たちだけが損をしおいる、囜家は自分たちを代衚しおいない、ずいう認識が広がれば、協力は CeC_{e} に近い氎準たで萜ち蟌み、皎制の正統性は損なわれる。皎率、課皎ベヌス、城収技術は財政制床の盎接的構成芁玠である。しかし、その制床を瀟䌚がどの皋床自発的に支えるかは、公正、信頌、垰属、盞互性ずいった意味の䞖界に接続されおいる。囜家財政は数字で運営されるが、数字ぞの服埓を可胜にするのは数字だけではない。[21]

    3 再分配は、芋知らぬ他者を「完党な他人」にしない制床である

    瀟䌚保障制床は、囜民統合ず行政胜力の関係を最も芋えやすくする。再分配は、珟圚の自分ず盎接の亀換関係にない他者ぞ資源を移転する。高所埗者から䜎所埗者ぞ、健康な人から病気の人ぞ、珟圹䞖代から高霢者ぞ、子どものいない䞖垯から教育制床ぞ、灜害を免れた地域から被灜地域ぞず負担が移る。個々の移転に぀いお、支払者ず受益者が顔芋知りである必芁はない。

    デむノィッド・ミラヌは、近代囜家のように巚倧で匿名的な瀟䌚においお、共通のナショナル・アむデンティティが連垯を支え、集合行為、再分配的正矩、熟議的民䞻䞻矩を可胜にしうるず論じた。[22] ダ゚ル・タミヌルも、自由ず個人の自埋を重芖する自由䞻矩ず、垰属、忠誠、連垯を重芖するナショナルな結合が必ずしも䞡立䞍胜ではないず論じおきた。[23] T・H・マヌシャルの垂民暩論は、垂民的暩利、政治的暩利に加えお瀟䌚的暩利を近代垂民暩の構成芁玠ずしお捉え、瀟䌚保障が階玚の分断を共通の垂民資栌の䞋に包摂する過皋を描いた。[24]

    もっずも、この理論をそのたた実蚌的事実ず扱うこずはできない。カナダのデヌタを甚いたゞョンストン、バンティング、キムリッカ、゜ロカは、囜民的アむデンティティが犏祉囜家支持ず䞀定の関係を持぀䞀方、その䜜甚は自由䞻矩的ナショナリズムが想定するより狭く、囜ごずの歎史やナショナル・ナラティブに䟝存するず結論づけた。[25] 29のペヌロッパ諞囜を分析したラむトずリヌスケンスは、囜民的アむデンティティが䞀般的な再分配支持を䞀様に匷めるずはいえず、移民を排陀する犏祉ショヌノィニズムずの関係も瀺した。[26] ロススタむンずアスレむナヌは因果の向きを逆に芋お、平等な普遍的制床が瀟䌚的信頌を生み、腐敗ず䞍平等が信頌を砎壊するずいう経路を匷調した。[27] バンティングずキムリッカの線著は、倚様化する瀟䌚における連垯を、所䞎の感情ではなく政治的に構築されるものずしお扱い、包摂的な囜民的物語ず制床蚭蚈がその源泉になりうるず論じおいる。[28]

    これらの知芋は、囜民統合論を捚おる理由ではなく、䜕を統合ず呌ぶべきかを粟密にする理由である。必芁なのは「同じ血統の者だから助ける」ずいう閉鎖的連垯ではない。出自や宗教や生掻様匏が異なっおも、同じ法的・政治的共同䜓の察等な成員ずしお、制床的負担ず䟿益を共有するずいう垂民的な盞互承認である。囜民統合の質が重芁なのであり、ナショナルな感情の匷床ではない。囜民統合ず瀟䌚保障は、䞀方が原因で他方が結果ずいう盎線ではなく、盞互に再生産しうる埪環をなす。

    4 囜防は「䜕を共同で守るのか」ずいう問いを避けられない

    囜防では、この問題がさらに極端な圢で珟れる。防衛は財政負担だけでなく、堎合によっおは生呜・身䜓ぞの危険を含む。囜家が防衛組織を持ち、装備を調達し、指揮系統を敎備するだけでは、瀟䌚党䜓の防衛意思たで自動的に生たれるわけではない。

    レノィは城兵制の比范史研究で、垂民が城兵に応じるか、忌避や抵抗に向かうかが、政府の信頌性、負担配分の公正さ、他の垂民も応じおいるずいう認識に条件づけられおきたこずを瀺した。[29] むングルハヌト、プラネン、りェルツェルは䞖界䟡倀芳調査を甚いお、倚くの先進瀟䌚で「囜のために戊う意思」が長期的に䜎䞋しおきたこずを報告し、これを長い平和の個人レベルの基瀎ず解釈した。[30] 2026幎に瞄田健悟が同調査の第5波・第6波を甚いお行った倚氎準分析では、個人レベルの囜民的アむデンティティだけでなく、瀟䌚党䜓の集合的な囜民的アむデンティティも戊う意思ず正の関連を瀺した。[31] 台湟で調査実隓を行ったワンず゚ルデメルダシュは、他者も戊うず認識するこずが戊う意思を高め、その効果は囜民的アむデンティティの匱い人でむしろ匷いこずを芋出した。アむデンティティの匱い人ほど、他者の行動を蚈算に入れお自分の行動を決めるからである。[32]

    ここに、皎ず同じ構造が芋える。囜防に察する協力もたた、他者が協力するずいう予期に条件づけられおいる。ただし、これらの結果は「匷いナショナリズムほど望たしい」ずいう芏範的結論を意味しない。瞄田の論文自身が、集団レベルのアむデンティティず戊闘意思の結び぀きが戊争・玛争のマクロ過皋にも関係しうるず指摘しおいる。囜民統合は防衛胜力の資源になりうるず同時に、攻撃的動員の資源にもなりうる。

    民䞻囜家に必芁なのは、無限定の自己犠牲を芁求する囜民統合ではない。䜕を守るのか、誰を守るのか、どのような手続ず䟡倀を守るのかに぀いお、囜民が批刀的に共有できる政治的垰属である。人文知の圹割は、戊意を高揚させる神話の䟛絊ではない。戊争の蚘憶、加害ず被害、制床の成立史、地域の経隓を保存し、珟圚の囜家が䜕を継承し、䜕を拒吊するのかを考える材料を提䟛するこずである。

    5 政治家自身が囜民統合の受益者である

    この議論を政治家の偎から芋るず、皮肉な点に行き着く。政治家は囜民統合を䞊から囜民に䞎える存圚ではない。政治家自身が、囜民統合によっお公的暩嚁を䞎えられる受益者である。

    遞挙で圓遞した者の決定が、なぜその候補に投祚しなかった人にも䞀定の拘束力を持぀のか。法埋に曞かれおいるから、ずいう答えは䞀段目にすぎない。なぜ敗者もその法的手続を自分たちの共同的意思決定の仕組みずしお受け入れるのか。そこには、同じ政治共同䜓の構成員ずしお、䞀定の手続に埓っお共同事項を決めるずいう盞互承認がある。タむラヌの正統性研究が瀺すように、暩嚁は制裁胜力だけでなく、正圓に埓うべき暩嚁だずいう認識によっお実効性を埗る。[33]

    ベネディクト・アンダヌ゜ンは囜民を、成員の倧半が互いに䌚うこずのないたた、それでも䞀぀の共同䜓に属しおいるずいう像を抱く「想像の共同䜓」ず呌んだ。[34] ゚ルネスト・ルナンは1882幎の講挔で、囜民の存圚を「日々の人民投祚」になぞらえ、囜民ずは過去の共有ず珟圚の同意によっお絶えず曎新される意志であるず論じた。[35] 政治家が行䜿する暩限は、この想像ず同意の産物である。分解すれば、次のような䟝存関係になる。政治共同䜓ぞの垰属ず盞互承認があり、それが共通の憲法・法・手続の正統性を支え、それが遞挙結果ず公的決定の受容を可胜にし、そのうえで政治家は公的暩限を行䜿できる。もちろん珟実には逆方向の因果もある。公正で有胜な政治が制床ぞの信頌を高め、囜民統合を匷める。囜民統合ず、正統で有効な囜家制床ずは埪環をなす。

    歎史・文化・教育・博物通は、この埪環の党おを単独で生み出すわけではない。しかし、政治共同䜓が自分自身を時間の䞭で認識し、異なる成員が共有できる参照枠を持ち、その参照枠を批刀的に曎新するための制床矀の䞀郚である。それを「行政の本䜓ではない䜙剰」ずみなすこずは、囜家の䞊郚機構だけを芋お、それを支える瀟䌚的条件を捚象するこずである。

    6 統合は同質化ではない

    囜民統合ずいう語には危険がある。囜家が䞀぀の民族、䞀぀の歎史芳、䞀぀の文化を囜民に匷制するこずたで正圓化しかねないからである。アヌネスト・ゲルナヌは、産業瀟䌚が暙準化された「高文化」を必芁ずし、囜家がその文化を教育制床を通じお党成員に行き枡らせるこずでナショナリズムが成立するず論じた。[36] ホブズボヌムずレンゞャヌは、囜民の叀さを瀺すずされる儀瀌や䌝統の倚くが近代に創出されたこずを瀺した。[37] ルナンもたた、囜民の圢成には忘华が、しばしば歎史的誀謬が䞍可欠であり、統䞀は垞に暎力によっお成し遂げられおきたず述べおいる。[38] 囜民統合の装眮は、こうした同質化ず忘华の装眮ずしお働いおきた歎史をも぀。

    したがっお、ここでいう統合は同質化ず明確に区別されなければならない。第䞀に、統合されるべきなのは人々の文化的内容ではなく、政治的関係である。異なる宗教、地域、出自、歎史認識を持぀人々が、同じ制床の察等な構成員ずしお扱われるこずが䞭心になる。ハヌバヌマスが「憲法愛囜䞻矩」ず呌んだのは、民族的・文化的同質性ではなく、民䞻的な憲法原理ず手続ぞの垰属を栞にした政治的統合の構想である。[39] 第二に、共有される歎史は無謬の英雄譚ではない。加害、差別、内戊、怍民地䞻矩、政策倱敗を含め、蚌拠に基づいお蚂正可胜でなければならない。第䞉に、囜民統合は囜家ぞの無条件服埓ではない。暩力を批刀する暩利を共有するこずも、民䞻的統合の䞀郚である。

    この意味で、人文知の批刀機胜ず統合機胜は察立しない。ダン・アスマンは、集団の自己像を支える蚘憶のうち、日垞的な口承の範囲を越えお、文曞、蚘念物、儀瀌、制床に固定され、専門家によっお管理される蚘憶を「文化的蚘憶」ず呌んだ。[40] ピ゚ヌル・ノラは、生きた蚘憶が倱われた瀟䌚においお蚘憶が意識的に保存される堎所を「蚘憶の堎」ず呌び、アヌカむブや博物通をその代衚ずした。[41] 博物通は、ルナンのいう忘华に抗しお物蚌を保存する装眮である。郜合の悪い史料によっお囜民神話を壊すこずは、短期的には䞍和を生むこずがある。しかし、虚停を共有するこずより、異論を凊理する方法ず蚌拠ぞのアクセスを共有するこずの方が、民䞻的政治共同䜓には耐久性がある。統合の察象は「同じ答え」ではなく、「同じ公共䞖界で答えを争う関係」である。

    7 土噚は䜕を蚌蚀するのか

    人文知をただ「昔のこずを知る知識」ず定矩するず、博物通や考叀孊は行政の呚瞁に芋える。しかし人文知には別の機胜がある。異なる時間、地域、階局、制床、䟡倀を、䞀぀の因果モデルぞ乱暎に還元せず、それらの関係を蚘述し、意味づけ、比范し、批刀可胜な圢で接続する機胜である。土噚はその具䜓䟋ずしお適しおいる。

    䞀片の土噚は物質ずしおは焌成された粘土である。しかし、出土局䜍、型匏、補䜜技法、付着物、呚蟺遺物、幎代枬定、地域分垃ず接続されるこずで、人間行動に぀いおの蚌拠になる。ここで決定的なのは、その蚌拠力が䞀点の土噚にではなく、土噚の矀に宿るずいう点である。型匏線幎は、倚数の類䌌した個䜓の埮现な差異を比范するこずで初めお成立する。䞀点の完圢品がどれほど矎しくおも、それだけでは幎代も分垃も分からない。日本民具孊䌚が民具に぀いお「矀ずしおの䟡倀」を䞻匵したのず同じ論理が、土噚にはより匷く圓おはたる。[3] 「同じような土噚ばかり」ずいう印象は、資料の無䟡倀を瀺すのではなく、比范を可胜にする系列が保存されおいるこずを瀺しおいる。

    近幎の分析化孊はこの点を実蚌しおいる。2013幎の研究は、日本列島の瞄文草創期、およそ1侇5千幎前から1侇1千幎前の土噚に付着した炭化物の脂質・安定同䜍䜓分析から、最叀玚の土噚が氎産資源の調理に䜿われおいたこずを瀺した。[42] 2016幎の研究は、日本列島各地から出土した143個䜓の土噚の脂質分析によっお、草創期以降およそ9千幎にわたり土噚が䞻に氎産資源の調理に甚いられ続けたこずを明らかにした。[43] 2019幎にはペヌロッパ先史時代の小型泚口土噚に残った脂質から、乳幌児に反芻動物の乳を䞎えおいたこずが瀺され、[44] 2020幎には土噚に吞収された食物脂質䞭の特定脂肪酞を甚いお土噚そのものを攟射性炭玠幎代枬定する方法が報告された。[45] 2025幎には、蟲耕開始期の日本列島ず朝鮮半島の土噚の脂質を比范し、朝鮮半島ではキビが広く調理されおいたのに察しお同時期の日本列島の土噚からはそれが怜出されないずいう調理䌝統の差異が報告されおいる。[46]

    これらの研究の分析察象は、その倚くが新たな発掘ではなく、過去の調査で出土し、各地の収蔵斜蚭に保管されおきた資料である。発掘圓時には存圚しなかった方法が、保存されおいた土噚から新しい蚌拠を匕き出した。ここには経枈孊でいう準オプション䟡倀の構造がある。アロヌずフィッシャヌは、将来の情報が䞍確実であるずき、䞍可逆的な開発を留保するこずにはそれ自䜓の䟡倀があるず論じた。[47] 資料の廃棄は䞍可逆であり、将来の分析方法は䞍確実である。したがっお、珟圚の尺床で䟡倀付けできない資料を保存するこずは、感傷ではなく、䞍確実性䞋の合理的な留保である。日本民具孊䌚の声明が、珟圚䟡倀付けができおいない民具に぀いおも、研究が進展した時に未来の䜏民が新しい知芋を匕き出せるず述べたのは、この論理である。[3]

    日本の土噚資料がどこから来るかも、刀断に関わる。文化財保護法は、呚知の埋蔵文化財包蔵地で土朚工事等を行う堎合の届出ず、必芁に応じた発掘調査を定めおいる。文化庁によれば、開発や宅地化に䌎い党囜で幎間9千件皋床の発掘調査が行われおいる。[48] 考叀資料のなかで量的に最も倚いのは通垞、土噚や陶磁噚であり、[49] それらは地方公共団䜓の収蔵斜蚭に集積される。「土噚しかない」博物通の土噚の倚さは、斜蚭の貧しさではなく、法制床が半䞖玀以䞊にわたっお生産しおきた蚌拠の量を反映しおいる。その量が収蔵庫を圧迫しおいるのは事実であり、文化庁が2026幎に資料管理の遞択肢を敎理したのもそのためである。しかし、圧迫の解決を「䟡倀がない」ずいう刀断で代替するこずはできない。䜕を残し、䜕を手攟すかの刀断には、たず矀ずしおの䟡倀を評䟡する専門的䜜業が必芁であり、その䜜業を行う人員ず予算がなければ、廃棄は評䟡ではなく攟棄になる。

    人文知の統合は、物質を人間行動ぞ、人間行動を生掻様匏ぞ、生掻様匏を瀟䌚倉動ぞ、過去の瀟䌚倉動を珟圚の自己理解ぞ接続する。しかも、その接続は自由な物語ではなく、物蚌ず方法によっお反蚌可胜でなければならない。統合ずは、ばらばらの知識を䞀぀の結論ぞ抌し蟌むこずではない。異質な蚌拠の間にどこたで橋を架けられるか、どこから先は掚枬なのか、耇数の解釈が競合するずき䜕を根拠に遞ぶのかを明瀺する営みである。この胜力は政治にも必芁である。政治家は経枈孊者、考叀孊者、疫孊者、軍事専門家、法孊者のいずれでもない。それでも、それぞれの専門知が瀺す異なる事実ず䟡倀を、䞀぀の公共的刀断の堎ぞ持ち蟌たなければならない。

    8 博物通は瀟䌚の自己蚘述装眮である

    日本の博物通法は、2022幎の改正2023幎4月斜行で、その目的を瀟䌚教育法に加えお文化芞術基本法の粟神に基づくものずし、博物通が瀟䌚教育斜蚭ず文化斜蚭の双方の圹割を担うこずを明確にした。同時に、博物通の事業に資料のデゞタル・アヌカむブ化ず公開、他通ずの連携、地域の倚様な䞻䜓ずの連携・協力による文化芳光その他の掻動を通じた地域の掻力向䞊ぞの寄䞎を加えた。[50] 囜際博物通䌚議ICOMの2022幎定矩は、研究、収集、保存、解釈、展瀺に加え、教育、享受、省察、知識共有を掲げる。[51] UNESCOの2015幎勧告は、博物通ずコレクションを文化的・自然的蚌蚀を守る䞻芁な手段ず䜍眮づけ、教育、異文化間察話、瀟䌚的結束ずの関係を明蚘し、博物通の䞻芁機胜は玔粋に財務的な蚀葉では衚珟できないずしおいる。[52]

    この制床像から芋れば、展瀺宀に䜕皮類の物が䞊んでいるかだけで博物通の䟡倀を枬るこずは、察象の機胜を取り違えおいる。研究資料ずしおの保存、将来の再分析可胜性、地域史の蚘録、孊校教育ずの接続、異なる䞖代が同じ物蚌ぞアクセスできるこずは、展瀺品目数ずは別の䟡倀である。日本には瀟䌚教育調査䞊、博物通1,305通ず博物通類䌌斜蚭4,466通、合わせお5,700通を超える斜蚭があるが、博物通法䞊の登録博物通ず指定斜蚭は玄1,300通、党䜓の2割にすぎない。[53] 日本博物通協䌚の調査に基づく敎理によれば、兞型的な博物通は1979幎頃に建おられ、垞勀職員は3名うち孊芞員1名で、垞勀通長のいない通が4割、孊芞員のいない通が2割匱に䞊る。[54] 「土噚しかない」ず評される通の倚くは、こうした小芏暡斜蚭である。

    博物通孊は、博物通が䞭立的な倉庫ではなく、知識を遞択し線成する制床であるこずを論じおきた。アンダヌ゜ンは『想像の共同䜓』の改蚂版に「人口調査、地図、博物通」の章を加え、怍民地囜家がこの䞉぀の制床を通じお統治察象の想像の仕方を圢䜜り、それが独立埌の囜民囜家に継承されたこずを論じた。[55] トニヌ・ベネットは19䞖玀の公共博物通を、垂民を芏埋ある公衆ずしお圢成する装眮ずしお分析した。[56] フヌパヌグリヌンヒルは博物通が歎史的に知識の生産・線成に関䞎しおきたこずを怜蚎し、[57] カプラン線の論集は各囜の事䟋を通じお、博物通、コレクション、展瀺が囜民的・文化的アむデンティティの圢成ず争いの堎になっおきたこずを扱った。[58]

    日本の考叀孊ず博物通も䟋倖ではない。溝口孝叞は近代日本の考叀孊が囜民的アむデンティティの圢成ず倉容にどのように関䞎しおきたかを分析し、[59] フォヌセットやハド゜ンは瞄文や匥生をめぐる語りが日本人の起源論ず結び぀いおきた過皋を論じおいる。[60] 岡本倪郎が1952幎に「瞄文土噚論」を発衚し、それたで矎術史の倖にあった瞄文土噚を日本の造圢の根源ずしお䜍眮づけたこずは、土噚が囜民の自己像の構成芁玠になった兞型䟋である。[61] 2021幎には「北海道・北東北の瞄文遺跡矀」が䞖界遺産に登録された。[62] 土噚は物質であるず同時に、政治共同䜓が自らの起源ず時間を語る玠材ずしお繰り返し甚いられおきた。だからこそ、その語りが物蚌に戻っお怜蚌できるこずが重芁になる。

    博物通の偎にも、この機胜を自芚した系譜がある。䌊藀寿朗は、宝物の保存を目的ずする第䞀䞖代、公開を目的ずする第二䞖代に続いお、垂民の参加ず地域課題の解決を軞にする第䞉䞖代の博物通を構想し、地域博物通論を提瀺した。[63] 金子淳は日本の博物通の制床史を政治的文脈の䞭で怜蚎した。[64] 博物通は、共同䜓に䞀぀の正解を教え蟌む装眮である必芁はない。共同䜓が自分自身に぀いお語る際に、勝手な物語だけでなく、保存された物蚌ぞ戻るこずを可胜にする装眮である。共有されるのは結論ではなく、参照可胜な蚌拠ず、それをめぐっお議論する公共空間である。

    9 「土噚しかない」ずいう認識の様匏

    「土噚しかない」ずいう蚀葉の誀りは、土噚の䟡倀を過小評䟡したこずだけではない。䟡倀を、発蚀者自身が即座に理解できる効甚ぞ瞮枛しおいるこずにある。ゞェヌムズ・C・スコットは、近代囜家が瀟䌚を統治するために、耇雑な珟実を蚈枬・比范可胜な圢に単玔化する「可読性」を远求し、その単玔化が珟地の実践知を芋萜ずしお倱敗を招いおきたこずを論じた。[65] マむケル・パワヌは、怜蚌の儀瀌ずしおの監査が組織の目的そのものを監査可胜なものぞ倉圢させる「監査瀟䌚」を描いた。[66] 展瀺事業の自己収入比率ずいう指暙は、この可読性の䞀圢態である。指暙自䜓が誀りなのではない。指暙に映らないものを存圚しないものずしお扱う認識の様匏が問題なのである。

    文化的䟡倀の枬定をめぐる研究は、この問題に長く取り組んできた。英囜の芞術・人文孊研究䌚議による文化的䟡倀プロゞェクトは、経枈的むンパクトぞの還元を批刀し、個人の経隓、省察、垂民性の圢成ずいった次元を含めた評䟡枠組みを提瀺した。[67] ホヌルデンは、文化の䟡倀を本質的䟡倀、道具的䟡倀、制床的䟡倀に区別し、政策が道具的䟡倀の枬定に偏るこずで文化政策の正統性が危機に陥るず論じた。[68] 日本の文化芞術基本法の前文も、文化芞術が人々の心の぀ながりや盞互理解の土壌を提䟛し、倚様性を受け入れる瀟䌚を圢成するずずもに、それぞれの囜や時代における囜民共通のよりどころ、自己認識の基点ずなるこずを述べおいる。[69] 2002幎の文化芞術振興の基本方針も、文化が人ず人を結び付け、盞互理解ず尊重の土壌を提䟛し、協働し共生する瀟䌚の基盀ずなるず䜍眮づけおいた。[70]

    これらの政策文曞を暩嚁ずしお無批刀に受け入れる必芁はない。しかし、日本の文化政策それ自䜓が、文化を嚯楜消費や芳光収入だけではなく、瀟䌚の結合ず自己認識に関わるものずしお制床化しおきたこずは確認できる。文化政策を担圓する政治家がこの次元を無芖するなら、単に文化奜きではないのではなく、自らが運甚する制床の目的を理解しおいないこずになる。人文的制床の統合機胜は、経枈、犏祉、防衛ずは別の棚に眮かれた「文化郚門」の特殊利益ではない。経枈政策が誰の繁栄を目的ずするのか、犏祉制床がなぜ芋知らぬ他者を支えるのか、防衛が䜕を守るのか、教育が䜕を次䞖代ぞ枡すのかずいう問いは、政治共同䜓の自己理解なしには答えられない。

    10 政治家に芁求されるのは専門知の所有ではなく統合胜力である

    政治家は考叀孊者である必芁はない。土噚の型匏線幎を知らないこず自䜓は、政治的倱栌ではない。政治家はあらゆる専門領域に぀いお専門家より無知であるこずを避けられない。だからこそ政治家の職胜は、個別専門知を所有するこずではなく、自分の尺床では枬れない䟡倀が存圚するこずを認識し、専門家、垂民、圓事者から知識を集め、異なる䟡倀を比范し、決定理由を公共的に説明するこずにある。

    「自分には䟡倀が分からない」ず「䟡倀がない」は異なる。「自分は利甚しない」ず「瀟䌚に必芁ない」も異なる。「来通者が少ない」ず「収蔵資料が無䟡倀」も異なる。「斜蚭運営に改善䜙地がある」ず「保存・研究・教育機胜を廃止すべき」も異なる。政治刀断ずは、この区別を保ったたた、費甚ず䟿益、䞍可逆性、代替案を比范するこずである。

    土噚䞭心の博物通に぀いおも、維持が垞に正解ずは限らない。来通者が極端に少ない、保存環境が悪い、研究利甚がない、近隣斜蚭ずの統合で機胜を高められる、建物維持費が過倧である、ずいった事情があれば、再線、共同運営、移管、展瀺瞮小、デゞタル化を䌎う集玄は合理的な遞択肢になりうる。奈良県が民俗資料に぀いお有識者委員䌚を蚭けお収集・保存のルヌルを策定し、資料の䞉次元デゞタル蚘録ず譲枡先の探玢を経お廃棄を最埌の遞択肢ずする方針を瀺したのは、知事の圓初の発蚀から手続ぞず議論が移った䟋である。[71] 2026幎の望たしい基準も、資料管理の怜蚎に圓たっお倚様な関係者の意芋を聎き、手続の透明性を確保し、廃棄は他の手段を怜蚎した䞊で慎重に行うこずを求めおいる。[5] ぀たり囜家の制床自身が、「土噚しかない」ずいう印象だけでは廃棄の理由にならないこずを認めおいる。

    刀断には、資料䟡倀、研究可胜性、教育効果、地域的圹割、代替保存先、移行費甚を調べる必芁がある。「土噚しかない」は、そのどれに぀いおも情報を䞎えない。ここに政治家の発蚀ずしおの深刻さがある。私人が「壺ばかりで退屈だった」ず蚀うなら趣味の衚明で終わる。政治家は予算、制床、郜垂蚈画、教育、文化財保護を通じお、自分が理解できない䟡倀を瀟䌚から消滅させうる䜍眮にいる。知識䞍足が政策決定ぞ倉換される暩限を持぀者には、無知そのものよりも、無知を自芚しお補正する制床的態床が芁求される。

    結論 「土噚しかない」ずいう蚀葉が露呈する囜家芳

    「土噚しかない」ずいう蚀葉は、研究䟡倀、教育䟡倀、歎史的䟡倀、地域的䟡倀、将来の再分析可胜性、瀟䌚的蚘憶、公共的議論の基盀ずいった異なる䟡倀を、䞀぀の目先の尺床で切断する。政治ずは、本来その逆の仕事である。通玄しきれない耇数の䟡倀を認識し、専門知を接続し、費甚ず䞍可逆性を比范し、異なる人々が受け入れうる理由を組み立おる。人文知の統合的機胜は、その政治的胜力ず深く同型である。

    囜家は官僚機構だけでは動かない。瀟䌚保障は、芋知らぬ他者ぞの再分配を正圓化する連垯なしには脆くなる。皎制は、匷制力だけでなく、公正ず信頌ず盞互性に支えられる。民䞻的統治は、敗者も手続を受け入れる正統性を必芁ずする。囜防は、䜕を共同で守るのかずいう政治共同䜓の自己理解を避けられない。そしお政治家の暩嚁そのものが、同じ共同䜓の成員ずしお共通の制床に埓うずいう囜民盞互の承認に䟝存する。

    だから、人文的制床を「圹に立たないもの」ずしお軜芖する政治家の問題は、文化ぞの趣味が乏しいこずではない。囜家行政の前提にある瀟䌚的・歎史的・象城的な基盀を、自分が盎接扱う予算や法什ずは別物だず誀認するこずにある。土噚の䟡倀が分からないこずが問題なのではない。政治家でありながら、囜家は皎法ず予算曞ず官僚機構だけで成立しおいるのではなく、芋知らぬ他者を同じ政治共同䜓の成員ずしお認め、負担ず䟿益ず蚘憶ず未来を共有しようずする囜民統合の䞊に成立しおいるこず、そしお歎史・文化・教育・博物通を含む人文的制床が、その統合を圢成し、怜蚌し、批刀し、䞖代を越えお曎新するむンフラの䞀郚であるこずを理解しないこずが問題なのである。その基盀がなければ、瀟䌚保障も城皎も囜防も民䞻的統治も長期には支えられない。いわんや、その統合によっお暩嚁を䞎えられおいる政治家自身も。

    èš»

    [1] 北海道博物通協䌚「「䞀番のがんは孊芞員」発蚀ぞの反論【䌚長によるメッセヌゞ】」2017幎。発蚀は2017幎4月16日、滋賀県倧接垂で開かれたセミナヌにおける山本幞䞉地方創生担圓倧臣圓時のもの。https://www.hkma.jp/information/1147

    [2] 奈良新聞デゞタル「奈良県立民俗博物通巡る山䞋知事発蚀受け、日本民具孊䌚が声明 「安易な䞀括廃棄」懞念 「矀ずしお䟡倀」ず指摘」2024幎7月19日。https://www.nara-np.co.jp/news/20240719213018.html 知事の2024幎7月10日定䟋蚘者䌚芋における発蚀は、奈良県立民俗博物通『研究玀芁』第25号2025幎にも匕甚されおいる。https://www.pref.nara.lg.jp/documents/6567/20251104142044.pdf

    [3] 日本民具孊䌚「民具有圢民俗文化財の廃棄問題に察する声明」2024幎7月18日。https://www.mingu-gakkai.com/seimei_20240718.php 声明の芁旚は前掲蚻[2]の奈良新聞蚘事による。

    [4] 文化庁「囜立博物通・囜立矎術通の次期䞭期目暙に぀きたしお」。https://www.bunka.go.jp/bunkacho/shokan_hojin/94340601.html 䞭期目暙は2026幎2月27日に文郚科孊省が策定。同ペヌゞで文化庁は、自己収入の数倀目暙を展瀺事業のみに蚭定するこず、展瀺収入が4割未満ずなるこずだけをもっお盎ちに「再線」の察象ずするものではないこず、「再線」は閉通を想定しおいないこずを説明しおいる。

    [5] 「博物通の蚭眮及び運営䞊の望たしい基準の党郚を改正する告瀺」什和8幎文郚科孊省告瀺第69号、2026幎3月31日公垃・斜行。文化庁「博物通の蚭眮及び運営䞊の望たしい基準の党郚を改正する告瀺什和8幎文郚科孊省告瀺第69号に぀いお」。https://www.bunka.go.jp/seisaku/bijutsukan_hakubutsukan/shinko/kankei_horei/94355301.html 資料管理の遞択肢ず廃棄の䜍眮づけに぀いおは、文化庁通知を螏たえた解説ずしお、特定非営利掻動法人文化財保管掻甚支揎機構「博物通の「望たしい基準」に「廃棄」が明蚘 先に問うべき管理の課題」2026幎4月2日を参照。https://cpsus.org/column/museum-standards-disposal-kijun/

    [6] 公益財団法人日本博物通協䌚『什和6幎床 日本の博物通総合調査 調査結果の抂芁速報版』2026幎3月30日。察象4,368斜蚭、回答2,507斜蚭。https://www.j-muse.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/R6_Sougouchousa_sokuhou.pdf

    [7] Tom R. Tyler, Why People Obey the Law, Yale University Press, 1990Princeton University Press, 2006幎版; Valerie Braithwaite and Margaret Levi eds., Trust and Governance, Russell Sage Foundation, 1998.

    [8] Matthew Wright and Tim Reeskens, "Of what cloth are the ties that bind? National identity and support for the welfare state across 29 European countries," Journal of European Public Policy, 20(10), 2013, pp. 1443–1463, DOI: 10.1080/13501763.2013.800796.

    [9] Max Weber, "Politik als Beruf," 1919脇圭平蚳『職業ずしおの政治』岩波文庫、1980幎.

    [10] Charles Tilly, "War Making and State Making as Organized Crime," in Peter B. Evans, Dietrich Rueschemeyer and Theda Skocpol eds., Bringing the State Back In, Cambridge University Press, 1985, pp. 169–191.

    [11] Tyler, Why People Obey the Law; Tom R. Tyler, "The Psychology of Legitimacy: A Relational Perspective on Voluntary Deference to Authorities," Personality and Social Psychology Review, 1(4), 1997, pp. 323–345.

    [12] Margaret Levi, Of Rule and Revenue, University of California Press, 1988.

    [13] Margaret Levi, Consent, Dissent, and Patriotism, Cambridge University Press, 1997; Margaret Levi, "A State of Trust," in Braithwaite and Levi eds., Trust and Governance.

    [14] Braithwaite and Levi eds., Trust and Governance.

    [15] Michael G. Allingham and Agnar Sandmo, "Income Tax Evasion: A Theoretical Analysis," Journal of Public Economics, 1(3–4), 1972, pp. 323–338.

    [16] James Alm, Gary H. McClelland and William D. Schulze, "Why Do People Pay Taxes?" Journal of Public Economics, 48(1), 1992, pp. 21–38.

    [17] Erzo F. P. Luttmer and Monica Singhal, "Tax Morale," Journal of Economic Perspectives, 28(4), 2014, pp. 149–168.

    [18] Erich Kirchler, Erik Hoelzl and Ingrid Wahl, "Enforced versus voluntary tax compliance: The 'slippery slope' framework," Journal of Economic Psychology, 29(2), 2008, pp. 210–225, DOI: 10.1016/j.joep.2007.05.004; Christoph Kogler et al., "Trust and power as determinants of tax compliance: Testing the assumptions of the slippery slope framework in Austria, Hungary, Romania and Russia," Journal of Economic Psychology, 34, 2013, pp. 169–180, DOI: 10.1016/j.joep.2012.09.010.

    [19] Urs Fischbacher, Simon GÀchter and Ernst Fehr, "Are people conditionally cooperative? Evidence from a public goods experiment," Economics Letters, 71(3), 2001, pp. 397–404; Bruno S. Frey and Benno Torgler, "Tax morale and conditional cooperation," Journal of Comparative Economics, 35(1), 2007, pp. 136–159.

    [20] OECD, Tax Morale: What Drives People and Businesses to Pay Tax?, OECD Publishing, 2019.

    [21] John G. Cullis and Alan Lewis, "Why people pay taxes: From a conventional economic model to a model of social convention," Journal of Economic Psychology, 18(2–3), 1997, pp. 305–321.

    [22] David Miller, On Nationality, Oxford University Press, 1995富沢克ほか蚳『ナショナリティに぀いお』颚行瀟、2007幎. ずくに囜民的連垯、集合行為、再分配、熟議民䞻䞻矩の関係に぀いおは同曞第4章。

    [23] Yael Tamir, Liberal Nationalism, Princeton University Press, 1993抌村高ほか蚳『リベラルなナショナリズムずは』倏目曞房、2006幎; Yael Tamir, Why Nationalism, Princeton University Press, 2019.

    [24] T. H. Marshall, Citizenship and Social Class and Other Essays, Cambridge University Press, 1950T・H・マヌシャル、トム・ボットモア、岩厎信圊・䞭村健吟蚳『シティズンシップず瀟䌚的階玚』法埋文化瀟、1993幎.

    [25] Richard Johnston, Keith Banting, Will Kymlicka and Stuart Soroka, "National Identity and Support for the Welfare State," Canadian Journal of Political Science, 43(2), 2010, pp. 349–377.

    [26] 前掲蚻[8]。

    [27] Bo Rothstein and Eric M. Uslaner, "All for All: Equality, Corruption, and Social Trust," World Politics, 58(1), 2005, pp. 41–72.

    [28] Keith Banting and Will Kymlicka eds., The Strains of Commitment: The Political Sources of Solidarity in Diverse Societies, Oxford University Press, 2017.

    [29] Levi, Consent, Dissent, and Patriotism.

    [30] Ronald F. Inglehart, Bi Puranen and Christian Welzel, "Declining willingness to fight in wars: The individual-level basis of the long peace," Journal of Peace Research, 52(4), 2015, pp. 418–434.

    [31] Kengo Nawata, "Contextual Effects of National Identity on Willingness to Fight: A Multilevel Analysis Using the World Values Survey," European Journal of Social Psychology, 56(3), 2026, pp. 537–550, DOI: 10.1002/ejsp.70060.

    [32] Austin Horng-En Wang and Nadia Eldemerdash, "National identity, willingness to fight, and collective action," Journal of Peace Research, 2023, DOI: 10.1177/00223433221099058.

    [33] Tyler, Why People Obey the Law正統性ず遵守に関する諞章.

    [34] Benedict Anderson, Imagined Communities: Reflections on the Origin and Spread of Nationalism, revised edition, Verso, 1991癜石隆・癜石さや蚳『定本 想像の共同䜓』曞籍工房早山、2007幎.

    [35] Ernest Renan, "Qu'est-ce qu'une nation?"1882幎3月11日、゜ルボンヌ講挔鵜飌哲蚳「囜民ずは䜕か」、E・ルナンほか『囜民ずは䜕か』むンスクリプト、1997幎所収.

    [36] Ernest Gellner, Nations and Nationalism, Blackwell, 1983加藀節監蚳『民族ずナショナリズム』岩波曞店、2000幎.

    [37] Eric Hobsbawm and Terence Ranger eds., The Invention of Tradition, Cambridge University Press, 1983前川啓治・梶原景昭ほか蚳『創られた䌝統』玀䌊國屋曞店、1992幎.

    [38] 前掲蚻[35]。

    [39] JÃŒrgen Habermas, "Citizenship and National Identity," in Between Facts and Norms: Contributions to a Discourse Theory of Law and Democracy, trans. William Rehg, MIT Press, 1996, Appendix II.

    [40] Jan Assmann, "Collective Memory and Cultural Identity," New German Critique, 65, 1995, pp. 125–133.

    [41] Pierre Nora, "Between Memory and History: Les Lieux de Mémoire," Representations, 26, 1989, pp. 7–24.

    [42] O. E. Craig et al., "Earliest evidence for the use of pottery," Nature, 496, 2013, pp. 351–354, DOI: 10.1038/nature12109.

    [43] A. Lucquin et al., "Ancient lipids document continuity in the use of early hunter–gatherer pottery through 9,000 years of Japanese prehistory," Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(15), 2016, pp. 3991–3996, DOI: 10.1073/pnas.1522908113.

    [44] J. Dunne et al., "Milk of ruminants in ceramic baby bottles from prehistoric child graves," Nature, 574, 2019, pp. 246–248, DOI: 10.1038/s41586-019-1572-x.

    [45] Emmanuelle Casanova et al., "Accurate compound-specific 14C dating of archaeological pottery vessels," Nature, 580, 2020, pp. 506–510, DOI: 10.1038/s41586-020-2178-z.

    [46] "Lipid residue analysis reveals divergent culinary practices in Japan and Korea at the dawn of intensive agriculture," Proceedings of the National Academy of Sciences, 2025, DOI: 10.1073/pnas.2504414122. 著者名および巻号は未確認。

    [47] Kenneth J. Arrow and Anthony C. Fisher, "Environmental Preservation, Uncertainty, and Irreversibility," Quarterly Journal of Economics, 88(2), 1974, pp. 312–319.

    [48] 文化庁「埋蔵文化財」「党囜で幎間9千件皋床の発掘調査」。https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/maizo.html 統蚈の詳现は文化庁文化財第二課『埋蔵文化財関係統蚈資料――什和6幎床――』2025幎3月。届出および発掘調査の制床は文化財保護法昭和25幎法埋第214号第6章「埋蔵文化財」による。

    [49] 埳島県立博物通「土噚・陶磁噚に぀いお」2024幎5月24日。http://museum.bunmori.tokushima.jp/newgakugei/ooshio/koukokobanashi/kk202405242.html

    [50] 博物通法昭和26幎法埋第285号。博物通法の䞀郚を改正する法埋什和4幎法埋第24号、2023幎4月1日斜行による改正埌の第1条および第3条。改正の抂芁は、文化庁「博物通法改正ずこれからの博物通」第70回党囜博物通倧䌚資料、2022幎11月16日https://www.j-muse.or.jp/02program/pdf/bunkachouforum.pdf、および文化庁博物通総合サむト「博物通法ずは」https://museum.bunka.go.jp/museum/act/ を参照。

    [51] International Council of Museums, "Museum Definition," adopted 24 August 2022. https://icom.museum/en/resources/standards-guidelines/museum-definition/

    [52] UNESCO, Recommendation concerning the Protection and Promotion of Museums and Collections, their Diversity and their Role in Society, adopted 17 November 2015. https://www.unesco.org/en/legal-affairs/recommendation-concerning-protection-and-promotion-museums-and-collections-their-diversity-and-their

    [53] 文郚科孊省「什和3幎床瀟䌚教育調査」2021幎10月1日珟圚。https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa02/shakai/gaiyou/chousa/1268405.htm 登録博物通・指定斜蚭の比率に぀いおは文化庁博物通総合サむト「博物通に぀いお」。https://museum.bunka.go.jp/museum/

    [54] 䞀般財団法人地域創造「制䜜基瀎知識シリヌズVol.52 博物通法改正」。https://www.jafra.or.jp/library/letter/backnumber/2022/333/4/1.html 日本博物通協䌚の総合調査に基づく敎理ずしお、䞻たる斜蚭の建蚭幎の平均倀1979幎、垞勀職員数3名、垞勀通長のいない斜蚭40.5、孊芞員のいない斜蚭16.5を挙げる。

    [55] Anderson, Imagined Communities, revised edition, Chapter 10 "Census, Map, Museum."

    [56] Tony Bennett, The Birth of the Museum: History, Theory, Politics, Routledge, 1995.

    [57] Eilean Hooper-Greenhill, Museums and the Shaping of Knowledge, Routledge, 1992.

    [58] Flora E. S. Kaplan ed., Museums and the Making of "Ourselves": The Role of Objects in National Identity, Leicester University Press, 1994.

    [59] Koji Mizoguchi, Archaeology, Society and Identity in Modern Japan, Cambridge University Press, 2006.

    [60] Clare Fawcett, "Archaeology and Japanese Identity," in Donald Denoon, Mark Hudson, Gavan McCormack and Tessa Morris-Suzuki eds., Multicultural Japan: Palaeolithic to Postmodern, Cambridge University Press, 1996; Mark J. Hudson, Ruins of Identity: Ethnogenesis in the Japanese Islands, University of Hawai'i Press, 1999.

    [61] 岡本倪郎「四次元ずの察話――瞄文土噚論」『みづゑ』1952幎2月号。

    [62] UNESCO World Heritage Centre, "Jomon Prehistoric Sites in Northern Japan," 2021幎登録。

    [63] 䌊藀寿朗『垂民のなかの博物通』吉川匘文通、1993幎。

    [64] 金子淳『博物通の政治孊』青匓瀟、2001幎。

    [65] James C. Scott, Seeing Like a State: How Certain Schemes to Improve the Human Condition Have Failed, Yale University Press, 1998.

    [66] Michael Power, The Audit Society: Rituals of Verification, Oxford University Press, 1997.

    [67] Geoffrey Crossick and Patrycja Kaszynska, Understanding the Value of Arts & Culture: The AHRC Cultural Value Project, Arts and Humanities Research Council, 2016.

    [68] John Holden, Cultural Value and the Crisis of Legitimacy: Why Culture Needs a Democratic Mandate, Demos, 2006.

    [69] 「文化芞術基本法」平成13幎法埋第148号、2017幎改正前文。https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/shokan_horei/kihon/geijutsu_shinko/kihonho_kaisei.html

    [70] 「文化芞術の振興に関する基本的な方針」平成14幎12月10日閣議決定。https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/hoshin/kihon_hoshin_1ji/index.html

    [71] 矎術手垖「奈良県立民俗博物通、玄4侇5000点の資料をデゞタル保存ぞ」。https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/29327 有識者委員䌚による収集・保存ルヌルの策定、3Dデゞタル保存、垂町村や民間ぞの譲枡先の探玢、譲枡先が芋぀からない堎合の廃棄ずいう手順が報じられおいる。

    あなたぞのおすすめ