
励まされて、迷うこと
文学フリマ東京42。
初めての出店。
「サークル」とは、なんぞや??
ひとりでもいいんだよね??
少数部数の製本。──それって、どこで頼めばいいの? どのくらい作ればいいの??
頭の中はハテナでいっぱい。
でも今の世の中、わからないことをなんでも教えてくれるチャッピーというヤツがいる。
あ、ありがてぇ。
仲間がいなくても、はじめてでも、ひとつひとつの準備が楽しい。
ダメで元々だと思っていたのに、自然と期待がふくらんでいく。
苦手なXで告知のポストを打つ。
普段は見向きもされないアカウントのポストに、いいねがつき、リポストされ、インプレッションが伸びていく。
お祭りムードの文フリ勢のフォローが伸びて、次第にこちらまでテンションが上がってくる。
普段感じることのない手応えがある。
もしかしたら私のブースにも人が来てくれるんじゃないか、足を止めてくれるんじゃないか。
淡い期待と、ほのかな不安。
ダメで元々。
でも、誰も足を止めてくれなかったら……?
前日の夜はあまり眠れなかった。
雨風がひどく、窓を開けられない。でも締め切っていると蒸し暑くて眠れない。
少し窓を開ける。すると、また唸りをあげた風が、バタンバタンとドアを打ち付ける。
緊張もあったのだろう。何度も寝返りを打ち、やっとうつらうつらしていたら朝になった。
眠気まなこをこすりながら電車に揺られ、息つく暇もないまま、人の流れの中に身を任せた。
娘が売り子で来てくれていたのに加え、開場早々、近くに住む旧友が足を運んでくれたので心強かったと思う。
コロナ禍以降会っていなかった彼女の顔を会場で見つけ、幼い頃から変わらないままの姿に緊張の糸が和らいだ気がする。
派手な売れ方はしなかった。
でも、Xやカタログを見て気になったと言ってくれた人がいた。ぽつりぽつりと足が止まり、知らない人たちと言葉を交わした。
途中、人の波が落ち着くと、途端にこれでいいのだろうかと不安がもたげた。
「この言葉がとても胸に残って」
と有難いお声をかけてくださった方に、
「次も出ますか?」
と聞かれたのに、即答できない自分がいた。
誰かに何かが届いたような実感があった。
でも、それはまだ曖昧で、掴もうとしたら消えてしまうんじゃないかとも思えた。
改善点もはっきり感じた。
次に出るなら、こうしたい、ああしたい。
でも、出るには時間も、費用も、熱意もいる。
無職で、子どもたちにもお金がかかる、シングルマザーの身で、次を夢見るのはおこがましいような気もしていた。
――
次回|普通のフリ
このエッセイは、note創作大賞2026への応募作品として、 無職の一年を18の物語で綴る連載です。
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