
AIへの聞き方は、最初の1文で決まる
「目的・対象・粒度を先に渡す」ことを知ってから、AIとの壁打ちは確かに変わりました。漠然とした答えしか返ってこなかったのが、少し「考える相手」に見えてきた。
でも、それでもまだ薄いと感じる瞬間があります。
あるとき、部門横断のプロジェクトで方針の優先順位を決めようとしていました。目的(方針の優先順位を揃える)、対象(製品部門と営業部門の調整範囲)、粒度(細かい手順ではなく方向性のレベル)を書いた。軸はそろえた。
返ってきたのは、「優先順位を揃えるには、まず各部門の目標を可視化し、整合を確認しましょう。次に調整の場を設けて合意形成を進めましょう」。
正しい。でも、一歩も前に進まない感じがしました。
軸を置くところまではできている。次に何が足りないのか、しばらく考えました。
問いにも、型がある
壁打ちの最初の1文を振り返ってみると、気づくことがあります。「この方針の優先順位をどう決めるか、一緒に整理してほしい」という投げ方をしていました。
「整理してほしい」は「まとめてくれ」と同じです。AIは言われた通りのことをした。
問題は、私が何を求めているかを、自分でも決めていなかったことです。
「もっと視野を広げたいのか」「絞り込みたいのか」「今の考えを確かめたいのか」。それによって、問い方は全然違う。
3種の問い
私は今、壁打ちを始めるとき、最初の1文を3種類のどれかで設計するようにしています。
発散型(広げる)
「見落としている論点があるとしたら、何だと思う?」
「別の切り口から見ると、この問題はどう見えるか?」
考えが一方向に固まっているとき、あるいはまだ何が問題かはっきりしないときに使います。視野を広げるための問いです。
収束型(絞る)
「今の話を一言で言うと、結局何の問題か?」
「この中で最も重要な1点を選ぶとしたら?」
論点が散らかってきたとき、「要するに何か」を引き出したいときに使います。発散の後に来ることが多い。
検証型(確かめる)
「この解釈に反論するとしたら、どんな反論が成り立つか?」
「この前提が崩れる条件はあるか?」
「これでいいかもしれない」と感じてきたとき、決断の前に使います。AIに反論させることで、自分の考えの穴を先に見つける。
使い分けの判断軸
どれを使うかは、今自分の思考がどこにいるかで決まります。
考えが散らかっていてまだまとまらない → 発散型
論点はある程度見えてきた → 収束型
「これでいこう」と思い始めた → 検証型
一度の壁打ちの中でも、発散から入って収束に変え、最後に検証する、という流れになることがよくあります。問いを変えるたびに、対話の質が変わります。
先ほどの方針の話に戻ります。あのとき私は「整理してほしい」という収束型の問いを投げていました。でも本当は、まだ「何が論点なのか」すら固まっていなかった。発散型から入るべきだったのです。
「製品部門と営業部門の優先順位のズレについて、私が見落としている論点があるとしたら何か?」に変えた途端、返ってきた内容が変わりました。「顧客からの要求と内部プロセスのどちらを先に立てるか、という議論が背後にあるかもしれません」という角度が出てきて、それがまさに私が言語化できていなかった核でした。
軸と問いは別もの
「思考OSの作り方」第3回で書いた目的・対象・粒度は、壁打ちの「枠」です。その枠の中で思考を動かすのが、問いの型です。
枠を用意しても、その中での動き方を知らなければ、枠は機能しません。発散・収束・検証の3種を使い分けることで、枠の内側での対話が初めて動き出します。
最初の1文を、「これはどの型か」と一度確かめてから壁打ちを始める。それだけで、対話の深さは変わります。
次回は、問いを投げた後の話です。「正しいけど浅い答えが返ってきたとき、どう動かすか」。対話の中盤をコントロールする技術を書きます。
あなたの思考OSに、今日のフレーム(発散・収束・検証)をインストールできたら。次回も届くよう、連載をフォローしておいてください。
📖 AIとの壁打ちで思考を深める作法(全4回)
第1回 AIへの最初の1文で、答えの質は決まる ← いまここ
第2回 AIの答えが「正しいけど浅い」ときの、3つの動かし方(8/4公開)
第3回 AIは自信を持って間違える ――出力を現場で検証する3問(8/8公開)
第4回 AIとの対話を、30分で「使える1枚」に変える手順(8/11公開)
▶ 先に読むなら:AIに壁打ちしても浅い答えしか返らない理由
このシリーズは、この記事の続きにあたります。「なぜ浅くなるのか」を先に読むと、今日の3種の問いがもっと効きます。
▶ 全4回をまとめて読む:マガジン「AIとの壁打ちで思考を深める作法」
会議や資料が毎回「迷子」になる方へ。姉妹シリーズもどうぞ。
▶ 思考OSの作り方(全5回・完結)
https://note.com/rioh_os/m/mc2e1d17acfee
▶ 論点ドリフトを止める技術(全4回・完結)
https://note.com/rioh_os/m/me85d5368e3da
どこから読むか迷ったら、この1本から。症状から選べるようにしてあります。
▶ 会議も資料も、毎回ゼロから考えていませんか ――「思考OS」入門
https://note.com/rioh_os/n/n226cb0de2fd8
▶ 次に読む:AIの答えが「正しいけど浅い」ときの、3つの動かし方
問いを設計しても、返ってくる答えが浅いことはあります。そこから動かす3手を書きました。