メインコンテンツへスキップ
見出し画像

脱線した会議を戻すより、冒頭の1文で防ぐ

    会議の冒頭、何を言えばいいかわからないまま「では始めましょう」と言ったことがある。そういう会議は、たいてい迷子になります。

    逆に、迷子にならない会議には共通点があります。始まる前に、誰かが3つのことを口に出している。

    今日はその3つの話です。

    3つの固定点と、PSGという名前

    会議や資料の冒頭に置くべき固定点が3つあります。この3つをまとめて私はPSGと呼んでいます。思考の地図、という意味で使っています。

    Purpose(目的):この場で何を決めるか、何を決めないか。
    「この会議は、〇〇を決めるためのものです」と一文で言える状態。意見を出す場なのか、決定する場なのか、共有する場なのかさえ合わせておかないと、参加者は別々の期待で席についています。

    Scope(対象):何を扱い、何を扱わないか。
    今日の議論に含まれる範囲と、含まれない範囲を先に宣言する。「海外拠点は今回の対象外です」「過去の事例は参考にとどめます」。Scopeを置くと、善意の脱線に「それは今日の範囲外です」と構造として返せます。

    Granularity(粒度):どのレベルの話をするか。
    方針を決める場なのか、手順を詰める場なのか。「方針レベルで合意できればOK、実装の詳細は持ち帰ります」と最初に言えると、抽象と具体の混在が起きにくくなります。

    使い方は、1文だけ

    PSGを置くというのは、長い前置きをするという意味ではありません。1文で足ります。

    「今日の会議の目的は〇〇の意思決定、対象はこの部門の今期分、粒度は方針レベルまでです」

    30秒かかりません。始める前にこれを口に出す、あるいは資料の冒頭の1枚に書いておく。それだけで、場の全員が同じ地図を持った状態で議論に入れます。

    最初は「こんな当たり前のことを言うのか」と思うかもしれません。私もそう思っていました。でも実際にやってみると、思った以上に場が変わりました。

    やってみた日のこと

    PSGを意識して使い始めた最初の会議のことを覚えています。

    案件の優先順位を整理する場でした。参加者は5人、全員が担当案件を持っていて利害も少しずつ違う。以前の同じような会議は、毎回2時間超えで終わっていました。

    その日、会議を始める前に1枚目のスライドにこう書きました。

    目的:今期の案件を3段階に分類し、リソース配分の優先順位を合意する
    対象:この部門の今期案件(全15件)、来期以降は含まない
    粒度:「優先高・中・低」の3区分まで。詳細スケジュールはこの場では決めない

    これを最初に読み上げて、全員に確認しました。

    ある参加者が「来期の案件はどうするんですか」と聞きました。「今日の対象外です。別途設定します」と返しました。話が流れませんでした。

    別の参加者が「Aプロジェクトのマイルストーンを確認したい」と言いました。「それは詳細スケジュールの話なので、今日の粒度からは外れます。個別で調整しましょう」と返しました。また、流れませんでした。

    会議は1時間10分で終わりました。決まったことが3つ、持ち帰りが2つ、という明確な状態で。

    PSGが効いたのは、発言を抑制したからではありません。「それは今日の話ではない」と返す根拠が、全員に共有された状態になったからです。感情的なジャッジではなく、最初に置いた地図に照らした確認として機能しました。

    なぜ効くのか

    PSGを置くのは、会議に制約をかけることではありません。「この地図の上で話しましょう」という合意を作ることです。

    論点ドリフト(会議の論点が気づかないうちに別の場所に移動する現象)は、地図がないから起きます。目的地が書かれていない会議では、話は重力に従って流れていきます。参加者は悪意なく、自分の関心に引っ張られて発言する。それが積み重なって、気づいたら別の場所にいる。(論点ドリフトの3パターンは第1回に書きました。末尾のリンクからどうぞ。)

    地図があると、ドリフトが始まりかけたとき「これは地図の外の話だ」と全員が気づける。一人が抑え込むのではなく、構造が整理する。


    目的・対象・粒度を1文で言えないとき、議論はまだ始められません。逆に言えば、この1文が出た瞬間から、会議はすでに半分終わっています。

    次の会議の前に、30秒だけ「今日の目的・対象・粒度は何か」を自分に問いかけてみてください。場の動き方が変わります。

    次回は「誰のための場か」を固定するペルソナ固定の技術を書きます。

    次回も届くように、この連載をフォローしておいてください。あなたの会議に、今日の1文をインストールできたら。


    📖 論点ドリフトを止める技術(全4回)

    • 第1回 会議で何も決まらないのは、なぜか ――「論点ドリフト」という正体

    • 第2回 会議が脱線するのを、冒頭の1文で防ぐ ← いまここ

    • 第3回 「わかりやすい資料」が作れないのは、なぜか ――受信者を先に決める

    • 第4回 資料やメールが一発で伝わらないのは、なぜか ――送る前の3つの問い

    ▶ 次に読む:第3回「「わかりやすい資料」が作れないのは、なぜか ――受信者を先に決める」

    https://note.com/rioh_os/n/nc234ec648e38

    ▶ 全4回をまとめて読む:マガジン「論点ドリフトを止める技術」

    https://note.com/rioh_os/m/me85d5368e3da

    はじめての方へ。当メディアで最も読まれている記事はこちらです。
    ▶ AIに壁打ちしても浅い答えしか返らない理由
    https://note.com/rioh_os/n/nd0bb2166f141
    姉妹シリーズ「思考OSの作り方」(全5回・完結)もどうぞ。
    https://note.com/rioh_os/m/mc2e1d17acfee

    どこから読むか迷ったら、この1本から。症状から選べるようにしてあります。
    ▶ 会議も資料も、毎回ゼロから考えていませんか ――「思考OS」入門
    https://note.com/rioh_os/n/n226cb0de2fd8

     
     

    Rio.H

     
     
    会議・提案・育成の「なぜうまくいかないのか」を、性格ではなく設計の問題として解いています。考え方の型=思考OSの作り方を書いているnoteです。 入門記事 ▶ https://note.com/rioh_os/n/n226cb0de2fd8

    あなたへのおすすめ