
ほっぺた【シロクマ文芸部|お題「小さな手」】
「小さな手だな。」
彼女の手を自分の手に重ねながら、
僕がそう言うと、彼女は頬を膨らませた。
僕は、彼女のこの表情が好きだ。
「どうせ子供用の手袋しか合わないもん。」
手のことはコンプレックスらしい。
彼女は僕の手を振り解くと、バッグから小さな手袋を取り出してはめてみせた。
その手袋は僕が何年か前にプレゼントしたものだ。
彼女は両手を僕の前にかざすと、
満足げに、手袋をじっと見つめていた。
突然、彼女がこちらを見ながらニヤニヤしだした。
「小さな手でも捕まえられるよ。」
彼女はその手の中に僕の顔が収まるように後ずさりした。
「ほらね。」
彼女の息が白く見えた。
僕はさらに後ずさって手をかざした。
彼女の全身がすっぽり僕の手の中に収まった。
「ズルい!」
彼女が走り寄って僕の顔をつかんだ。
僕の顔は、小さな手からはみ出していた。
「つかめた!」
「そうかな。」
すると彼女はまた頬を膨らませた。
僕の手の内はまだバレていないようだ。
小牧さん、いつもお題をありがとうございます。
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