
ルービックキューブ モノとルキ#50
兄は小学生のころ、キュービストだった。
僕自身はまだまだキュービストとは言えない。
ハンガリーの建築学者ルビク・エルネーが、
ドナウ川の流れを見つめながら思いついたという立体パズル。
それが我が家にやってきたのは、兄が小学校高学年のときだった。
最初はただ回して遊んでいただけ。
一面だけ、二面行けたとか。その程度。
それは僕も同じだった。
ある日、ガチャガチャの当たりとして解法マニュアルが出た。
兄はそれを手に入れるために、何度もコインを投入した。
まるでドナウ川に投げ入れるみたいに、しつこく、粘り強く。
しかし、手に入れたマニュアルは恐ろしく難解だった。
僕はあっさり諦めた。
兄は徹夜で解読した。
おまけに独自の応用技まで開発して、
新しいマニュアルが書けそうなほどになった。
近所の友達の家を次々と訪ね、キューブを六面揃えて帰ってくる。
三十秒もかからずに。
キューブマスターブラザーの伝説は、
そうして静かに積み上げられていった。
大人になって、僕はもう一度キューブを買い直した。
あの感覚をまた味わいたくなったから。
今度は新しいLBL法でマスターした。
揃えていく快感は、子どものころのツクダ式より断然高い。
でも最近はやっていない。だから崩せない。
揃ったままのキューブが、本棚でじっとこちらを見ている。
そこを見るとエルネーが
「チャレンジしてこい!」
と挑発するようだ。
