
獄中文学 新時代
獄中文学ーー刑務所・拘置所・自宅軟禁など、監禁状態にある者によって書かれた作品を、ジャンルとしてこう呼ぶ。

キング牧師の『バーミンガム刑務所からの手紙』は、タイトルどおり彼の獄中からの書簡で。ネルソン・マンデラ『自由への長い道』は、著者の28年間の獄中生活を書いたもの。
作者が海賊に捕えられガレー船の奴隷となった経験から、『ドン・キホーテ』は生まれ。ドストエフスキーは、シベリアの捕虜収容所で過酷な労働を強いられながらその詳細をつづった。
同性愛行為を理由に有罪判決を受けたオスカー・ワイルドは、収監中も執筆を続けた。E・E・カミングスは、反戦感情を表現したという罪で投獄されていた間に自伝小説を書いた。

出所後に出版されたりする犯罪者の手記とは、また違う感じ?そう、ちょっと違う。
定義的には、収監されている間に手がけられたものなら、全て獄中文学とされるのかもしれないが。(世に出て知られている作品に)刑務所、もしくは、囚われの身であることや自由を追い求めることを題材にしていないものは、結局そんなにないと思う。
上にあげた例に理不尽に拘束された人たちが並ぶのは、執筆へのモチベーションをもつ可能性が高かったからなのだろう。この世界のおかしさをうったえたい!とかね。
ちなみに。世の中には、実は犯罪を犯したが有罪にならなかった人の暴露本ーーなどというものもある。

この人物のきょうだいも関連本を出している。
このままシステマティックに獄中文学の話をすすめていくか、寄り道をして私にしか書けない内容を書くか(オリジナリティーの意味)。
刑務所に関する過去回で前者スタイルの短いものは、私の文章の中で人気がある。
いつメンはきっと、後者でよろと思ってくれるのだろう。長文をずっと読んでくれている人たちだ。ありがとう。

いつもありがとう。
よし、決めた。長くなると思うけど最後までがんばって読んで。私もがんばる。
冒頭に女の人の名前は出てなかったことに、気がついただろうか。
そもそも、女性の受刑者は少ない。
現在。世界中の刑務所収容者の内、約7%が女性である。女性受刑者の数が最も多いのは米国だが、それでも男女比は9:1だ。

2000年以降。カンボジア・インドネシア・エルサルバドル・グアテマラ・ブラジルなどで、女性受刑者が急増しているという事実もあるのだが。ヨーロッパでは減少傾向にある。日本は?増加傾向だ。

女性によって手がけられた獄中文学はないのだろうか。歴史をさかのぼって、見てみよう。
ジャンヌ・ダルクは誰もが知っている投獄された経験をもつ女性だが、読み書きができなかった。
庶民には教育を受ける機会(と言うか時間的・体力的ゆとり)などなかっただけで、彼女はかなり地頭がよかった。


読み書きができたところで。口封じと汚い大人たちのつじつまあわせのために処刑されたような人に、紙とペンが与えられたわけがないが。
自由がない = 牢屋に閉じこめられている とは限らない。たとえば中世ヨーロッパにおいて、人権のじの字もなかったのは女性だけではない。
動画をお借りする。
女性は二重三重苦で、教会と家父長制貴族から二級市民とみなされていた・実質的に父や夫の所有物だったというのは、多くの人が知っていることだろうが。
歴史上の著名な学者らも、とんでもない見解を示していた。「女性は男性の奇形」と言い放ったのはアリストテレスだ。女に友人はいない(女性に友情という崇高な概念を理解することはできない)だとか、ぶっとんだ説が数多く示されていた。
社会的地位の低い女性は、より自由だったとも言えるかもしれないが。男性と一緒に労働をしていたから・上流階級からは存在を無視されていたからだ。
後述するヒュパティア(身分高めの生まれ)もジャンヌ(思いきり平民出)も、議論をまき起こすほどのことにチャレンジしなければ、注目されることはなく・殺されることもなかったということだ。

(彼女は古代の人物だが)ヒュパティアは、投獄や処刑どころか、暴徒化した市民に惨殺された。
明日は我が身なのではないか・男でも危ないのではないかと感じた学者らは、みんな、その土地から逃げていった。



聖母マリア崇拝も、実際の女性の地位向上や自由獲得には、ほとんど結びつかなかったが。
宮廷恋愛という文学ジャンルは、もしかして私たちも好きなように生きていいのではないかと、一部の女性らに気づかせただろうし。女性の社会的地位をいくばくか高めもした。



マリーは言っていた。「閣下、自分の才能を無駄にしない私の言葉を聞いてください」と。めちゃくちゃカッコイイ。
女性に比較的多くの機会をもたらしたのは、中世盛期における貿易だ。スペインとフランスの商人が政治に影響を与えるほどの富を蓄積し、中産階級が形成されはじめたため。
昔の西洋の女性に、最初に幅広くチャンスを与えたのは、宗教や哲学や文学よりも経済だったわけだ。「実弾」の即効性や永続性(アレクサンドリアは後者)という意味で考えると、中世ヨーロッパに限ったことではない。

結局、女性の獄中文学そのものの話はしなかった。ごめん。私の書きたい方向性がこうだった。


しかも、女の話ばかりをしてしまった。別に、男性は男の話を・女性は女の話を読みたいということもないだろうが。それでもバランスよくいこう。次の登場人物は男性だらけだ。
近代史 × プリズン

サンフランシスコ市から約2.5km離れた小さな島、アルカトラズ。
1850年代。カリフォルニア・ゴールドラッシュ → サンフランシスコの急速な発展 → サンフランシスコ湾防衛の必要性から、米陸軍が島の頂上にシタデル(要塞)を建設。
防衛上の必要性は時とともに薄れ。軍人刑務所として活用されることに。
1934年。老朽化していた軍事刑務所は、最新鋭の刑務所にフル・リニューアルされた。
連邦刑務所で、最も更生困難な受刑者に対処するため。政府が、犯罪の撲滅に真剣に取組んでいることを国民に示すため。最高警備で最低権利の刑務所がつくられた。
有名な「ザ・ロック」の誕生だ。

当時の最も悪名高い犯罪者や脱獄犯やギャングのリーダーは、他刑務所から移送され、サンフランシスコ湾に浮かぶ岩だらけの小島にいたわけだ。
連邦刑務所として運営されていた29年間に、36人が14回の脱獄未遂をしたが、誰も成功しなかったとされている。だが。海で溺死したと思われる行方不明の囚人が5人いるというのを、一度も脱獄されていないと言うのは、やや無理があるのではないか。笑
こういうわからないことがあるからこそ、創作に器用しやすいのであって。

1963年。維持費と運営費の増加を理由に、この刑務島は閉鎖された。代わりに建設されたのはイリノイ州マリオンの連邦刑務所だが。まぁ、アルカトラズ・ロックに比べて、ぜんぜんストーリー性がない。

世界情勢 × プリズン
ニュースなどで見て、知っている人も多いと思う。
このでっかい工場みたいなもの、

この映画のワンシーンみたいなの、

2023年にエルサルバドルにできた巨大刑務所なんだ。
スペイン語で Centro de Confinamiento del Terrorismo = テロリスト監禁センター。通称CECOT(セコット)。どんなストレートな名称だよ😅という感じ。


いかにも、今の米政府がやりそうなことだ。
「マラ・サルバトルチャ」(MS-13)とは、エルサルバドル・グアテマラ・ホンジュラス・メキシコ・スペイン・アメリカなどで活動する、ギャング組織のことだ。


MS13 と検索しなくとも、ネットに出てくるギャングのタトゥー画像に「MS」や このハンド・サインが見つかる(規模の大きさを感じる)。貼った2枚はわかりやすいもの。複雑な図柄の中によくよく見るとある、というのも。
今、少なくない数の人が思い出したであろう、有名ドラマの1シーン。
CECOT のことを詳しく教えてくれる動画をお借りする。いつも日本語バージョンも作成してくれる、トルコのドキュメンタリー製作者に感謝しよう。
狭い監房から出れるのは日に30分間だけ・マットレスのないベッド・肉が絶対に出ない食事……あるのは、24時間365日点灯している照明だけか。(それは逆に消してくれ〜)
解説はチェネット氏から聞いた方がいい。囚人へのインタビューもあるし。私は比較を担当しよう。


過密状態を説明する記事の写真でも、このくらい。


彼らに同情心をもてるのは、私がエルサルバドル国民ではないからだ。世界で最も殺人が多いと言われたこともある国に住む、普通の人たちからしたら、とにかく捕まえて閉じこめておいてほしいとしか思えないだろう。

Wait a minute, do I know you? Weren’t you an old pal of mine? Departed from us far too early, but now we’re meeting a second time. Tell me: do you demons bleed?
監視社会 × プリズン
フーコーは、犯罪者に対する処遇の変化について考察していた。近代的な刑務所が規律社会を生み出した、と主張していた。
絶え間ない監視によって、自己規制の傾向が生まれ、私たちは服従的になるのだと。内面化される看守ーーと言ったところか。


今あるのは「デジタル・パノプティコン」だからな。人々はSNSで、互いに監視しあい・〇〇警察になり・ささいなことに目くじらを立てている。
ヒマをもてあました 大量の あたまもこころも悪い輩から攻撃された、かわいい動物とやさしい人間↓。デフォでぴえん顔のミントちゃんだ。超ぴえん顔になってしまったことだろう🥺🥺


マクロな話。逮捕されたりしない種類の罪の庭で安全安心に遊んでいるのだろ。人間や動物を遊具にして。安っい罪だな。
キング牧師は刑務所からの手紙で、「他人のことに干渉する部外者を非難するな」としていたが。彼のそれは、離れた土地で苦しむ仲間を見捨てられないという意味あいだ。真逆。
動画をお借りする。たったの20分!誰かがサマリーしてくれること、ありがたいどころではない。『監獄の誕生』はフーコーの著作の中でまだ難解でない方だし、デリダやドゥルーズよりもフーコーは読みやすいが。
自分に焦点をあてた(できれば非服従的で)創造的な表現方法で、「破壊」してよ。
具体例?NHKを壊すことだけに集中する世界線のNHKを壊す人。それなら、みんなでいいねと言えたのにね(筋が通っていて)。途中で道を誤ったと言うより本性が出ただけだろうが。

まぁ、1個体がバグっててもどうでもいいさ。私たちが/みんなでやればいい。時間がかかっても1つずつ。
冒頭にあげた作家の1人、カミングスの詩はステキだ。

『感情が第一だから』E.E.カミングス
感情が第一なのだから
物事の文法に注意をはらう者があなたに心からのキスをすることはない
世に春があるというのに
なんという愚か者か
私の血は承認する
キスは知恵よりもよい運命だと
女性たちよ、私は全ての花に誓う
ーー泣かないでーー
私の脳の最高のジェスチャーは、私たちはお互いのためにあると示すあなたのまぶたの震えよりも、劣っていると
だから笑って、私の腕によりかかって
段落などではない生のために
死も括弧などではないと私は思う

彼は絵もたくさん描いた。私はこの絵が好き。

彼の詩に、どことなく、『ティファニーで朝食を』のクライマックスに似た世界観を感じる。
君を愛してる。だから何だと言うの。君は僕のものだ。人は人に属するものじゃない。私は誰にも私を檻に入れさせたりしない。僕は君を檻に入れたいわけじゃない、君を愛したいんだ。同じことじゃないの。いや、違うよ、ホリー。私はホリーじゃない、ルーラ・メイでもない。自分が誰なのかもわからない。私は猫みたいなもので、名もなきなまけ者で。私は誰にも属さないだけじゃなくて、自分自身にさえ属していないのよ!
女は勢いで、拾って飼っていたネコを捨ててしまう。野良に戻り雨に濡れるネコ。
……君は単なる臆病者だ。「人は恋に落ちるもので、互いに愛しあうもの。それが真の幸福を得る唯一のチャンスだから」と言うのを怖がっているだけの、臆病者だ。自分のことを自由な魂だ・野性児だと言っているけれど、実際、君は檻の中にいる。自分でこさえた檻の中に。西はチューリップやテキサス?東はソマリランド?違うだろ。行く先々で、君は自分を檻の中に入れてるのだろ。どこへ逃げたって、結局、自分自身にぶつかるだけだ。
男はポケットからプロポーズのための指輪を取り出して、何ヶ月も持ち歩いていたがもう必要ないと、女のひざの上に投げ捨てる。
言われた言葉がささったのだろう。思い直してタクシーからおりる女。男の後を追い、ネコも探す。

女性ファンの多そうな作品だ。このタイトルの文章に Breakfast at Tiffany’s が出てくるのはおかしいと、不快に思う人もいるかもしれない。

原作者のトルーマン・カポーティは、『冷血』を書くために、ある殺人事件を徹底的に取材した。加害者へインタビューした時、悲惨な境遇で育ったのは自分も同じだと感じ、「同じ家で生まれた。一方は裏口から、もう一方は表玄関から出た」と述べた。

この物語はすばらしい物語だと思うが。
オードリー・ヘプバーンは、それこそ、「東はソマリランドな人生」を歩んだ人だった。



恋より仕事を選んだとか、はたまたその逆とか、そういう話ではないというのがポイントだ。私も「自由」をテーマにそんな話がしたいわけではない。
彼女の新たな活動のきっかけは、恋人によってもたらされた。


ヘプバーンの人生の第一幕は第一幕として・第二幕は第二幕として、それぞれすばらしいものであったのだから、全て第三幕のためにあったと言うのは少し違うのかなとも思うが。私の意見など超どうでもいい。その時に愛する人が言ってほしいことを察して、恋人が選んだ言葉がこれだったのだろうから。

私は、恋愛を含む人生の方針に、ユングの「理論をできる限り学べ。しかし、生ける魂の奇跡に触れる時にはそれを脇に置け」を採用していいて。詩的に表すと、私には見えるもの 触れずとも癒すもの/痛むもの 抱きしめずともあたためるもの/壊すもの 人知れず心の中で鳴り続ける音楽 を大切にしているが。
こういう関係にも、いいね大恋愛だねと思う。
パワーとか可能性とかわくわくとか、いろいろ2倍と言うか100倍的な。なんでもできちゃう気がする的な。閉鎖的とは真逆の関係性に。
束縛の源は嫉妬・嫉妬の源は自信のなさであるということが、さまざまな研究からほぼ確定しているのだが。誰かを檻に閉じこめたいような感情も愛である、と思って疑わない人たちはたしかに存在する。
失わないために閉じこめているのではなく、すでに失っているものを罰するために閉じこめている。彼ら彼女らの深層心理は、愛ではないどころか憎しみに近い。嫌がらせの類なのだ。
これと似た構造をもつのがブラック校則だ。映画の解説をお借りする。私も映画館で観たが、文字数がいきすぎてしまうため他力本願で。
科学的根拠を知ったところで、そういう人らは不都合な真実を受け入れようとしない。だって でもでも ちがうもん でどんな実験結果もなぎ倒す。数多の先人が遺してくれたあらゆる哲学にも、耳を傾けないだろう。たとえばサルトルの「自由の刑」についてなど、生涯ふれずに生きていく。
悪い女とは彼女のような人のことだと、思っているだろう。

いつどこにいたって自分の虜にするのが、いい女よ」
峰不二子言いそうシリーズ。私の創作😂

自由な私(自分は自由だと感じれている私)には、他に怖い系統がある。
「本や詩や歌や1杯のコーヒーで気分が明るくなる女性は、誰にも負けない。人生さえも彼女の前では敗北する」ハリール・ジブラーン
(オスマン帝国時代末期に、現在だとレバノンの山間部あたりに生まれた、詩人であり画家だ。ジョン・レノンの書いた歌詞に、彼からの引用だと思われる一節がある)

ずっと本を読んでいて、自分のあこがれが普遍的なあこがれだと気づき、自分が属しているのは「ここ」なのだと知るーーという主旨のことを言ってくれたスコット・フィッツジェラルドに、この種のクズ(私のことだ)は、少し救われる。

米国には、受刑者と元受刑者のライターを募集し、彼ら彼女らの文章をオンライン・マガジンや出版物に掲載する非営利団体が複数ある。


ライターたちは報酬を得ることができる。(州の取決めなどで禁止されていない限り)
受刑者らはライティングの手ほどきを受けたりもできる。収監中の作家がジャーナリズムの賞をとったこともある。団体側が、全米の刑務所や拘置所に所属する記者らに配布する印刷物を発行していたりもする。

個人からの寄付・財団および個人からの助成金によって、それらは運営されている。
成り立つはずだ。
2025年の世界刑務所概要によると、米国の収監率は世界で5番目に高い。2001年から2022年は、世界で最も高い監修率だった。
彼ら彼女らにそれぞれ、身内や友人がいるのだから。
本人(アメリカ)は、2019年は210万人だったのを2020年は170万人に減らしたもん!2021年には25%減したこともあったもん!と言っているが。2020年以降にまた増加しちゃったんだよね……とも言っている。
では、ひきで見てみよう。

投獄大国・刑罰のマクドナルド化などと揶揄されても、仕方なかろう。
何が米国のバッド・ニュースかって、投獄率が上昇しても犯罪率はほとんど低下しないことだ。再犯率も非常に高い。
2023年時点の推定。刑務所・仮釈放・保護観察に関連する費用、年間810億ドル。裁判費用・保釈金・刑務所の電話料金、さらに年間380億ドル。
もっとわかりやすく表現しようか。多くの州で、学生教育よりも投獄に、より資金を費やしていることになる。
世にも恐ろしいスリー・ストライク法の話もする。(知っている人は読みとばして)
1993年以降、米国の多くの州が、なんらかの形でこれを制定している。
重罪の前科が2回以上ある者が、3度目の重罪による有罪判決をうけた場合、通常より重い刑を科す。これはわかる。
重罪の前科をもつ者が、3度目に有罪判決を受けた場合、最後に犯した罪の内容に関わらず終身刑。これはクレイジーだと思う。
再度、何がバッド・ニュースかって。抑止効果をねらってやっているのだろうが、大してよい結果が出ていないことだ。
「フロリダ州全人口の致死量」というパワー・ワードと、「ドラッグを水あげ」に笑ってしまった。あ、「陸あげ」だった。どっちにしろ笑う。


刑務所収監率が最も高いルイジアナ州の、40代の黒人男性グレンさんの半生。
スラム街の公共住宅で暮らしていたグレンさんの母親は、16才で彼を産んだ。祖父母やコミュニティー内の助けもあり、すくすくと育ったグレンさんだが。1992年、高校最後の夏、人生が一変した。

グレンさんの家から車で10分ほどの場所で、ある人が走行車から銃撃され死亡するという事件が起こった。現場で彼を見たという証言をもとに、警察がやってきた。身に覚えのない話に動揺しつつも、警察署へおもむいたグレンさん。まさか、そのまま逮捕されるとは思ってもみなかっただろう。
先に言っておく。彼は本当に犯人ではない。
保釈金は10万ドルだった。彼の家族が払えるわけがない。罪を認める代わりに刑を軽くしてもらう司法取引を拒否し、裁判で争うことにしたグレンさん。現場にいなかったという単純な事実が確認されれば、大丈夫だと信じていた。
結果を先に書いておく。彼は有罪になった。

通常、米国の陪審員制度は、12人全員のそろった意見が必要とされるが。当時のルイジアナ州では、満場一致でなくとも有罪を確定できるシステムが採用されていた。
奴隷解放後。米国憲法改正により陪審員になる権利を与えられた黒人たちから、表面上は違憲にならない範囲でどのように権利を剥奪するかということが、綿密に議論された。1898年の州憲法改正時の話だ。州憲法会議の記録に明記されている。「ルイジアナで、アングロサクソン人種が至上という主義を永続させるために」🤯
昔の話?全員一致評決式に変わったのは2019年か2020年だ。
前述した三振法も、ルイジアナでは軽犯罪にも適用されていた。たとえば少額の万引き3回で終身刑だよ。経済的に困窮させて 腹を空かさせて 食物を盗らせて 2つの仕組みを組合せたら、有色人種を地域から排除できるわな、「合法的に」。汚っい知恵。
ルイジアナ州の位置を暗記で知っている人、脳の無駄づかい。プランテーションの多かった南部のどこかなはずと推測できる人、よりよい未来を築くのはあなた。



ルイジアナ州の New Orleans はニューオーリンズでなくニュー・オルレアンである、ということがわからない人向けの過去回を貼っておく。↓
(カタカナで書く時に、本当はこうだもんとオルレアンと書くのは、変な人になるからダメ。数学を仕事にしているから?と、句読点を , . にする人みたいになりたくないでしょ。笑)
こういうステキな動画に1桁しか LIKE がつかない、「なんてすばらしい世界だろう」。お借りする。
グレンさんの裁判で陪審員12人の内訳は、白人9人・黒人3人だった。2人反対すれば有罪にならないのだが、土壇場で1人の黒人が意見を変えた。
なんかあやしい?
冤罪被害者を支援する非営利団体による調査で、後に明らかになったこと。
警察は真犯人に関する多くの情報をもっていたが、それらは隠蔽されていた。「目撃者」は別件で逮捕されかけていた人で、警察と取引を交わした末、本件でウソの証言をしていた。グレンさんの弁護士は、別の裁判で、この事件の真犯人とされた男を弁護していた。(同時進行)

これにあたるのかあたらないのか、私はわからない。
けっこうあやしい。
彼が収監された先は、全米で最も恐ろしいと言われる刑務所だった。18才で逮捕・19才で終身刑・無罪が証明されそこから出れた時34才。

「なんてすばらしい世界だろう」。
なぜ、グレンさんが「選ばれて」しまったのだろう。ルーレットが彼で止まっただけだ。ここに暮らす善良な黒人たちからしたら、他人事ではない・明日は我が身の極みなわけだ。抗議デモとか本気にやらないと、と思うだろう。
日本でのデモについての語りをお借りする。ぴえん猫ちゃんのところで書いたことともつながる語り。
黒人は白人の7倍。殺人罪で有罪判決を受け、後に無実だったことが判明する割合だ。

無実の黒人が不当に有罪判決を受ける確率が高い理由を、いくつか考えてみよう。
人種的な偏見から、黒人は警察のターゲットになりやすい。不当に連行される割合も高い。早く自由になりたくて、やってもいない罪を認めて司法取引に応じる人が少なくない。「犯罪者」になれば、就職などその後の人生に大きく影響する。より一層、警察からターゲットにされるようにもなる。経済的格差から、裁判で争うにしても、いい弁護士を雇えない。保釈金を払えない可能性も高く、裁判まで長期間拘留される。
黒人にとって不利な要素が、あらゆるステップにひそんでいる。

『Orange is the new Black』で描かれる、派閥間のいざこざ・裏切りあい・権力者の存在(たいがいキッチンを牛耳る😂)・外界から密輸入される「ブツ」(化粧品やお菓子が多い)……これらはリアルなのだろうか。


「こんなの日常茶飯事。実際はもっとひどい。本当に権力者はライフ・ラインであるキッチンを牛耳る」とのこと。
誰の証言?
「看守によるイジメなど、さまざまな問題が一向に改善されない。だから、囚人たちのリアルな声が届くようにと、2014年に『プリズン・ライターズ』を立ち上げた」
前述した、非営利団体の創始者の証言なのだ。


コカイン工場の爆破の記事って何。とにかくすごそう。笑
囚人たちに配布される情報誌にはじめて広告を載せた時、何千通もの手紙がきたそうだ。

獄中文学の新しい方向性。拡がる内部告発と刑務所体験記。
囚人ライターらによって暴露された、刑務所内の話をいくつか紹介する。

テキサス州ダラスの連邦刑務所の囚人が、「夏の刑務所は地獄」というタイトルの文章で、日々の体験談を共有した。
ーー地獄の釜風呂状態で死亡者も出た。看守が嫌がらせで与えなかったり・力のある囚人が奪ったり・誰かが買いしめたりする結果、丸一日以上、水を飲めない囚人がいる。刑務所運営陣はそれを問題視すらしていない。ーー
「囚人が暴露、ドラッグを刑務所に密輸入する方法」「刑務所のやり方は獄中ギャングを肥らせる」(刑務官とギャングの癒着を赤裸々に語ったもの)など、重いタイトルの文章は人目をひくが。「刑務所内で切手は通貨になる」など、比較的ライトな内容の文章もある。
カジュアルなものでも。囚人らは生半可な気持ちで書いてはいないだろう。実名・服役先・刑期まで明記されて、掲載されるのだから。
「私は、テクノロジーのある人生を知らなかった。24年間刑務所にいて、それ以前は犯罪者だった。メールを打ったりコンピューターを使ったりしたことがない。刑務所内でジャーナリストになるには、外部の人々と関係を築く必要がある。私はここへ入って、はじめてテクノロジーと直接関わったのだ」
「私の記事を読んだ人たちから、講演会やインタビューの依頼が複数きている。来年、出所したら。偉大なことを成しとげる元受刑者の1人になれると、確信している。貧乏人・ジャンキー・犯罪者といったキーワードでしか表せなかった私の人生が、変わる。私は今、やる気に満ちあふれている」

米連邦刑務局は、収監者が記者として活動することを明確に禁じている。囚人と報道機関の通信を「秘匿通信」としているのは4州だけで、他の州はそれを検閲する権利を維持している。14州で、受刑者が執筆で報酬を受け取ることを禁じている。たとえ無償でも、事業とみなすことで活動させないようにできる州は多い。
もちろん、それなりの理由があってのことだが。暴露された内情の数々を見るに。どんなことが起こっているのか世間に知られたくないからーーというのもあるのだろうと、思わざるを得ない。

でも、アメリカの話でしょう?違う。世界で最も収監率が高い国の1つの、過去現在未来の話だ。ニンゲンの話だ。
くだらないことを私に話しかけてくるなと、釘をさしておかずとも。1万字以上で説明しても、でも犯罪者は犯罪者じゃんとか言ってくるほど愚鈍な人は、さすがにいない。と言うか。ここまで読んでくれるような人たちの中に、そんなセンスのない人はいない。
今回は笑い話が足りなかったと、他力本願でラストにねじこもうとしている私に、言われたくないかもしれないが。
この人のつくる動画で、まだうるさくないのがこれ。




最近、私の好きな海外の脳の学者が、改めて言っていた。「知性とは、より多くを知ることではない。脳をより速く書き換える能力である」

言うて。それで金持ちになれたりしないし、幸せにさえなれないかもしれない。誰それより上だ下だもない、うちらごとき大差ない。学びと笑いとポジティブネスは、世界をよりよくするための、みんなの義務のようなものだ。
「理論をできる限り学べ。しかし、生ける魂の奇跡に触れる時にはそれを脇に置け」(ユング)だよ。
すばらしい彼を彼女をあなたを檻に入れるな。
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